10 / 124
雲の上は、いつも晴れだった。 ~本編~
プロローグ(1)
しおりを挟む
ピンク、緑、赤や白。カラフルな色が、たくさん混ざる下界には、いつだっていろんな変化がある。晴れの青、曇りのグレー、しとしと雨の水色、雷雨の黒や黄色……。天気も下界を彩る変化の一つだ。
いつだったか、下界に降る雨は、誰かが流した涙だと聞いたことがある。誰かが泣いた分だけ、下界には彩りの雨が降る。
だけど、ここには雨なんて降ったことがない。
見渡す限り、白と青の世界。それが私のいる世界、天界の最下層にある庭園。庭園は、雲のずっと上にあって、いつでも青空が広がっている。まるで凪の海みたいに静かな空間が、どこまでもどこまでも続いていて、変化も終わりもない世界。
そんな白と青の世界に住む住人たちを、下界では『天使』なんて呼んだりしているようだ。だけど私は、天からの使者ってわけじゃない。だから、私たちを『天使』と言うのは間違っている。
この庭園で暮らす者はNoelと呼ばれている。Noelと呼ばれる私たちは、いわゆる天使未満の存在だ。
下界では、雲の上で暮らす者には、羽があり、金の環が頭上で輝いていると思われているけど、本当は、みんながその様な姿ってわけじゃない。羽や金の環があるのは、ある経験をして成長した者のみ。それが、下界の人が言う『天使』と言う存在。天使未満の私には、羽もなければ、光輝く環もない。見た目は、下界の人とほとんど変わらない。
いつかは私にも、羽が生えるかもしれないけれど、それがいつなのかはわからない。なぜなら、天使となった者たちは、みんな庭園から姿を消してしまうから。残された私たちNoelは、ある経験がいったいどんな事なのか、いつが自分の成長時期なのか、誰も知ることができないのだ。
ただお一人だけ、羽と金の環を持つ、いわゆる、天使のイメージがピッタリな天使様が、いつも私たちのお側にいてくださるけれど、そのお方に、どうすれば私たちが成長できるのかと伺っても、「経験すればわかることだから」と、多くは語って下さらない。
そのお方に、ずいぶん前に教えて頂いたことがある。Noelと下界の人は、見た目は同じでも、大きく違う事がある。それは、庭園には涙を流す者がいないってこと。白と青の世界の住人は、変化のない天気と同じ。いつも変わらない。怒る事も、楽しむ事も、悲しむ事もない。
ただ、喜ぶ事はほんの少しだけある。でもそれも、下界の人が見たら、喜んでいるのか分からないくらいの喜び方なのだけれど。
いつだったか、下界に降る雨は、誰かが流した涙だと聞いたことがある。誰かが泣いた分だけ、下界には彩りの雨が降る。
だけど、ここには雨なんて降ったことがない。
見渡す限り、白と青の世界。それが私のいる世界、天界の最下層にある庭園。庭園は、雲のずっと上にあって、いつでも青空が広がっている。まるで凪の海みたいに静かな空間が、どこまでもどこまでも続いていて、変化も終わりもない世界。
そんな白と青の世界に住む住人たちを、下界では『天使』なんて呼んだりしているようだ。だけど私は、天からの使者ってわけじゃない。だから、私たちを『天使』と言うのは間違っている。
この庭園で暮らす者はNoelと呼ばれている。Noelと呼ばれる私たちは、いわゆる天使未満の存在だ。
下界では、雲の上で暮らす者には、羽があり、金の環が頭上で輝いていると思われているけど、本当は、みんながその様な姿ってわけじゃない。羽や金の環があるのは、ある経験をして成長した者のみ。それが、下界の人が言う『天使』と言う存在。天使未満の私には、羽もなければ、光輝く環もない。見た目は、下界の人とほとんど変わらない。
いつかは私にも、羽が生えるかもしれないけれど、それがいつなのかはわからない。なぜなら、天使となった者たちは、みんな庭園から姿を消してしまうから。残された私たちNoelは、ある経験がいったいどんな事なのか、いつが自分の成長時期なのか、誰も知ることができないのだ。
ただお一人だけ、羽と金の環を持つ、いわゆる、天使のイメージがピッタリな天使様が、いつも私たちのお側にいてくださるけれど、そのお方に、どうすれば私たちが成長できるのかと伺っても、「経験すればわかることだから」と、多くは語って下さらない。
そのお方に、ずいぶん前に教えて頂いたことがある。Noelと下界の人は、見た目は同じでも、大きく違う事がある。それは、庭園には涙を流す者がいないってこと。白と青の世界の住人は、変化のない天気と同じ。いつも変わらない。怒る事も、楽しむ事も、悲しむ事もない。
ただ、喜ぶ事はほんの少しだけある。でもそれも、下界の人が見たら、喜んでいるのか分からないくらいの喜び方なのだけれど。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる