結婚相談所 キューピットへようこそ 〜運命の人に、あなたは必ず出会えます〜

田古みゆう

文字の大きさ
7 / 8

7.残り1本っだぞ!

しおりを挟む
--ザシュッ!

 ターゲット目掛けて一直線に放たれた矢が、小気味良い音を立てた。

 僕たちは、呆然とその光景を目に映す。

 愛の矢は、見事に木の幹を捉えていた。刺さった反動で、まだ矢は小刻みに振動している。

「タ、ターゲットは?」

 確かに今の今まで、目の前にいたはずのターゲットの姿がない。

 目をパチクリとさせていると、愛が、小さく声を出す。

「……あそこに」

 ターゲットは、見事に地面に突っ伏していた。何というタイミングで転ぶのだ。

 そんなターゲットの姿を見て、僕は、脱力して大きく息を吐き出した。

「あの……すみません」

 愛は、肩を窄め、シュンとしている。

「仕方がないよ。あれは、不慮の事故さ。まさか、あのタイミングで、あんなにも大胆に転ぶだなんて、誰も想像できないもの」

 愛に慰めの言葉をかけつつ、僕は、冷静に考える。

 タイミングが良すぎるというか、悪すぎるというか。まさか、縁を結べないお相手だったか。

 僕は、愛に気がつかれないよう、もう一度、そっとため息を吐くと、頭を切り替える。

 既に2本の矢を失ってしまった。残りは1本。慎重に事を進めなければ、事務所の信用問題に関わってくるぞ。

 まずは、条件を確認し直そうと思い、ふと疑問に思う。

「何で、スポーツをする人なんだろう?」
「何がですか?」

 僕の呟きに、愛が、不思議そうに小首を傾げながら、聞き返してきた。

「真野くんの第2条件だよ。第1条件のように、何か理由があるのかなと思って」
「あぁ。それは、健康的だからだそうです」
「え? なに? その当たり前な理由……」
「当たり前では、ダメなのですか?」
「ダメではないけど、初めがユニークだったから、次も期待するじゃん」
「……」

 愛の白けた視線には動じず、僕は続けて口を開く。

「因みに、第3条件は?」
「かっちりした人、です」
「かっちり?」
「ご自身が、研究にのめり込みやすいので、生活を正してくれるような人をご希望だそうです」
「なんだそれ? 子供か?」

 思わずツッコミを入れてしまったが、実は、お相手に望む条件としては、案外悪くない。

 それぞれに、欠点をカバーし合える。それこそが、生涯を共にする為には必要なことだろう。

 しかし、時間がない今回のような案件で、その条件を見極めることは、かなり難しい。

 「髪が長い、スポーツをする、かっちり……」

 真野純がお相手に希望する条件を、僕は小さく口にしつつ、何処かに良さげなターゲット候補はいないかと、視線を彷徨わせる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

二年間の花嫁

柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。 公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。 二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。 それでも構わなかった。 たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。 けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。 この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。 彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。 やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。 期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。 ――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...