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7.残り1本っだぞ!
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--ザシュッ!
ターゲット目掛けて一直線に放たれた矢が、小気味良い音を立てた。
僕たちは、呆然とその光景を目に映す。
愛の矢は、見事に木の幹を捉えていた。刺さった反動で、まだ矢は小刻みに振動している。
「タ、ターゲットは?」
確かに今の今まで、目の前にいたはずのターゲットの姿がない。
目をパチクリとさせていると、愛が、小さく声を出す。
「……あそこに」
ターゲットは、見事に地面に突っ伏していた。何というタイミングで転ぶのだ。
そんなターゲットの姿を見て、僕は、脱力して大きく息を吐き出した。
「あの……すみません」
愛は、肩を窄め、シュンとしている。
「仕方がないよ。あれは、不慮の事故さ。まさか、あのタイミングで、あんなにも大胆に転ぶだなんて、誰も想像できないもの」
愛に慰めの言葉をかけつつ、僕は、冷静に考える。
タイミングが良すぎるというか、悪すぎるというか。まさか、縁を結べないお相手だったか。
僕は、愛に気がつかれないよう、もう一度、そっとため息を吐くと、頭を切り替える。
既に2本の矢を失ってしまった。残りは1本。慎重に事を進めなければ、事務所の信用問題に関わってくるぞ。
まずは、条件を確認し直そうと思い、ふと疑問に思う。
「何で、スポーツをする人なんだろう?」
「何がですか?」
僕の呟きに、愛が、不思議そうに小首を傾げながら、聞き返してきた。
「真野くんの第2条件だよ。第1条件のように、何か理由があるのかなと思って」
「あぁ。それは、健康的だからだそうです」
「え? なに? その当たり前な理由……」
「当たり前では、ダメなのですか?」
「ダメではないけど、初めがユニークだったから、次も期待するじゃん」
「……」
愛の白けた視線には動じず、僕は続けて口を開く。
「因みに、第3条件は?」
「かっちりした人、です」
「かっちり?」
「ご自身が、研究にのめり込みやすいので、生活を正してくれるような人をご希望だそうです」
「なんだそれ? 子供か?」
思わずツッコミを入れてしまったが、実は、お相手に望む条件としては、案外悪くない。
それぞれに、欠点をカバーし合える。それこそが、生涯を共にする為には必要なことだろう。
しかし、時間がない今回のような案件で、その条件を見極めることは、かなり難しい。
「髪が長い、スポーツをする、かっちり……」
真野純がお相手に希望する条件を、僕は小さく口にしつつ、何処かに良さげなターゲット候補はいないかと、視線を彷徨わせる。
ターゲット目掛けて一直線に放たれた矢が、小気味良い音を立てた。
僕たちは、呆然とその光景を目に映す。
愛の矢は、見事に木の幹を捉えていた。刺さった反動で、まだ矢は小刻みに振動している。
「タ、ターゲットは?」
確かに今の今まで、目の前にいたはずのターゲットの姿がない。
目をパチクリとさせていると、愛が、小さく声を出す。
「……あそこに」
ターゲットは、見事に地面に突っ伏していた。何というタイミングで転ぶのだ。
そんなターゲットの姿を見て、僕は、脱力して大きく息を吐き出した。
「あの……すみません」
愛は、肩を窄め、シュンとしている。
「仕方がないよ。あれは、不慮の事故さ。まさか、あのタイミングで、あんなにも大胆に転ぶだなんて、誰も想像できないもの」
愛に慰めの言葉をかけつつ、僕は、冷静に考える。
タイミングが良すぎるというか、悪すぎるというか。まさか、縁を結べないお相手だったか。
僕は、愛に気がつかれないよう、もう一度、そっとため息を吐くと、頭を切り替える。
既に2本の矢を失ってしまった。残りは1本。慎重に事を進めなければ、事務所の信用問題に関わってくるぞ。
まずは、条件を確認し直そうと思い、ふと疑問に思う。
「何で、スポーツをする人なんだろう?」
「何がですか?」
僕の呟きに、愛が、不思議そうに小首を傾げながら、聞き返してきた。
「真野くんの第2条件だよ。第1条件のように、何か理由があるのかなと思って」
「あぁ。それは、健康的だからだそうです」
「え? なに? その当たり前な理由……」
「当たり前では、ダメなのですか?」
「ダメではないけど、初めがユニークだったから、次も期待するじゃん」
「……」
愛の白けた視線には動じず、僕は続けて口を開く。
「因みに、第3条件は?」
「かっちりした人、です」
「かっちり?」
「ご自身が、研究にのめり込みやすいので、生活を正してくれるような人をご希望だそうです」
「なんだそれ? 子供か?」
思わずツッコミを入れてしまったが、実は、お相手に望む条件としては、案外悪くない。
それぞれに、欠点をカバーし合える。それこそが、生涯を共にする為には必要なことだろう。
しかし、時間がない今回のような案件で、その条件を見極めることは、かなり難しい。
「髪が長い、スポーツをする、かっちり……」
真野純がお相手に希望する条件を、僕は小さく口にしつつ、何処かに良さげなターゲット候補はいないかと、視線を彷徨わせる。
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