182 / 461
新人魔女の疲れる休日(6)
しおりを挟む
しばらくすると母が呼び寄せた仕立て屋が到着した。母が日頃から贔屓にしているその男は、職人気質を絵に描いたような気難しい顔で挨拶する。
「スヴァルト様、ご機嫌麗しゅう。本日はどの様なご用向きでしょうか?」
「ご苦労様。早速で申し訳ないのだけれど、主人とこの子の採寸をお願い。近いうちに、私ともう一人の仕立てもお願いする事になるわ」
「かしこまりました。それでは旦那様、こちらへどうぞ。旦那様が終られましたら、お嬢様の採寸をさせて頂きます」
あれだけ渋っていた父は、あっという間に採寸を終えると、結局、デザインや生地選びを母に丸投げして、自分の書斎に閉じ籠もってしまった。
リッカの周りでは、仕立て屋が連れてきたお針子たちが作業をする。リッカに出来ることは大人しく採寸を受けることくらいだ。お針子たちは一様に真剣な顔をしているし、採寸の間ほとんど会話はない。幾度かこうして採寸され服を誂えたことはあるが、何度やってもこの状況に慣れない。
リッカはそわそわと落ち着かない心地でお針子たちの作業が終わるのを待っていた。採寸を終えると次は生地選びだ。リッカは父の様に母に丸投げしようと試みてみた。しかし、母の答えは否だった。
「何を言ってるの。貴女のための服なのだから、貴女が自分で選びなさい」
一蹴されたリッカは仕方なく、生地を選ぶ。その様子を母は嬉しそうに眺めていた。
どの生地の何が良いのかさっぱりわからないと思いながらもリッカが生地を見比べている傍らで、母も夢中で生地を見やる。
時折母は仕立て屋の男に何やら話しかけている。リッカには何を話しているのか分からなかったが、生地を手に職人男と顔を突き合わせて何やら真剣に話し合っている母の様子からして、相当専門的な会話なのだろうという事だけは窺い知れた。
「奥様。この生地などいかがでしょう?」
やがて仕立て屋は何種類かの生地を持ってくるとテーブルにそれらを広げた。母はそれらの幾つかを手にとって吟味すると、仕立て屋に頷いた。
「そうね。これは良さそうだわ」
「では、旦那様の生地はこちらに致しましょう」
「ええ。お願いね。それで、貴女は決まったの?」
母がリッカに話を振ったが、リッカにはどの生地が良いのかわからない。
「えっと……」
口籠もるリッカに母が小さくため息をついた。
「自分の衣装の生地すら選べないなんて、これまで甘やかしすぎたのかしら……」
母は、困ったとばかりに頬に手を当てる。
「スヴァルト様、ご機嫌麗しゅう。本日はどの様なご用向きでしょうか?」
「ご苦労様。早速で申し訳ないのだけれど、主人とこの子の採寸をお願い。近いうちに、私ともう一人の仕立てもお願いする事になるわ」
「かしこまりました。それでは旦那様、こちらへどうぞ。旦那様が終られましたら、お嬢様の採寸をさせて頂きます」
あれだけ渋っていた父は、あっという間に採寸を終えると、結局、デザインや生地選びを母に丸投げして、自分の書斎に閉じ籠もってしまった。
リッカの周りでは、仕立て屋が連れてきたお針子たちが作業をする。リッカに出来ることは大人しく採寸を受けることくらいだ。お針子たちは一様に真剣な顔をしているし、採寸の間ほとんど会話はない。幾度かこうして採寸され服を誂えたことはあるが、何度やってもこの状況に慣れない。
リッカはそわそわと落ち着かない心地でお針子たちの作業が終わるのを待っていた。採寸を終えると次は生地選びだ。リッカは父の様に母に丸投げしようと試みてみた。しかし、母の答えは否だった。
「何を言ってるの。貴女のための服なのだから、貴女が自分で選びなさい」
一蹴されたリッカは仕方なく、生地を選ぶ。その様子を母は嬉しそうに眺めていた。
どの生地の何が良いのかさっぱりわからないと思いながらもリッカが生地を見比べている傍らで、母も夢中で生地を見やる。
時折母は仕立て屋の男に何やら話しかけている。リッカには何を話しているのか分からなかったが、生地を手に職人男と顔を突き合わせて何やら真剣に話し合っている母の様子からして、相当専門的な会話なのだろうという事だけは窺い知れた。
「奥様。この生地などいかがでしょう?」
やがて仕立て屋は何種類かの生地を持ってくるとテーブルにそれらを広げた。母はそれらの幾つかを手にとって吟味すると、仕立て屋に頷いた。
「そうね。これは良さそうだわ」
「では、旦那様の生地はこちらに致しましょう」
「ええ。お願いね。それで、貴女は決まったの?」
母がリッカに話を振ったが、リッカにはどの生地が良いのかわからない。
「えっと……」
口籠もるリッカに母が小さくため息をついた。
「自分の衣装の生地すら選べないなんて、これまで甘やかしすぎたのかしら……」
母は、困ったとばかりに頬に手を当てる。
2
あなたにおすすめの小説
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
巻き込まれ召喚された賢者は追放メンツでパーティー組んで旅をする。
彩世幻夜
ファンタジー
2019年ファンタジー小説大賞 190位!
読者の皆様、ありがとうございました!
婚約破棄され家から追放された悪役令嬢が実は優秀な槍斧使いだったり。
実力不足と勇者パーティーを追放された魔物使いだったり。
鑑定で無職判定され村を追放された村人の少年が優秀な剣士だったり。
巻き込まれ召喚され捨てられたヒカルはそんな追放メンツとひょんな事からパーティー組み、チート街道まっしぐら。まずはお約束通りざまあを目指しましょう!
※4/30(火) 本編完結。
※6/7(金) 外伝完結。
※9/1(日)番外編 完結
小説大賞参加中
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる