アタシはギルドの受付嬢。でも、なんかちょっと違くない?

田古みゆう

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 ジャックスはセリオに鋭い視線を向ける。いつもタニアに見せる保護者的な雰囲気とは全く異なる。その鋭い眼差しは、まるで抜き身の刃のようだ。

 セリオの笑顔が一瞬だけ固まった。しかしすぐにヘラヘラとした笑みを浮かべて両手を挙げる。

「ちょっとした予行演習ですよ。ね?」

 同意を求めるように、セリオはタニアにそう笑いかける。しかし、当のタニアは恐怖で身がすくんでいて、何も答えられそうになかった。

 ジャックスは小さく1つため息をつく。厳しい表情を崩さないまま、ゆっくりとセリオに近づく。そして、自分の肩ほどの身長しかない青年の胸倉を掴むと、軽々と持ち上げた。ジャックスは険しい表情のままセリオを怒鳴りつける。

「この馬鹿野郎。いつも言っていただろう。お前は調子に乗りすぎる。その悪い癖を直せって。俺の言葉はお前には届かなかったのか?」

 ジャックスの怒声が響き渡る。その迫力はすさまじかった。一瞬でセリオは色を失い、勢いよく首を振る。先ほどまでとは違う緊迫感に、放心していたタニアが慌てて立ち上がった。ジャックスの太い腕に縋る。

「オジサン、やめて。アタシは大丈夫だから。その人を放して」

 タニアの必死の懇願に、ジャックスは小さく舌打ちをしてセリオから手を離す。ドサリと音を立てて床に落とされたセリオは、そのままへなへなと崩れ落ちた。

 タニアも再び力無く床に座り込んでしまう。ジャックスはそんなタニアの頭を大きな手でクシャリと撫でると、真剣な眼差しを向けた。

「この馬鹿が、怖い思いをさせたな。すまなかった」

 ジャックスの労わるような眼差しに、タニアもようやく少し落ち着きを取り戻し、小さく横に首を振る。タニアのその仕草を、ジャックスは肯定と受け止めたようだ。フッと頬を緩めた。

 タニアを椅子に座らせると、ジャックスはタニアと向き合うように座った。

「こいつの性根は俺が叩き直したつもりだったんだがな。どうやら、俺の目は曇っていたようだ」

 そう言ってため息をついたジャックスは、床に座り込んだままの青年を睨みつけた。今さっき床に叩きつけられたにも関わらず、セリオはまたヘラヘラとした笑みを浮かべる。そんな青年の様子を見て、ジャックスは諦めたように首を横に振った。

「ったく。お前ってやつは。本当に困った弟子だよ。それで? どうしてお前がここに居る?」

 ジャックスの問いかけに、セリオはヘラヘラと笑いながら答える。

「もちろん。あの方のご指示ですよ」
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