アタシはギルドの受付嬢。でも、なんかちょっと違くない?

田古みゆう

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「なぜ?」

 その語気は苛立ちを含んでいた。死にかけてまでなぜこの件にこだわるのか。言外に含まれたセリオの思いに、タニアは気づいた。しかし、その思いを汲み取ることはしなかった。タニアは、セリオの目をしっかりと見つめたまま答える。

「だってアタシ、あの子に言っちゃったもん。『お兄ちゃんはすぐに見つかる』って。あの子、きっと今もお兄ちゃんの帰りを待ってる。だから、早く見つけてあげなきゃ」

 その目には責任と決意が見て取れた。そして同時に不安と恐れの色が見えた。それでも毅然な態度を貫こうとするタニアの姿を見て、セリオの眉がピクリと動く。

 セリオはタニアから視線をそらし、小さくため息を吐いた。そして、少しの沈黙の後、静かに口を開いた。

「自分の状況がわかっていないのかい? 命を落としかけてまで、君が背負うべきことではないと思うけど?」

 セリオの言葉には、苛立ちと呆れが多分に含まれていた。タニアはそんなセリオの言葉に反論するどころか、疑問を口にする。

「え? 命を落としかけたって誰が?」

 タニアはきょとんとした顔でセリオに訊ねる。その顔には全く話が分からないと書いてある。セリオは苛立ちを抑えつつ、努めて冷静な口調で言う。

「君だよ。君が吸ったのは、タームという魔樹の葉を燻した煙だ。その煙を常習的に接種した者は、やがて廃人になり死に至る」

 セリオはタニアの目をしっかりと見つめて言った。しかし、タニアはきょとんとした表情のまま首を傾げる。

「何それ? やばいやつじゃん。でも、アタシが死にかけたなんてウソでしょ?」

 危機感のないタニアの態度に、セリオはさらに苛立ちを募らせる。

「我が国には生息しない魔樹なので君は知らないかもしれないが、タームはとても危険なんだ」
「危険?」
「ああ。その作用があまりにも強いので、隣国では有害魔樹と認定されている。一部を除いて原木及び加工品の使用が禁止されているほどだ」

 セリオの話を聞きながら、タニアは少し考えるそぶりを見せる。そして少し間をおいて口を開いた。その口調には、疑問の色が滲んでいる。

「タームが危険なのはわかったけど、どうしてそれが東の森にあるの? この国には生息していないのでしょ?」

 その問いに対する答えは単純だ。隣国を拠点とする何者かが、この国へ持ち込んだ。東の森は隣国との国境に近い。しかし、森は奥深く魔物も生息しているため、人の往来は殆どない。身を隠すにはもってこいの場所なのだ。
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