デイリーアフターランニング

田古みゆう

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1.プロローグ

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 乗客を降ろし、駅のタクシー専用ロータリーに車を停めた私は、いつものように、しばしの休憩タイムを取ることにした。

 運転席を降り、窮屈なシートに押し込められていた体を、空に向かってグイッと伸ばすと、それまでノロノロと活動していた細胞たちが、一気に走り出したかのような血の巡りを感じ、その心地良さに一息つく。

 その間にも、駅からはたくさんの人が出てきたり、反対に駅へ入って行ったりを繰り返す。そこそこ大きなこの駅は、利用客が途絶えることはない。人が忙しなく行き来している様は、まるで川の流れがあっちへ流れ、こっちへ流れと動いているようで、無意識に目を奪われてしまう。

 特に朝と夕方には、速く大きな流れが駅から吐き出され、駅へと飲み込まれて行くのだが、その流れを掻き分け、乱すようにして、毎回数人の人が、その流れの中を走り抜けて行く。

 そんな様子を目にすると、あの人は何をそんなに急いでいるのだろうかと、ついつい、妄想を膨らませてしまう。

 あの、サラリーマン風の男性は、寝癖が跳ねているから、寝坊をしたのかな。

 コーヒーショップのカップを手にしたあの女性は、これからある、早朝会議のために、コーヒーを飲んで気持ちを切り替えてから、会議に臨むんだな。

 あそこを走る男子高校生は、いつも、もう少し先で待っている彼女の元へ走っている。今日もそうだろう。

 この女性は、ひどく背中を丸めているから、仕事が大変だったのかな。きっと、家のベッドが恋しくて、家路を急いでいるんだな。そんな時こそタクシーに乗ってくれたらいいのに。

 あそこのケーキの箱を手にした男性は、きっとこれから、娘さんの誕生日パーティーだな。プレゼントはなんだろう。

 人を見ていると、そんなたわいも無い妄想が私の頭の中で繰り広げられる。そうして、束の間の休憩タイムを過ごすのが、仕事中の私の楽しみだったりする。

 ふと、乗客を待つ車列へ目を向けると、随分と車列が短くなっていた。

 そろそろ業務を再開するかと、もう一度、腰をグイッと押してから、再び狭い運転席へと体を押し込める。

 車のエンジンをかけ、ゆっくりと車を進めた。乗車待ちの車列の最後尾へと車を付ける。

 私の前には3台の乗客待ちタクシーが停まっているので、私が乗せるのは、4組目のあのシルバーカーを傍らに置いたご婦人だろう。

 乗せる乗客の目星をつけ、安全運転をするべく、気持ちを切り替える。次の乗客は、一体どこまで行くのだろうか。
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