冥界区役所事務官の理不尽研修は回避不可能 〜甘んじて受けたら五つの傷を負わされた〜

田古みゆう

文字の大きさ
31 / 92
3.がとーしょこら色の思い出

p.31

しおりを挟む
 そこまで考えて、ある答えに辿り着くと思わず叫ぶ。

「やばいじゃんっ!!」

 突然の僕の声にビックリしたのか、小鬼は目をパチクリとしながらその場でピョンと飛び跳ねた。

「ど、どうしたんですか~? 古森さん~?」
「ねぇっ! やばいじゃん!!」
「だから、どうしたんですか~?」
「だって、あと五時間の間にプログラムを終了しないと、最恐レベル行きなんじゃないの? もしかしてっ?」

 僕の言葉に、小鬼は瞬時に呆れ顔になる。

「もう~。時間のことはあまり参考にはならないって言いましたよね? きちんと聞いていましたか~?」

 小鬼ののんびりとした声と態度に、僕は少し苛立つ。

 まるで他人事じゃないか。いや、他人事なのだが。

「僕は最恐レベル行きを回避するために、このプログラムを受けているんだ! これが期間内に終わらなかったら意味ないじゃないか!!」

 僕は体中に渦巻く焦りを早口に吐き出す。

「古森さん~。少し落ち着きましょう~」

 小鬼は、僕を宥めようと声を掛けてくる。

「落ち着いてなんかいられないよ! 確か、このプログラムは五日間の予定だよね? 君たちの時間では一日分が終わったようだけど、あと五時間で四日分の予定が終わるの? ねぇ? 僕は間に合うの?」

 僕が自分の中の焦りを怒涛のように吐き出し続けていると、小鬼は僕のそばへとやってきて右膝をペシっと叩いた。

「痛っ。何するんだよ!!」
「ちょっと落ち着いてください~」
「時間がないのに、落ち着いてなんていられないよ!!」
「まぁ、とにかく、座って座って~」

 そう言いながら小鬼はベッドの向かいに設置された机に向かうと、自分よりも大きな椅子を引き出した。

 椅子の脚に手を掛けて、満面の笑顔で小鬼は待っている。

 僕は渋々小鬼のそばへ行き、椅子に腰掛ける。そんな僕の様子を見届けてから、小鬼は僕のそばを離れた。

 しばらくして、手に小さな白いカップを持って戻ってきた。

「古森さん~。コチラをどうぞ~」

 手渡されたカップには、七色に揺らめく液体がなみなみと注がれていた。カップからは金木犀から漂うような甘い香りがしている。ここへ来たばかりの時に口にした冥界区限定のリラックス効果の高い飲むサプリのようだ。

「これは、例のリラックスサプリ?」
「そうです~。お見受けしたところ、古森さんは随分と心が乱れているようですので、まずは一口飲んでください~」

 僕は小鬼の笑顔とカップから漂う香りに誘われて、不思議な液体をコクリと一口分口に含んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...