45 / 92
3.がとーしょこら色の思い出
p.45
しおりを挟む
「そうそう。でもお礼はいいから、代わりにケーキを処分してくれって言う話だったと思うけど?」
「なんかもう、ややこしいですね。じゃあ、お水をあげたお礼に、お兄さんは私に助言をしてくれたってことにしましょう。ケーキは……」
咲はしばし考えてから、ニカっと笑う。
「ケーキは、私たちが出会った記念って事でどうですか?」
「アハハ。なんだよ、それ。記念とかいるかなぁ?」
「えー。ダメですか?」
咲は軽く膨れっ面をして見せてから、プッと吹き出す。
そんなコロコロと変わる咲の表情を、僕はきちんと目に、そして心に焼き付ける。僕が出会った最初で最後の沢山の咲を、どれ一つ見落とさないようにしっかりと見つめる。しかし、何故だか視界が霞んでよく見えない。
そんな僕を不思議に思ったのか、咲は軽く小首を傾げる。コレは僕もよく知っている咲の癖だ。
「お兄さん?」
「あ、ううん。なんでもない。ちょっと目にゴミが入ったみたいで」
そう言いながら、僕は素早く上を向いてパチパチと瞬きを繰り返す。幸い涙は零れなかった。
「ええ? 大丈夫ですか? 擦ったらダメですよ?」
「うん。大丈夫、大丈夫」
何度か瞬きを繰り返してから目を閉じた。目頭にじんわりと熱を感じる。なんとか熱を落ち着かせてから、顔を正面に戻して目を開けると、心配顔の咲と目が合った。
「もう大丈夫だよ」
僕は精一杯の笑顔を咲に向ける。咲も安心したように花のような笑顔を返してくれた。
「あの、お兄さん。私、そろそろ……」
帰り支度を済ませた咲は、名残惜しそうに言葉を濁す。
「そっか。そうだね」
「あの。また、お話しできますか?」
「う~ん。それはどうだろう」
咲と会う事はもうないだろう。でも、そんな事を言って寂しい気分にさせることもない。
「サキのことは、神のみぞ知る、ってね!」
僕は無理に明るい声を出した。
咲は一瞬ポカンという顔をしてから、今日一番の笑顔を見せてくれた。
「そうですね。先のことは神のみぞ知る、ですね。そう思いながら、また偶然お兄さんに会えることを楽しみにします」
咲はそう言ってペコリとお辞儀をすると、スクッと腰かけていたベンチから立ち上がる。
そんな咲を見上げながら、僕はふと思いついたことを口にする。
「ああ、そうだ。もし今度彼に差し入れをするなら、シュークリームにしなよ」
「シュークリームですか?」
「うん。シュークリーム」
「なぜですか?」
「う~ん。なんとなく」
僕はとぼけた感じで答えを濁す。
「なんかもう、ややこしいですね。じゃあ、お水をあげたお礼に、お兄さんは私に助言をしてくれたってことにしましょう。ケーキは……」
咲はしばし考えてから、ニカっと笑う。
「ケーキは、私たちが出会った記念って事でどうですか?」
「アハハ。なんだよ、それ。記念とかいるかなぁ?」
「えー。ダメですか?」
咲は軽く膨れっ面をして見せてから、プッと吹き出す。
そんなコロコロと変わる咲の表情を、僕はきちんと目に、そして心に焼き付ける。僕が出会った最初で最後の沢山の咲を、どれ一つ見落とさないようにしっかりと見つめる。しかし、何故だか視界が霞んでよく見えない。
そんな僕を不思議に思ったのか、咲は軽く小首を傾げる。コレは僕もよく知っている咲の癖だ。
「お兄さん?」
「あ、ううん。なんでもない。ちょっと目にゴミが入ったみたいで」
そう言いながら、僕は素早く上を向いてパチパチと瞬きを繰り返す。幸い涙は零れなかった。
「ええ? 大丈夫ですか? 擦ったらダメですよ?」
「うん。大丈夫、大丈夫」
何度か瞬きを繰り返してから目を閉じた。目頭にじんわりと熱を感じる。なんとか熱を落ち着かせてから、顔を正面に戻して目を開けると、心配顔の咲と目が合った。
「もう大丈夫だよ」
僕は精一杯の笑顔を咲に向ける。咲も安心したように花のような笑顔を返してくれた。
「あの、お兄さん。私、そろそろ……」
帰り支度を済ませた咲は、名残惜しそうに言葉を濁す。
「そっか。そうだね」
「あの。また、お話しできますか?」
「う~ん。それはどうだろう」
咲と会う事はもうないだろう。でも、そんな事を言って寂しい気分にさせることもない。
「サキのことは、神のみぞ知る、ってね!」
僕は無理に明るい声を出した。
咲は一瞬ポカンという顔をしてから、今日一番の笑顔を見せてくれた。
「そうですね。先のことは神のみぞ知る、ですね。そう思いながら、また偶然お兄さんに会えることを楽しみにします」
咲はそう言ってペコリとお辞儀をすると、スクッと腰かけていたベンチから立ち上がる。
そんな咲を見上げながら、僕はふと思いついたことを口にする。
「ああ、そうだ。もし今度彼に差し入れをするなら、シュークリームにしなよ」
「シュークリームですか?」
「うん。シュークリーム」
「なぜですか?」
「う~ん。なんとなく」
僕はとぼけた感じで答えを濁す。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる