クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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シロヤギさんからの手紙(4)

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「はぁ~? うっせ。そんな事あるか」

 ケラケラと笑う白谷吟に、酔っ払いのシロ先輩は遠慮なく突っかかる。私は、爽やかイケメンの発言と、酔っ払いの妄言に心を乱されながらも慌てて仲裁に入る。

「ま、まあまあ、シロ先輩、落ち着いてください」
「何だぁ、クロは、吟の肩持つのかぁ~?」
「肩を持つとかそう言う事じゃなくてですね……」
矢城やぎさん、大丈夫だよ。史郎は酔うと、いつもこんな風だから、適当に揶揄からかって遊べばいいよ」

 爽やかイケメンは、さも当たり前と言うようにニコニコとしているが、よくよく考えると、この人のシロ先輩に対する扱いは雑すぎなのではないだろうか。

「いつもって……。シロ先輩と白谷先輩って、確か、同期でしたよね?」
「うん。同期。というか、腐れ縁かな」
「腐れ縁?」
「そう。僕と史郎は、幼馴染なんだよ」
「そうだったんですか!?」

 確かに、普段から仲良くしているなとは思っていたが、まさか幼馴染とは。

 それで、こんなに雑な扱いなのか。

 驚いてシロ先輩を見れば、酔いが回りすぎたのか、椅子にもたれてウトウトとしていた。

 白谷吟は、シロ先輩の前からスッと空のジョッキや皿を退かしながら、呆れたようにシロ先輩に視線を注ぐ。その眼差しは、同期や幼馴染というよりは、まるで、兄が危なっかしい弟を見ているようだった。

「何か、白谷先輩、シロ先輩のお兄さんみたいですね」
「あはは。そうかな。まぁ、子供の頃から史郎の世話を焼いていたから、いつの間にかそんな感じになっちゃったのかなぁ」

 サラッと笑うその笑顔は、私と歳が一つしか違わないのに余裕があり、大人びて見える。

「子供の頃って、いつ頃から一緒にいるんですか?」
「ん~。そうだなぁ。史郎が、僕の家の隣に引っ越してきたのが小4の時だから、それからずっと」
「ずっと?」
「うん。そう。ずっと。小・中・高が一緒って話はよくあると思うけど、僕らは、大学も、会社もずっと一緒」
「ええっ? それって、二人で相談して決めたとかって事ですか?」

 話を聞きながら、無意識に目の前の唐揚げへと伸ばしかけていた手を止めて、私は、丸くした目を白谷吟へと向ける。

 相変わらず穏やかな笑顔を見せる白谷吟は、私と同じくらいには酒を呑んでいるはずなのに、全く酔いを感じさせず平然と首を振った。

「僕たちは、進路で話し合った事は、一度も無いんだ。高校も大学も会社も、各自で決めて……お互い目指す先を聞いてビックリするって事の繰り返し」
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