クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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真実はすぐそばに(10)

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 どうやって切り出そうかと、朝からあれほど緊張していたというのに、言葉がするりと出てくる。

「本当は昨日、シロ先輩に聞きたかったんですけど、会えなくて。でも私、すぐにでも確認したくなってしまったんです。白谷先輩なら、シロ先輩のこと良く知っているから何か知っているかもと思って。だから、白谷先輩に昨日会って……」

 私はそう言うと、ようやく顔を上げた。シロ先輩は穏やかな微笑みを浮かべていた。そして、優しく私に尋ねる。

「俺に聞きたいこと? そんなに急ぎなら電話をくれれば良かったのに」

 確かに、言われてみるとその通りだ。私は、自分の考え無しの行動に呆れてしまう。どうしても真実が知りたくなって衝動的に動いてしまったのだ。シロ先輩は、私の考えていることが伝わったようで、苦笑いをすると言った。

「それで、俺に聞きたかったことって?」

 私は、一度深呼吸をして気持ちを整える。それからゆっくりと話し始めた。

「この前話題にのぼったシロヤギさんの話、覚えていますか?」
「シロヤギ?」

 シロ先輩は、首を傾げながら呟く。私は、黙ってコクリと小さく首肯する。

「ああ、クロの交換日記の相手か」

 シロ先輩は、思い出したように言った。私は、もう一度小さく首を縦に振る。それから、シロ先輩の顔を見ると、恐る恐る尋ねた。

「シロヤギさんの正体は、シロ先輩ですよね?」

 シロ先輩は、驚いたように目を丸くした。私は、息を呑んで答えを待つ。心臓の鼓動がうるさいくらいに鳴っている。

 シロ先輩は、しばらく何も言わなかった。シロ先輩は、眉間にシワを寄せたまま難しい顔をしている。やはり違ったのだろうかと不安になる。シロ先輩は、少し考えるような仕草を見せた後、何かを言おうと口を開きかけた。

 ちょうどそのタイミングで、注文した料理が運ばれてきたので、私たちは一旦会話を中断させた。シロ先輩の前に大盛りのオムライスが置かれる。シロ先輩は、スプーンを手に取ると、目の前の皿に視線を落とした。私の前にはドリアとサラダのセットが置かれたが、料理に手をつけずに、シロ先輩が何か言うのをただじっと待つ。

 シロ先輩は、しばらく無言で食事を続けた。私は、その間、シロ先輩の顔を食い入るように見つめた。シロ先輩は、私の方を見ようとしない。シロ先輩が何を思っているのか分からない。私は、焦りのような感情が湧き上がってくるのを感じていた。

 シロ先輩は、やがて食べていた手を止めると、口を開いた。
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