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第31話 魔術属性を調べてみた
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ギルドに到着した俺達は属性検査を頼む。
担当官として現れたのは、いつもの女職員だった。
彼女はいつもの調子で挨拶してくる。
「どうもっす」
「なぜお前が担当なんだ」
「そりゃ魔術師っすからね。属性検査となれば出番っすよ」
「初耳だぞ」
「似合わないって言われるんで、普段は名乗らないんすよ。別に魔術師だって吹聴して偉ぶりたいわけでもないですし」
職員は平然と言う。
非戦闘員かと思いきや魔術師だとは。
確かに性格的に似合わないと思ってしまった。
職員は俺とビビを交互に見やると、状況を理解して頷く。
「今日はビビちゃんの属性検査っすよね。明らかに魔力量が増えてるみたいですし」
「俺も知りたいから二人分で頼む」
「へぇ、魔術師に転向する気っすか」
「戦闘手段の一つとして使ってみたいだけだ。本職にはならない」
厳密にはビビも俺と同じである。
肉弾戦はやめず、補助的に魔術を習得するつもりだった。
こちらの意見を聞いた職員は感心したように言う。
「相変わらず器用なことを考えますね。普通なら失敗しそうなもんですが、あなたなら楽勝っすよ」
「根拠はあるのか」
「今までの活動を見れば一目瞭然っすよ。ねぇ、ビビちゃん」
「うん。ご主人なら大丈夫」
ビビまでもが自信ありげに言う。
過大評価だと思うのだが、微塵も疑っていない目をしていた。
こうなったら期待を裏切らないように努力しよう。
器用貧乏の意地を見せねばならない。
世間話に区切りが付いたところで、職員が俺達を案内して歩き出した。
彼女はギルドの奥の区画へと向かう。
「ささ、こちらの部屋にどうぞ。魔術師への第一歩っすよ」
移動したのは小さな部屋だった。
中央の台座の上に透明な水晶が設置されている。
職員はそれを指差して説明を始めた。
「これが検査用の水晶っす。手をかざすだけで属性が分かるっすよ。試しにお見せしましょう」
職員が水晶に手を近づけると、黄色い光が灯った。
暗い室内が明るくなるほどの光だ。
目を細めて眺めているうちに、職員が不満足そうに手を離した。
それだけで水晶の黄色い光は消える。
「うーん、今日はイマイチっすね」
「何が分かったんだ」
「光の色が適性のある属性で、光の大きさが魔力量っすね。この水晶だとそこまで精密な測定はできませんが、指標としては十分っすよ」
「なるほど」
水晶が属性と魔力量を測ってくれるらしい。
なんとも分かりやすい道具である。
ここでビビが挙手をして質問をした。
「さっきの黄色い光はどういう意味?」
「雷属性っすね。魔力量は平均より多めって感じっす」
「……なぜギルド職員をやっているんだ。雷属性の魔術師なら、需要なんていくらでもあるだろう」
俺は思わず訪ねる。
魔術師であることに加えて、人気の雷属性なんて驚きだ。
職員は慣れた様子で肩をすくめる。
「あちこちから勧誘されるのが面倒なんすよね。汗水流して戦うのも嫌ですし。そこそこのお給料で暮らせれば満足なので、今の仕事が合ってるんすよ。能あるグリフォンは何とやら、って言うじゃないっすか」
「そうか……」
素晴らしい才能がある者にも、苦悩はつきものらしい。
俺には想像もできない部分であった。
職員は気を取り直して検査を再開する。
「まずはビビちゃんから検査するっすよ」
「よろしく」
ビビは水晶に両手をかざす。
その途端、黄緑色の淡い光が室内に広がった。
担当官として現れたのは、いつもの女職員だった。
彼女はいつもの調子で挨拶してくる。
「どうもっす」
「なぜお前が担当なんだ」
「そりゃ魔術師っすからね。属性検査となれば出番っすよ」
「初耳だぞ」
「似合わないって言われるんで、普段は名乗らないんすよ。別に魔術師だって吹聴して偉ぶりたいわけでもないですし」
職員は平然と言う。
非戦闘員かと思いきや魔術師だとは。
確かに性格的に似合わないと思ってしまった。
職員は俺とビビを交互に見やると、状況を理解して頷く。
「今日はビビちゃんの属性検査っすよね。明らかに魔力量が増えてるみたいですし」
「俺も知りたいから二人分で頼む」
「へぇ、魔術師に転向する気っすか」
「戦闘手段の一つとして使ってみたいだけだ。本職にはならない」
厳密にはビビも俺と同じである。
肉弾戦はやめず、補助的に魔術を習得するつもりだった。
こちらの意見を聞いた職員は感心したように言う。
「相変わらず器用なことを考えますね。普通なら失敗しそうなもんですが、あなたなら楽勝っすよ」
「根拠はあるのか」
「今までの活動を見れば一目瞭然っすよ。ねぇ、ビビちゃん」
「うん。ご主人なら大丈夫」
ビビまでもが自信ありげに言う。
過大評価だと思うのだが、微塵も疑っていない目をしていた。
こうなったら期待を裏切らないように努力しよう。
器用貧乏の意地を見せねばならない。
世間話に区切りが付いたところで、職員が俺達を案内して歩き出した。
彼女はギルドの奥の区画へと向かう。
「ささ、こちらの部屋にどうぞ。魔術師への第一歩っすよ」
移動したのは小さな部屋だった。
中央の台座の上に透明な水晶が設置されている。
職員はそれを指差して説明を始めた。
「これが検査用の水晶っす。手をかざすだけで属性が分かるっすよ。試しにお見せしましょう」
職員が水晶に手を近づけると、黄色い光が灯った。
暗い室内が明るくなるほどの光だ。
目を細めて眺めているうちに、職員が不満足そうに手を離した。
それだけで水晶の黄色い光は消える。
「うーん、今日はイマイチっすね」
「何が分かったんだ」
「光の色が適性のある属性で、光の大きさが魔力量っすね。この水晶だとそこまで精密な測定はできませんが、指標としては十分っすよ」
「なるほど」
水晶が属性と魔力量を測ってくれるらしい。
なんとも分かりやすい道具である。
ここでビビが挙手をして質問をした。
「さっきの黄色い光はどういう意味?」
「雷属性っすね。魔力量は平均より多めって感じっす」
「……なぜギルド職員をやっているんだ。雷属性の魔術師なら、需要なんていくらでもあるだろう」
俺は思わず訪ねる。
魔術師であることに加えて、人気の雷属性なんて驚きだ。
職員は慣れた様子で肩をすくめる。
「あちこちから勧誘されるのが面倒なんすよね。汗水流して戦うのも嫌ですし。そこそこのお給料で暮らせれば満足なので、今の仕事が合ってるんすよ。能あるグリフォンは何とやら、って言うじゃないっすか」
「そうか……」
素晴らしい才能がある者にも、苦悩はつきものらしい。
俺には想像もできない部分であった。
職員は気を取り直して検査を再開する。
「まずはビビちゃんから検査するっすよ」
「よろしく」
ビビは水晶に両手をかざす。
その途端、黄緑色の淡い光が室内に広がった。
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