金貨三枚で買った性奴隷が俺を溺愛している ~平凡冒険者の迷宮スローライフ~

結城絡繰

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第36話 魔術の勉強を始めてみた

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 属性が判明したことで、ビビの方向性は定まった。
 風属性は扱いやすい術が多い。
 単純な遠距離攻撃の他に、身体強化に応用して使い手の速度を劇的に上げることができるのだ。

 獣人族のビビは、素の状態で凄まじい身体能力を持つ。
 風属性の迅速性が加われば、もはや敵無しだろう。
 彼女は自分が魔力の実を使ったことを後悔していたが、やはり俺としては大正解だった。

 冒険者活動において、手札は何枚か持っておくべきだ。
 やりすぎて器用貧乏になるのは良くないものの、ビビには魔術が必須だったと思う。

 彼女の戦闘能力は俺を遥かに凌駕するが、対応力に欠ける一面があった。
 現状はさほど苦戦することがない。
 しかし、迷宮の魔物は悪辣な種族が多い。
 優れた身体能力だけで対抗できる場面は少なくなってくる。
 いずれ限界が訪れるだろう。

 魔術を習得すれば、そういった問題が解決する。
 常に選択肢が豊富にあり、その分だけ生存の確率が上がるためだ。
 特技を一点に絞って鍛え続ける手法も否定はしないものの、俺は安全策を優先する主義である。
 ビビには多彩な戦い方を学んでほしいと考えていた。

(まあ、俺は自分の心配もしないといけないんだけどな……)

 指輪と魔術書を弄りながら、我が身のことを考える。
 理論上、どんな人間でもすべての属性を習得することができるらしい。
 ただし難度が大きく変わってくる。
 そのためまずは得意な属性を集中的に学ぶのが妥当なのだそうだ。

 魔術、術師、触媒の属性を揃えると精度や威力が上がり、消費魔力が軽減される。
 習得のしさすさもあって、まさに良いこと尽くめだった。
 したがって見習いの魔術師ほど積極的に他属性を学ぶ必要はない。

 俺の場合、術の難度が適性に左右されない。
 自由に選べる利点がある一方で、魔力量が少ないので中級以上の術は使えない。
 本来の魔術師にはない悩み方を抱えている状態だ。

 もっとも、答えはもう出ている。
 これからすべての属性の初級魔術を覚えればいい。
 それが俺の適性の活かし方だ。

 元より魔術に頼った立ち回りは望んでいなかった。
 局所的に役立ってくれれば満足である。
 限界がはっきりとしている以上、育成面で迷うこともない。
 全属性なのは予想外だったが、器用貧乏の俺には似合っていると思った。

 それから俺達は十日ほど勉強を続ける。
 結果、互いに簡単な魔術を習得するまでに至り、成果を迷宮で試してみることになった。
 ちょうど生活費が危なくなってきたところだったのだ。
 全属性の指輪が本当に高かった。
 別にぼったくられたわけではないが、中堅冒険者の財布を苦しめるには十分すぎる価値なのである。

「今日もいっぱい稼ごうね」

「魔術を試すのが最優先だけどな」

「うん」

 俺達は身支度を進めていく。
 宿に引きこもっていたが、身体は実に健康だ。
 暇さえあればビビから求められたので、むしろ寝不足な最大の敵かもしれない。
 まあ、さすがに前日はしっかり寝たので問題ないと思いたい。
 俺達は意気揚々と宿を出発した。
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