金貨三枚で買った性奴隷が俺を溺愛している ~平凡冒険者の迷宮スローライフ~

結城絡繰

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第68話 決死の覚悟を決めてみた

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 闇魔術に触れた剣がだんだんと錆びていく。
 これは長持ちしそうにない。
 属性付与で保護しても同様だろう。
 俺の魔力ではとても維持できず、ただ浪費することになる。
 死霊術師は、後ろに下がりながら俺を挑発する。

「あの子だけでグールは殲滅できないよ。あまりに無謀な賭けだ。馬鹿な主人を持った奴隷は苦労するね」

「勝手に言ってろ。俺はビビを信じている」

 断言しながら斬撃を放つ。
 火属性を付与した切っ先が死霊術師の鼻を焼き切った。
 しかしすぐさま再生する。
 お返しとばかりに靄が伸びて俺に纏わりつこうとした。
 俺は一瞬だけ光魔術を使って跳ね除けると、踏み込んで刺突で反撃する。
 胸を刺された死霊術師は、高らかに笑って後退した。

「平凡だ。技も力も平凡すぎる。唯一の個性と言えば、全属性の魔術くらいか。それも微弱すぎて話にならない」

「黙れ」

「グールを使わずとも君を殺すのは容易いことだ。これまで幾人もの冒険者を葬ってきた。君より強い冒険者ばかりだったね。最初から勝ち目なんてないのだから、早く諦めた方がいい」

 死霊術師は廃虚にもたれて悠々と言ってのける。
 俺は即座に剣を振るうも、何層にも重ねられた靄に遮られた。
 剣の錆がさらに悪化し、先端が折れて砂状になる。

(考えろ。活路を見い出せ……!)

 靄を防壁でやり過ごし、至近距離で浄化を発動した。
 死霊術師の体表がぐずぐずに融解するが、瞬く間に治っていく。
 俺の魔力量と練度では、光魔術も致命傷にならないのだ。

 だが、やり遂げるしかない。
 俺は歯を食いしばって浄化を連発する。
 不気味に笑う死霊術師の肉体が、破壊と再生の拮抗で蠢いていた。

(術者を潰せばグールも止まる。少なくともビビは助かるんだ。刺し違えてでもこいつを倒さなくては)

 速まる鼓動を聞きながら、俺は命を振り絞る覚悟で魔力を注ぐ。
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