2 / 39
第1章「はじまりのうた」
新世界での目覚め
しおりを挟む
「……あれ??」
ふと目を開けると、木々に囲まれた澄んたエメラルドグリーンが見えた。
なんだろう??水の底を見上げてるみたいだ。
何か綺麗だなぁとぼんやりと眺める。
空なのか水なのかわからないそれは、ゆらゆらとほのかに瞬きを漂わせて揺らめいていた。
「……起きたか。」
そう地を震わすような声がした。
いや、実際揺れた。
揺れたというか……響いて来たのだ。
慌てて体を起こし、振り返るように声のした方を見た。
「?!」
「よく寝ていたな??体の調整はそこまでの負荷は掛かっていないと思ったが、やはり別のドルムの存在体に手を加えるというのは負荷の予測ができず、難儀なものだな。」
「へっ?!」
「まぁ、何にしろ目覚めたのだから良しとしよう。」
「……………。」
俺は何が起きているのかわからなかった。
これは夢だろうか??
まぁ、夢だと考えるのが一番現実的なのだが、多分違う。
そのまま固まってどうすべきか考えようとしたが、キャパオーバーでフリーズしていた。
「何だ、また辛いなら休んでおけ。」
固まる俺に何か硬くて太い鞭のようなものが伸びてきて、グイッと押された。
抵抗する余裕もなく、ぼふんっと俺は何かもふもふで温かいものに倒れ込む。
………………。
何だかわからないが、もふもふ柔らかいし温かいし、幸せだ。
「って!!そうじゃなくて!!」
思わずその心地よさに全身埋もれて堪能してしまったが、これが夢でなくて現実なら、もふもふで現実逃避している場合ではない。
「あのっ!!」
「何だ??」
「……助けて…下さったんですか……??食べないで??」
俺はおずおずとその巨大なもふもふに聞いた。
質問に答えようとこちらに向けられた顔は……怖い。
こんなもふもふ心地いい毛並みなのに、顔は怖い。
なんと言えば良いのだろう??
まぁ、素直な感想はモンスターだ。
ゲームなんかで見るモンスターだ。
近すぎて全体像が見えないのだが、いかにもモンスターって顔で俺を見ている。
「いや??そのうち食うつもりだが??」
「え?!食べるの?!なのに助けたの?!」
「お前の成分はこの世のものじゃない。だから興味がある。故に食うつもりだ。ただそれはいつでもいい話だ。お前が死んだら取り込んで解析しよう。」
とりあえず、いずれは食べるようだ。
ただ俺が死んでからと言うのだから、数日後なのかもっと長いのかよくわからない。
「……ええと、そのうち食べるとして……でも助けてくれたんですよね??」
「助けたと言えるのかはよくわからんが、お前の体はこの世に合っていなかったから、合うように少し足したり引いたりしたのは確かだな。どうだ、まだどこか苦しいか??」
「いえ…今の所、大丈夫そうです……。」
足したり引いたりとは一体、何なんだろう?!
怖かったので考えるのはやめた。
とにかく今は息苦しくもないし、体もだいたい思うように動かせる。
目も以前のように見えている様な感じだし、ひとまず、俺の生命と身体機能はこの世界に適応した状態にしてくれたようだ。
「……ありがとう…ございます…。」
俺はソレにお礼を言った。
腹のあたりに子猫でも抱くようにもふんと押し込まれているので、それがどういう生き物なのかよくわからない。
顔はモンスターだし、尻尾も何か恐竜か何かみたいだった。
異世界というのだから、こちらが思う生物ではありえないのだから仕方がない。
「お前は運がいい。我は以前、お前によく似た存在体を取り込んだことがあった故、お前の構造をだいたい理解していた。カナカに似ているのでカナカと構造を合わせるようにしてだな……。」
「ちょっと待って下さい!以前、人間を食った事があるんですか?!」
淡々と話すソレの言葉に俺はギョッとした。
別の方向を見ていたソレの顔がまた、ぐりんと俺の方に向けられた。
牙が怖い……。
「なるほど。お前たちはニンゲンというのだな。ちなみに前のニンゲンはお前と違って既に死んでいたからな。調べたらそこまで毒性もなかったので取り込んだ。」
「……何で食べたんですか…その方のご遺体を……。」
「我にとって役立つ。……お前はさっきからおかしな事を聞いてばかりだな??食う事が、取り込む事が、まるで悪い事の様に聞こえる。」
「それは……。」
「カナカなどのクエルは、食をする事で生きていける。食をしなければ死んでしまう。お前の体はクエルと同じで食さなければ死ぬ作りの様だったが、違うのか??」
「クエル……??」
「クエルと違い、ルアッハは食の他に吸収と同化ができるのだが、お前は何か食以外にできるのか??」
「……ルアッハ??」
よくわからない単語がさっきから出てくる。
何となく言いたい事はわかるし、カナカと言うのは人間みたいな意味なんだろうがクエルって何だ??
しかもルアッハって??食べる以外に吸収と同化が出来るってどういう事??
それの方も俺が理解できない事がよくわからないようだ。
お互い顔を向かい合わせ、頭に疑問符を浮かべている。
「なるほど……別のドルムとではかなり事情が違うようだな??」
「……そうみたいですね??」
獅子系の獰猛なモンスターの様な顔を、うむ、と言ってちょっと傾けた。
顔は怖いけど、慣れてきたせいか可愛い気がしてきた。
どうせいずれはこいつが食ってくれるんだし。
そう思うと妙なもので、それまで毎日ただただ仕事に行って遅くにくたびれて帰って寝るだけの日々の中で感じていた言い様のない不安と焦燥感は消え失せ、俺は妙な安心感に包まれゆったりした気持ちになったのだった。
ふと目を開けると、木々に囲まれた澄んたエメラルドグリーンが見えた。
なんだろう??水の底を見上げてるみたいだ。
何か綺麗だなぁとぼんやりと眺める。
空なのか水なのかわからないそれは、ゆらゆらとほのかに瞬きを漂わせて揺らめいていた。
「……起きたか。」
そう地を震わすような声がした。
いや、実際揺れた。
揺れたというか……響いて来たのだ。
慌てて体を起こし、振り返るように声のした方を見た。
「?!」
「よく寝ていたな??体の調整はそこまでの負荷は掛かっていないと思ったが、やはり別のドルムの存在体に手を加えるというのは負荷の予測ができず、難儀なものだな。」
「へっ?!」
「まぁ、何にしろ目覚めたのだから良しとしよう。」
「……………。」
俺は何が起きているのかわからなかった。
これは夢だろうか??
まぁ、夢だと考えるのが一番現実的なのだが、多分違う。
そのまま固まってどうすべきか考えようとしたが、キャパオーバーでフリーズしていた。
「何だ、また辛いなら休んでおけ。」
固まる俺に何か硬くて太い鞭のようなものが伸びてきて、グイッと押された。
抵抗する余裕もなく、ぼふんっと俺は何かもふもふで温かいものに倒れ込む。
………………。
何だかわからないが、もふもふ柔らかいし温かいし、幸せだ。
「って!!そうじゃなくて!!」
思わずその心地よさに全身埋もれて堪能してしまったが、これが夢でなくて現実なら、もふもふで現実逃避している場合ではない。
「あのっ!!」
「何だ??」
「……助けて…下さったんですか……??食べないで??」
俺はおずおずとその巨大なもふもふに聞いた。
質問に答えようとこちらに向けられた顔は……怖い。
こんなもふもふ心地いい毛並みなのに、顔は怖い。
なんと言えば良いのだろう??
まぁ、素直な感想はモンスターだ。
ゲームなんかで見るモンスターだ。
近すぎて全体像が見えないのだが、いかにもモンスターって顔で俺を見ている。
「いや??そのうち食うつもりだが??」
「え?!食べるの?!なのに助けたの?!」
「お前の成分はこの世のものじゃない。だから興味がある。故に食うつもりだ。ただそれはいつでもいい話だ。お前が死んだら取り込んで解析しよう。」
とりあえず、いずれは食べるようだ。
ただ俺が死んでからと言うのだから、数日後なのかもっと長いのかよくわからない。
「……ええと、そのうち食べるとして……でも助けてくれたんですよね??」
「助けたと言えるのかはよくわからんが、お前の体はこの世に合っていなかったから、合うように少し足したり引いたりしたのは確かだな。どうだ、まだどこか苦しいか??」
「いえ…今の所、大丈夫そうです……。」
足したり引いたりとは一体、何なんだろう?!
怖かったので考えるのはやめた。
とにかく今は息苦しくもないし、体もだいたい思うように動かせる。
目も以前のように見えている様な感じだし、ひとまず、俺の生命と身体機能はこの世界に適応した状態にしてくれたようだ。
「……ありがとう…ございます…。」
俺はソレにお礼を言った。
腹のあたりに子猫でも抱くようにもふんと押し込まれているので、それがどういう生き物なのかよくわからない。
顔はモンスターだし、尻尾も何か恐竜か何かみたいだった。
異世界というのだから、こちらが思う生物ではありえないのだから仕方がない。
「お前は運がいい。我は以前、お前によく似た存在体を取り込んだことがあった故、お前の構造をだいたい理解していた。カナカに似ているのでカナカと構造を合わせるようにしてだな……。」
「ちょっと待って下さい!以前、人間を食った事があるんですか?!」
淡々と話すソレの言葉に俺はギョッとした。
別の方向を見ていたソレの顔がまた、ぐりんと俺の方に向けられた。
牙が怖い……。
「なるほど。お前たちはニンゲンというのだな。ちなみに前のニンゲンはお前と違って既に死んでいたからな。調べたらそこまで毒性もなかったので取り込んだ。」
「……何で食べたんですか…その方のご遺体を……。」
「我にとって役立つ。……お前はさっきからおかしな事を聞いてばかりだな??食う事が、取り込む事が、まるで悪い事の様に聞こえる。」
「それは……。」
「カナカなどのクエルは、食をする事で生きていける。食をしなければ死んでしまう。お前の体はクエルと同じで食さなければ死ぬ作りの様だったが、違うのか??」
「クエル……??」
「クエルと違い、ルアッハは食の他に吸収と同化ができるのだが、お前は何か食以外にできるのか??」
「……ルアッハ??」
よくわからない単語がさっきから出てくる。
何となく言いたい事はわかるし、カナカと言うのは人間みたいな意味なんだろうがクエルって何だ??
しかもルアッハって??食べる以外に吸収と同化が出来るってどういう事??
それの方も俺が理解できない事がよくわからないようだ。
お互い顔を向かい合わせ、頭に疑問符を浮かべている。
「なるほど……別のドルムとではかなり事情が違うようだな??」
「……そうみたいですね??」
獅子系の獰猛なモンスターの様な顔を、うむ、と言ってちょっと傾けた。
顔は怖いけど、慣れてきたせいか可愛い気がしてきた。
どうせいずれはこいつが食ってくれるんだし。
そう思うと妙なもので、それまで毎日ただただ仕事に行って遅くにくたびれて帰って寝るだけの日々の中で感じていた言い様のない不安と焦燥感は消え失せ、俺は妙な安心感に包まれゆったりした気持ちになったのだった。
29
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる