異世界に落っこちたので、ひとまず露店をする事にした。

ねぎ(ポン酢)

文字の大きさ
21 / 39
第二章「ひとりといっぴきのリスタート」

癖のあるダンディー

しおりを挟む
「スキューマの販売??」

怒ったままトレスがトラッドに所長に送られて行った後、俺は継続的に今後来る事といずれ商品として出そうかと思っているものについて聞いてみていた。
相談をする為に商業許可証の受付相談窓口ではなく、それ用のスペースっぽい机と椅子の所でギムギムさんと向かい合って話していた。
ちなみにギムギムさんというのはノース君がつけたあだ名だったらしい。
リーフスティーさんが呼んでいたギムールさんが正しい。
でもノース君が呼び始めてから職場ではこの愛称で通っているみたいで、どっちで呼んでもいいと言われた。
先日と今日の騒ぎのお詫びから始まった談笑を、ノース君がチラチラこちらの話を聞いているのが耳の動きでわかってちょっと可愛い。

「はい。スキューマって言っていいのかわからないんですけど、そういう物って販売するのに何か許可がいるだろうなと思って。」

日本でも酒類の販売には許可がいるから、ここでもそうなのではないかと思って相談してみた。
別に酒類(ここでは炭酸水なのだが)を売ろうとしている訳ではないのだが、過程で炭酸水の様になってしまうのだ。
話していてどういうものか聞かれたので、説明するより見せた方が早いと思い、作って見せる。

「ほう……これはまた……。」

「わ~!!コーバーさん!!何スか?!これ?!何でこうなるんスか?!」

「こら、ノース!持ち場を離れるんじゃない!!」

ノース君はそうギムギムさんに怒られたが、他の人もわらわらと珍しそうに集まってきた。
これではノース君を怒るに怒れず、ギムギムさんが苦笑している。
リーフスティーさんが不思議そうに俺の作ったグラスを覗き込んでいるのが水族館みたいで綺麗だった。

「ええと……ちょっと味見をされますか??」

皆さん仕事中という事もあって、俺は控えめに言ったが、目の輝きを見て俺は一口ずつ程度にそれを分け、飲んでもらった。

「あら、これぐらいって飲みやすい!」

「スキューマって程でもないな??でも多少は炭酸を感じる。」

「これって酔物販売許可、要ります??」

「微妙だなぁ~!!」

「コーバーさん!!もっとたくさん飲まないとわかんないッス!!」

「こら!ノース!!調子に乗るんじゃない!!」

そんな風にワイワイしていると、所長さんが帰ってきた。
皆が集まっているので、当然こっちに来る。

「何集まってんだ?」

「あ、所長さん、ありがとうございました。」

「あぁ、いいって。ああやって悪戯な行動を取るのもシンマの特性だしな。むしろ店主がおっかない顔で鷲掴みにしてたんで、そっちの方が心配だよ、俺は。」

「あ~……。」

トレス、大丈夫だったろうか…。
まぁ自分でやった事なのだし、俺が何かしてやれることも無いし、仕方なかろう。
俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。

「で??オメェらは仕事もしねぇで集まって、何してんだ??」

にっこり笑って所長さんが言う。
笑顔の割にドスの効いた声に、集まっていた人たちが散っていく。
それを見送ると、困ったもんだとギムギムさんの隣にドカッと腰を下ろした。
そうは言っても、睨みを利かせただけで、別にクドクド何か言ったりもしない。
俺を見て、で?何してんだ??とか笑ってる。
中々、面白い人だよな、所長さんて。

「コーバーヤッシュ氏が新しい飲み物の販売をするに当たり、酔物販売許可がいるか聞かれていた所なんですよ。」

ギムギムさんが丁寧に所長さんに説明する。
それを聞いた所長さんはキラキラと目を輝かせた。

「スキューマ売んのか?!アルバの森にゃ炭酸鉱泉があんのか?!」

「炭酸鉱泉??」

「炭酸水の湧き水の事です。天然スキューマと言われ、しかもそれがマクモ様の住まう森となるととても価値がありますね。」

そう言えば日本にも炭酸水が湧き出る場所があるって聞いた事があるな??
残念ながらアルバの森にはそんな所はないけれど。

「で?!どこだよ?!湧いてんのか?!」

「すみません……湧いてる場所はないんです……。」

「そっか~!!もしあったら!うっはうはのがっぽがっぽだったのによ~!!」

「所長、マクモ様の住まう場所なのですから、たとえ炭酸鉱泉があったとしても、その言い方はちょっと……。」

「何!アルバのマクモ様ならんな言い方一つに何だかんだ言わねぇよ?!気にし過ぎだっての!!」

「は、ははは……。」

所長さんはネストルさんに会った事でもあるのだろうか??
ネルとしては会ってるけどさ。

「で??炭酸鉱泉じゃねぇなら、何なんだ??」

「えぇ、今、皆で味見をさせてもらったのですが……。」

「スキューマの味見だぁ?!皆、業務中にいい度胸じゃねぇか?!」

「いえ!一口程度しか飲んで頂いてませんから!!」

「それに、酔物販売許可がいるか微妙なラインでして……。」

「お~、よくわかんねぇが、俺も味見させてもらってもいいかい??」

「もちろんです。」

俺は急いでそれを作って見せた。
おお!と言いながら見ていた所長さんは、それが出来上がると、一口に分ける間もなく、ガシっとグラスを掴んで飲み始めてしまった。

「えっ?!所長さん?!」

「……やると思っていましたよ…。」

ゴクゴクと飲み干す所長さん。
え??これ、酒扱いだったとしたら、まずくないですか?!
オロオロする俺に、ギムギムさんが諦めたように首を降ってみせた。

「ぷはぁ~!!旨い!!」

「ええと……ありがとうございます……。」

「だが、これは確かに微妙だな??スキューマつって良いのか??」

「ええ。そこまで炭酸がしっかりしている物ではありませんが、ゼロではないですからね。酔物販売許可を出す程ではなくとも、つけなければ成人前の子供などが飲んでしまう恐れがありますね。」

「ん~。確かにそうだなぁ~。スキューマっていえるもんでもないが、子供が飲む恐れが出てくるとなると付けざるおえんなぁ。」

「では、酔物販売許可を頂きたいのですが……。」

「そうだな、ギムール、作ってやんな。」

「すぐにですか??」

「だってよぉ?スキューマって言えるほどのモンでもねぇし、こいつの場合、マクモ様の息吹がついてんだぜ??身元調査も糞もねぇだろ??」

「そうですね。では、今から書類をお作りしますので、しばらくお待ち下さい。」

「あ、はい……。」

そうか、酔物販売許可を得るには身元調査とかもされるのか……。
でもここはネストルさんが治める土地で、そのネストルさんから息吹をかけられている俺は、ある意味、印籠を持った水戸光圀公みたいなものなのか……。
例えが古いなと自分で自分にツッコむ。

「あの……もし時間がかかる様でしたら、露店販売後に売上報告と納税の時にもらっても良いですか??」

「そうですね、あまりここで足止めをしてしまっては、コーバー君の売上に響いてしまいますね。それで大丈夫ですよ。」

何だかんだで時間を食ってしまったので、そろそろ露店を出しに行きたい。
俺の提案にギムギムさんは快く頷いてくれた。

「あ!!なら俺が昼休みに届けるッス!!」

そしてそれを耳聡く聞いていたノース君が、嬉々として反応したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...