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第1章

自分の色

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 覚えられたのは四つの国と魔族について。会長が分かりやすいようにゆっくりと丁寧に説明してくれたのでそれだけだが今街に着きそうな状況らしい。

 その街は国でもそこそこ大きい街で、付近にあまり魔獣が出ないため自然豊かで温和な街なのだそう。


 あ、街が少し見えてきた。とワクワクしていたら急に馬車が減速し、止まった。もう街も見えてあともうちょいってとこなのにどうしたんだろう?と顔を覗かせると、ブレイディが降りてきた。


「ナツキ様」

道中、最初の休憩でみんなで自己紹介をしたんだが、そんとき様付けされて、拒否したんだけどやめてはくれずこの呼び名に至ります。うーん、やっぱり違和感しかないんだよなぁ。まぁ、今はまだいいか。仲良くなってきたら取り下げて貰おう。


「はい、何かありましたか?もう街は見えているのですが」

「申し訳ありません。ですが、失礼ながらその髪は地毛でございますか?」


…え?

笑顔のまま固まった。
要は後ろで吹き出している。

で、ブレイディはがカツラか植毛かをしているんではないかと疑っているのかな?…何故?

何も答えないでいるとブレイディが焦ったように

「すみません!ただ、ナツキ様の髪色は大変珍しく、街に入るには隠した方がよろしいかと…」

「これ、珍しいんですか」

自分の白い髪に触れる。

「えぇ。大変珍しい…というか…」

「というか?」

会長もブレイディの背後で首を傾げている。4人揃ってブレイディに疑問の目を向ける。

「単刀直入に申し上げます。このままナツキ様が街に入ったら、まず捕まり、処刑されるでしょう」

はぁ!?

これにはさすがの蘭海ちゃんも目をほんの少しだが見開いた。

え?うち・・殺されるの?何故?

「それはどういうことかしら?ブレイディ」

言い方こそおっとりしているが、明らかに困惑の表情が伺える。

「実はこの世界で、純白の髪に緋色の瞳を持つ者は『魔に呪われし子』といわれ、又の名を『忌世イヨし子』とよばれています。この者の周りには災厄が降りかかるといわれ、忌み嫌われているんです…」

魔に、呪われし、子…?

ぽかーんと言われたことを飲み込めないでいると

「あ、あと忌世し子は絶世の美女でもあるといわれ…あれ?ナツキ様は確かにこの世のものとは思えないくらい美形ですが、男…え、あ、あれ?」

ブレイディも混乱しているようだ。うん、ほんとにごめん。うち女なんだ。

…まぁ、言うつもりは無いがな。

「忌世し子とはこの世に何人程いるんでしょうか?」

先に回復したらしい要が質問を飛ばす。

「いえ、忌世し子は存在自体が伝説のような御伽噺のようなもので、私は初めて見ました。しかし、忌世し子が実在していたことは明らかですので空想のものではないのは確かです」

ただ聞いていた話とはちょっと違うんですけど、と付け加えた。
しかし、これ、処刑までするほどのものなのかな?私にはとてもそうには思えないけど…

というか、コレどうやって隠せばいいのかな?
あ、フードあったな。よし。

と、いうことでフードを深く被った。が、

「それだけでは無駄ですね」

確かにちょっと無理があるかもしれない。

どうするべきが腕を組んで悩む。

「…髪色と瞳の色を変えるくらいでしたら、簡単な魔法でできますよ?」

はよ言えぇっ!!



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ということで、金髪碧眼になってみました☆

 あ、この魔法さ、別に色を変えるわけじゃなくて誤魔化すだけなんだよね。相手から見える色を変える理由で、幻影の類だそうで。それに色だけだから魔法とかよく分かんなくてもちゃんとできました。便利便利。

「なんで金髪碧眼なの?確かに物凄く似合ってるのだけれど」

「いや、ただ元の世界で要望が多数あったから…」

うん。ほんとにただそれだけなんだ。怖いくらいに多かったからね。うん…



「ナツキ様!とてもよくお似合いです!!」


…何故ブレイディは涙を流しているんだ…?

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懸念材料を解決し、街に入る。

一歩踏み出す。そこには元の世界では見られない、眩しいくらいの世界があった。











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