坊主が上手に坊主のガワを被って夢を描いた

逢真まみ

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1章

梵悩寺ちゃんねる、始動

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拝啓、視聴者さま。
このたび、梵悩寺二十五代目跡取り――釈迦丸ゆめのすけ(25)、
悟りより先に、収益化を目指します。

うちは創立25周年の、地味な地方寺。
本堂の屋根は、まさかマジかの25か所雨漏り。檀家の平均年齢は75歳。
ご高齢なのが世の常、人の常、ってやつでしょうか。
親父は今日も「お布施が減ってる」とすすり泣きながら、油揚げを
一ま~い、二ま~い……と、まるで某皿屋敷のように数えている。

時代が進んでも、うちのWi-Fiだけは成仏しないでほしい。
いや、この状態でお陀仏になられたら困る。……いや、お釈迦か。
いやいや、上手いこと言ってる場合でもない。

信仰よりもトレンド、説法よりもバズ。
――それなら、俺もバズってみせようじゃないか。

猫耳ヘッドホンに袈裟を羽織り、
可愛い女の子の外見(ガワ)を被った俺は、25歳にして悟った。

「金より尊いものがある? ……いや、**スパチャ(お布施)**だろ。」

『梵悩寺ちゃんねる』、開眼配信スタート!
「迷える娑婆のみんなーッ! 今日も救われる準備はできてるかーッ!?」

コメント欄が一斉に流れる。

> 「25歳で悟る浅い坊主w」
「投げ銭したら成仏できる?」
「これが令和の宗教改革か…」



……いいじゃないか、煩悩上等。
俺は今日も、“25℃のやる気”で世界を温める。
熱すぎず、冷たすぎず、ちょうど良い温度で娑婆を湧かせてやる。

> 「登録者が25人になったら、鐘を鳴らします。――チーン。」



……生臭坊主乙。と言われたって構わない。
世の中、金だけじゃないけど、資金が無いと寺の再建も出来やしない。
何より―親父が大切に守ってきた寺を、ここで終わらせたくはない。

親父は誠実に、実直に、寺を運営してきた。
困っている人には食べ物を分け与え、心の傷を抱えた人には静かに寄り添う。
そんな親父が報われないなんて、あっていいはずがない。
きっと、俺がVTuberになってお布施を稼ごうなんて言ったら反対するに決まってる。

だから、活動時間は限られる。
親父にバレないようにするには――寺が寝静まる時間。
そう、25時だ。

寺が寝静まる頃、俺はひとり、モニターの光を浴びながら息を整える。
初配信の同時接続数は――わずか3人。
それでもコメントが一つでも流れた瞬間、胸がじんと温かくなった。
「救われた気がする」
その一文を見たとき、俺は少しだけ悟った気がした。
金も大事だが、人の心を動かせるのも、悪くない。
さあ、次は25回目の配信で鐘を鳴らそう。
煩悩まみれの夢は、まだ始まったばかりだ。
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