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始まった侵略
6.とうばつ
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6.
――俺は、眺めていた。
全身を汗と涙で濡らし、ガタガタと震え、それでも腰が抜けないようにふんばりながら、ある一点を見つめていた。
「ジ……」
ソイツは呻き声を上げ、苦しそうにもがいている。
ウネウネとうねった植物の蔓に、身体の間接の至る所を締め付けられながら。
身動きの出来ないまま、ずっともがいていた。
「……」
何が、起きたというのだろうか。
絶対に、死ぬ場面じゃなかったのだろうか。
コイツは一瞬で移動してきた。
多分、本物の猿でも、50mはある距離を数秒で飛んでくるなんて不可能だろう。
けれど、それ以上に。
……左手にあるスマホを、魔物から目を離さないようにしながら、ゆっくりと確認する。
『西園寺様 に お知らせがございます』
メッセージが届いていた。
そんな機能があるとは知らなかったけれど、何故だか、今はソレを確認しなくてはいけない気がした。
震える指先で、ゆっくりと"確認する"をタップする。
ブーーーーーッッ。
「ほわぁお!?」
「ジィァァァァ!!!」
俺と魔物が同時に声を上げた。
俺は飛び上がったし、魔物も飛び掛かかろうとした……が、植物の蔓がそれを許さない。
色々な意味で冷や汗の流れる一瞬だった。
しかし、案外蔓はがっしりと魔物を掴んでいるようだ。
これなら、もしかすると安心かもしれない……。
「それじゃ、少しだけ……」
魔物から目を逸らし、スマホへと目を向ける。
" 名称:うっきうき丸
種類:動物型 "
「……え?」
……そんな文字が、画面の上部分に少し大きく、濃いフォントで書かれている。
思わず2度見。
3度見。
4度見。
5度見。
何度見ても、それはうっきうき丸だし、スマホの画面に表示されている事に代わりはなかった。
" 図鑑No:158
レベル:18
特徴:高い木の上を自在に飛び回り、鋭い爪で獲物を狩る。
飛び回っている時の時速は100キロを超えることもある "
「は?」
続いて流れる情報をフリックする。
とりあえず、口をついて出た率直な感想はコレだった。
うっうき丸。
……まるで、この魔物に似た動物、猿をもじった名前だ。
高い木を自在に飛び回る。
……確かに。
鋭い爪。
……ふむ、確かに鋭い。少し触ったら、薄皮が切れてしまいそうだ。
「……でも、こんな機能」
あったか……いやいや、あるはずがない。
そもそも、このアプリはどこで出た? 俺の死んだ、前の世界だろう?
それに、魔物の情報なんて登録してあるか?
ブーーーーーッッ。
……と、そんな所で更にバイブレーションが鳴る。
また追加で情報が来たのだろうか。
何だろう。
今度は、好きな食べ物とか、そんな――
" およそ4秒先、左方向です。その先、2秒後に右方向です。その先―― "
「――は?」
そんな、電子アナウンス。
ペラペラペラと、相変わらず抑揚の無い音声を流し続けるそれに、俺は身体が固まった。
一瞬だった。
「ジィィィィィィィィィィィィィィィ」
蔓を引き裂いた魔物が、俺に肉薄する。
腕を振り上げ、銀に輝く刃物の様な爪を振り下ろす。
" 左 で す "
「――っ」
間一髪。
アナウンスの言葉通りに、左へと飛ぶ。
……油断していた。
そうだ、こいつは蔓を引き裂こうとしていたじゃないか。
警戒、してないといけなかったんじゃないか。
すぐに逃げるべきだったんじゃないか。
(そうだ、逃げ――)
二秒後。
右方向。
「しまっ、」
――――――ヒュッ。
それは一瞬だった。
二秒あっても、そんなの俺にとって、人間にとっては一瞬の出来事だった。
「…………あ……」
それは、鋭かった。
鋭すぎて、痛みを忘れるほどに。
首を引き裂かれても、痛みを感じさせないほどに。
けれど、温かかった。
だから、感じた。
猿の魔物の、血の温もりを。
「ジ」
それだけ聞こえて、後はひたすら何かが吹き出す音だけが聞こえた。
目の前で起きているその光景に対して、俺は多分、何も理解することが出来なかった。
俺がしたことなんて、何も無い。
右へ飛べと思い出して、その頃にはもう遅くて。
ただ、勝手に動いていた。
心臓の鼓動も。
震える肩も。
溢れる涙も。
捻った身体も。
突き出した右腕も。
全部勝手に動いて、Coocleの示す道標に従っていた。
" 目的地に 到着しました "
……そんな。
抑揚の無いアナウンスに、従っていた。
――俺は、眺めていた。
全身を汗と涙で濡らし、ガタガタと震え、それでも腰が抜けないようにふんばりながら、ある一点を見つめていた。
「ジ……」
ソイツは呻き声を上げ、苦しそうにもがいている。
ウネウネとうねった植物の蔓に、身体の間接の至る所を締め付けられながら。
身動きの出来ないまま、ずっともがいていた。
「……」
何が、起きたというのだろうか。
絶対に、死ぬ場面じゃなかったのだろうか。
コイツは一瞬で移動してきた。
多分、本物の猿でも、50mはある距離を数秒で飛んでくるなんて不可能だろう。
けれど、それ以上に。
……左手にあるスマホを、魔物から目を離さないようにしながら、ゆっくりと確認する。
『西園寺様 に お知らせがございます』
メッセージが届いていた。
そんな機能があるとは知らなかったけれど、何故だか、今はソレを確認しなくてはいけない気がした。
震える指先で、ゆっくりと"確認する"をタップする。
ブーーーーーッッ。
「ほわぁお!?」
「ジィァァァァ!!!」
俺と魔物が同時に声を上げた。
俺は飛び上がったし、魔物も飛び掛かかろうとした……が、植物の蔓がそれを許さない。
色々な意味で冷や汗の流れる一瞬だった。
しかし、案外蔓はがっしりと魔物を掴んでいるようだ。
これなら、もしかすると安心かもしれない……。
「それじゃ、少しだけ……」
魔物から目を逸らし、スマホへと目を向ける。
" 名称:うっきうき丸
種類:動物型 "
「……え?」
……そんな文字が、画面の上部分に少し大きく、濃いフォントで書かれている。
思わず2度見。
3度見。
4度見。
5度見。
何度見ても、それはうっきうき丸だし、スマホの画面に表示されている事に代わりはなかった。
" 図鑑No:158
レベル:18
特徴:高い木の上を自在に飛び回り、鋭い爪で獲物を狩る。
飛び回っている時の時速は100キロを超えることもある "
「は?」
続いて流れる情報をフリックする。
とりあえず、口をついて出た率直な感想はコレだった。
うっうき丸。
……まるで、この魔物に似た動物、猿をもじった名前だ。
高い木を自在に飛び回る。
……確かに。
鋭い爪。
……ふむ、確かに鋭い。少し触ったら、薄皮が切れてしまいそうだ。
「……でも、こんな機能」
あったか……いやいや、あるはずがない。
そもそも、このアプリはどこで出た? 俺の死んだ、前の世界だろう?
それに、魔物の情報なんて登録してあるか?
ブーーーーーッッ。
……と、そんな所で更にバイブレーションが鳴る。
また追加で情報が来たのだろうか。
何だろう。
今度は、好きな食べ物とか、そんな――
" およそ4秒先、左方向です。その先、2秒後に右方向です。その先―― "
「――は?」
そんな、電子アナウンス。
ペラペラペラと、相変わらず抑揚の無い音声を流し続けるそれに、俺は身体が固まった。
一瞬だった。
「ジィィィィィィィィィィィィィィィ」
蔓を引き裂いた魔物が、俺に肉薄する。
腕を振り上げ、銀に輝く刃物の様な爪を振り下ろす。
" 左 で す "
「――っ」
間一髪。
アナウンスの言葉通りに、左へと飛ぶ。
……油断していた。
そうだ、こいつは蔓を引き裂こうとしていたじゃないか。
警戒、してないといけなかったんじゃないか。
すぐに逃げるべきだったんじゃないか。
(そうだ、逃げ――)
二秒後。
右方向。
「しまっ、」
――――――ヒュッ。
それは一瞬だった。
二秒あっても、そんなの俺にとって、人間にとっては一瞬の出来事だった。
「…………あ……」
それは、鋭かった。
鋭すぎて、痛みを忘れるほどに。
首を引き裂かれても、痛みを感じさせないほどに。
けれど、温かかった。
だから、感じた。
猿の魔物の、血の温もりを。
「ジ」
それだけ聞こえて、後はひたすら何かが吹き出す音だけが聞こえた。
目の前で起きているその光景に対して、俺は多分、何も理解することが出来なかった。
俺がしたことなんて、何も無い。
右へ飛べと思い出して、その頃にはもう遅くて。
ただ、勝手に動いていた。
心臓の鼓動も。
震える肩も。
溢れる涙も。
捻った身体も。
突き出した右腕も。
全部勝手に動いて、Coocleの示す道標に従っていた。
" 目的地に 到着しました "
……そんな。
抑揚の無いアナウンスに、従っていた。
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