夢院

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その0 「出会い」

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-魂-
肉体とは別に精神的実体として存在すると考えられるもの。

個人の肉体や精神をつかさどる人格的存在で、感覚による認識を超えた永遠の存在。

「ぶえっくし!」

情けなくくしゃみをしたのは星野 英雄(ほしの ひでお)。

「魂飛んでっちゃうよー。」

変なつっこみを入れたのは英雄の幼馴染、桐谷 姫子(きりたに きこ)。

英「それ海外の話でしょ。」

姫「でも、魂はあると思うよ。」

英「んなもん信じねぇよ。元々俺は魂入ってないみたいな感じだし。」

姫「そうだね。」

英(ちょっとはつっこめよ...。)

いつものように帰路についた二人は他愛もない会話をしながら歩いていた。

今日の授業の話、友達の話、趣味の話、昨日のテレビの話...。

カップルのように見えるがカップルではない。幼馴染だ。

姫「じゃあまた明日ね。」

英「おう。またな。」

いつものように別れ、家に入る。

英「ただいまー。」

「お帰りなさい。」

快く出迎えてくれたのは英雄の母 星野 結井(ほしの ゆい)。

英「飯?」

結「の前に手、洗ってきなさい。」

英「出来てるんだね。」

その後はいつも通りの生活。

夕飯を食べ、風呂に入り父、星野 聖也(ほしの せいや)が帰宅。

英「紅梅~~元気か~?黒松~~最近元気ないから栄養剤足しとくぞ~!」

聖「綺麗に育ってるな。」

英「みんな一つ一つ大切に育ててるからな!」

聖「ははは。」

英雄は趣味の盆栽をいじり、部屋に戻り勉強をして寝る準備をした。

なにも変わらない日常だ。

英「明日も何もない一日が来る。平和だ。」

・・・

・・・

・・・

英「寝れん。」

英「いつもなら深夜1時を過ぎたら自然と眠くなるのに、不思議と眠れん。」

時計は深夜2時を指している。

妙に腹が空く。

英「なんか食うか。」

そういって台所に行くが、冷蔵庫には何にもない。

英「目だけでも閉じておとなしくしとくか。」

そういって寝床についた。

・・・

・・・

バサァ...バサァ...

・・・

・・・

バサァ...バサァ...

・・・

聞いたことのない鳥のような羽音に思わず起き上がる。

英「なんだよ!寝ようとしてるのにどんな鳥だよ!」

英雄の部屋は二階で、家の周りは田んぼだらけで見晴らしはいいのだが、月明かりに照らされている田んぼにそれらしい影はない。

英「確かに聞こえたんだがなぁ。」

そういってまた寝床についた。

バサァ...バサァ...

バサバサバサ....ドンッ!

英「!?!?!?!?!?!」

あまりの物音に、体を起こした。


ベランダの窓に見たことのない人の影が見えた。

英「...!?」

恐怖なのか声が出ない。

カラカラカラ

鍵を閉めているはずの窓の鍵を開け、影は部屋に侵入してきた。

英「!???」

不思議と足音はしない。

これが幽霊か...

英雄はそう思ったが、その疑問はすぐに晴れた。

「貴様が声が出ないのは分からないでもない。騒がれると厄介だから貴様の声を一時的にでないようにしている。」

その綺麗で透き通った女性の声はどこでも聴いたことはない。

シルエットはスタイルのいい女性である。

ヴ「私の名はヴァンプ。貴様の魂を取りに来た。騒ぐと無条件で魂を抜く。黙って私の話を聞くのだ。」

英雄はヴァンプをきつくにらんだ。

ヴ「信じられないようだな。では見せてやろう。悪魔の力を。」

そういってヴァンプは庭に置いてあった英雄の盆栽をどこからともなく持ってきた。

英(俺の黒松~~!!渾身の一作が~~~!!)

ヴ「大丈夫だ。この木に危害は加わらんよ。」

そういってヴァンプが手を盆栽にかざす。

ぽう

英雄の盆栽、黒松が光り出した。

その光はヴァンプの手と一緒に動いている。

ヴ「信じられないだろうがこの木の魂だ。貴様が大切に育てていたのがよくわかる...。魂が喜んでいる。今日は栄養剤を足してくれてありがとうといっておるぞ。」

英(え?黒松の気持ちが分かるのか!?)

ヴ「そうだ。...騒がなさそうだな。声を出させてやろう。」

英「マジ?...あ、声でた。」

ヴ「さて、本題だが早速だが貴様の魂をもらいに来た。」

英「そんなん漫画ぐらいでしか見たことがねぇよ。」

ヴ「そんなもの逸話にすぎん。貴様と契約して、貴様の望みをかなえてやる。その報酬として魂をいただく。それまでだ。」

英(望むもんなんて今んとこねぇからなぁ...。でも、こいつを利用して盆栽と話せるようになれば...でも魂は...本当に操れるようだ...)

ヴ「望みがないのか?」

英「いや、ある。」

ヴ「ほう。言ってみろ。」

英「俺の...近くにいてくれ。」

ヴ「......は?」

英「俺の近くにいてくれよ。そしたら周りの盆栽とかからちょいちょい魂取るとか...無理すか?」

ヴ「…大切な盆栽から魂を取っていいのか?」

英「いっぱいあるし、もう歳取ってるやつあるし…もう一杯になって来てるし…」

ヴ「…貴様、なかなか頭の動くやつだな。」

英「え?」

ヴ「先ほどの盆栽の魂のように人間が精鍛こめて作ったものには魂が宿る。つまり、貴様が死ぬまでそばにいて貴様の周りの盆栽の魂を延々と摂取し続けるという事か。」

英「そ、そういうこと。」

ヴ「盆栽と契約はできない。」

英「ですよね...。」

ヴ「しかし貴様と契約を結ぶ以上、近くにいるという契約で貴様の魂を取ることはできん。だからこういう契約変更をしたい。貴様の周りのやつの魂を少々ずつ取っていく。」

英「え?それって俺の周りの人達が魂を取られるのか...!?」

ヴ「違う。先ほど言ったように、人間が精鍛こめて作ったものには魂が宿る。そして、髪の毛、爪などの人間の一部にも魂が宿る。つまり、契約の代わりに勉強ができなくなる、大事なものをなくす伸ばした髪を20cm切るとかいう契約をして行く。」

英「というと?」

ヴ「貴様の周りに出る危害は契約によるもの。貴様が死ねば貴様の魂をとる。それまで貴様の周りのものから魂を取って行けばWINWINだ。私の徘徊の手間が省ける。」

英「そうですか...。」

ヴ「明日、貴様の近くにいる存在が現れる。それが私だ。これで契約完了とするか?」

英「質問。悪魔との契約をしないとかってできるの?」

ヴ「できん。いや、みな望みを持っている。貴様が無欲で盆栽と話すために私を利用しようとしているのは読めているぞ。」

英「読んでいたのかよ。」

ヴ「しかし自分が読めるようになるではなく、私を使うときたのはおもしろいかったぞ。私以上に悪魔の素質があるな。」

英「褒めてねぇよ..それ。」

ヴ「質問はそれだけか。契約完了なら貴様に刻印をする。」

英「あぁ。構わない。俺のそばにいるだけで。」

ヴ「では、貴様の魂に刻印する。」

ヴ「はぁぁぁぁぁああああ!!!!!」

ドサッ!

英(なんか落ちた?)

英雄の目の中には自分の倒れた姿が見えた。

ヴ「貴様の魂に刻印する。すぐに戻してやる。」

ヴ「ハッ!」

英雄の体に殴られたような衝撃が走り、そのまま気絶してしまった。


英「...ん...朝....。」

外はすっかり朝。

英「昨日ここに黒松が...あれ?ない。」

窓の鍵もかかっている。

英「なんだ...夢だったのか...。」

そしていつものように登校をした。

英「...ったく...変な夢みたなぁ。」

姫「どんな夢?」

英「悪魔と契約する話。」

姫「何それw」

英「魂取るって言われてさ。」

姫「魂信じないのに?」

英「信じざるを得ない説得の仕方してきたからな。」

姫「盆栽を切ろうとして『この盆栽をきるなら...』的な?」

英「強盗じゃねぇか。」

姫「そう!昨日近所で銀行強盗あったんだよ!犯人逃走中だって!」

英「そっちのほうが怖いわw」

そして学校に着き、他愛もない会話をしている。

クラスに入ると、2人に妙なものが目に入ってきた。

英「ヒメ、席増えてね?誰の席?」

姫「さぁ...ヒデくんとあたしの席の間じゃん...。」

英「???」

姫「人が来るのかな?ヒデくんと話せなくなっちゃうなー。」

英「授業ではお前寝てばっかだろー。」

姫「(∀`*ゞ)エヘヘ」

「ホームルーム始めるぞー席につけー。」

担任の真田(さなだ)が入ってきた。

真「今日は席が増えてるから察しているとは思うが、転校生が入ってきたぞ。」

「わー!!」

クラス中が盛り上がる。

男子は可愛い女の子を想像し、女子はイケメン転校生のことを考えている。

姫「男の子かな?女の子かな?」

英「どっちでもかかわらんやつだろう。」

真「はいっていいぞ。」

入ってきたのは抜群にスタイルのいい妖艶な女の子であった。

それは昨日見た悪魔にそっくりな。
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