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39.【勇者side FINAL】ただの男グレイ 壊れる

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「うるさあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああい! うるさいうるさいうるさいうるさい! うるさいんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



 ボクはブチ切れた。



「ロベルがなんだあああああああ! ロベルのウワサは全部デタラメだああああああああああああ! ウソっぱちだあああああああああああああ! イカサマなんだあああああああああああああああああああああ!」



 頭がどうにかなってしまいそうだった。



「どうしてどいつもこいつもロベル最高! グレイ最低! なんだよおおおおおおおお!? どう考えても逆だろうがあああああああああ!? 魔王を倒すのも世界を救うのもボクだあああああああああ!」



「ええい! やかましい! 静かにしろ!」



「この場で首を落とされたいか?」



 左右を固める兵士が剣に手をかけた。
 ボクの両腕をつかむ力がゆるむ! 



 今だ!



「うおおおおおおおおおおおおおおらあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」



 ボクは兵士の腕を振り払った!
 そのまま全力逃走の態勢に入る!



「なっ!? 待て!?」



「待たんと本気で斬るぞ!」



 兵士が剣を、ボクに向かって振り下ろすが!




 ザシュッ!




「当たるかボケエエエエエエエエエエ!」




 ボクは華麗な動きで兵士の剣をかわした!

 服は上も下も切り裂かれたが!
 そんなのは大した問題ではない!

 すかさず!



「うううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



 ボクは全速力で逃げ出した!




「キサマ! いい加減にしろ!」



「このヘッポコ勇者ごときが! 調子に乗るな!」



「逃がすな!」



「追いかけろ!」



「とらえるんだ!」



 兵士が追いかけてくる!
 つかまってたまるか! 




「ボクは勇者だああああ! 勇者グレイなんだああああ! こんなところで終わるわけにはいかない! いかないんだよおおおおおおおおおお!」



 そうだ!

 ボクは勇者!
 ボクは勇者勇者!
 ボクは勇者勇者勇者!



「ボクは勇者ああああああああああああああああああ! ボクは英雄うううううううううううううううううううう! 世界はボクのものおおおおおおおおおおお! ボクはボクはボクはボクはボクはあああああああああああああああ!」



 ボクは走る!
 走る!
 走る! 



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



 素っ裸で走る!
 前を隠して走る!
 尻を隠して走る!



「うおおお……はっ!?」



 村だ!



 前方に村が見えた!



 よかった!
 これで助かった! 



「フハハハハハハハハ! 村だ! 村だ村だ村だああああああ! 勇者グレイのお通りだああああああああああああああああ! 控えろ愚民どもがあああああああああああああああああああああ!」



 ボクは叫びながら、村に突撃する!



「ボクは勇者グレイだああああああああああああああああ!」



「キャアアアアアアアアアアア!?」



「ヒイイイイイイイイイ!?」



「イヤアアアアアアアアアア!?」



 女の歓声が聞こえる!



「ハハハ……!」



 ボクは感動にふるえた! 



「ハハ……ハハハハ……ハハハハハハハハ!」



 やっぱりボクは勇者だった!
 こんなに女の目を引ける男なんて!
 勇者以外にあり得ないじゃないか!



「ハハハハハハハハ! ハハハハハハハハ!」



 ボクは素っ裸で、村中を走り散らかした。



「勇者グレイがやってきたぞおおおおおおおおおおおおおおおお!」



「ヒィアアアアアアアアア!?」



「勇者グレイがここにいるぞおおおおおおおおおおおおおおおお!」



「イヤーーーーーーーーッ!?」



「勇者グレイはいつでもあなたと共にあるうううううううううううううううう!」



「近づかないでええええええええ!?」



 女たちがわめきながら逃げていく!
 あまりのカリスマ性に、照れて近づけないに違いない!




「な、何なんだコイツは!?」



「ヘンタイよーーーー! ヘンタイさんがいるよーーーー!」



「変質者だ! 誰か兵隊に知らせてくれ!」



「ママー! 変な人がいるーーーーー!」



「しっ! 見ちゃいけません!」



「ぎゃははははははは! こいつアホみてええええ!」



「なあなあ、ちょっと話しかけてみろよ!」



「ふざけんな! バカがうつるだろ!」



「うわぁ……」



「なんて人なの……」



「哀れな……」



「神よ……」




 村人がみんなボクを見ている!
 ひとりひとりの声が聞き取れないぐらい、たくさんの愚民どもがいる!
 ボクはみんなの注目の的だ!



「ハハ! ハハハハ! ハハハハハハハハ! ハーーーーーーッハッハッハッハッハ!」



 やっぱりボクはスターだった!

 世界最高のスターだ!
 ロベルなど相手にもならない!
 このボクが最高なんだ! 



 あふれる感動の涙をこらえるため、ボクは天に顔を向ける。




 金色のドラゴンが、空に昇っていくのが見えた。




 その瞬間!



「おぉ……! 何と神々しいお姿のドラゴンじゃ……!」



「天空に向かっていくぞ! もしや、魔王城に?」




 愚民どもの視線が、一斉にボクから外れる!



「ひょっとして! あのロベル・モリス様が、魔王を倒しに向かわれたのでは!」



「そうじゃ! そうに違いない!」



「ロベル様が、世界のために立ち上がってくださったんだ!」




 ブチイイイイイイイン!




「ロベルは関係ないいいいいぃぃ 勇者グレイがここにいるのだああああぁぁ! みんなボクを見ろおおおぉぉ! ボクだけを見るのだああああああああああああああああああああああぁぁ!」



 ボクはわめくが、愚民どもはこっちを見ようともしない。




「おお神よ! ロベル様を守りたまえ!」



「ロベル様にお力を!」



「ロベル様に勝利を!」



「ロベル様!」



「ロベル様!」



「ロベル・モリス様!」




「無視するなああああああああああ! 愚民どもは勇者グレイだけを見ていればいいんだあああああああああ! ロベルは無能だあああああ! 役立たずなんだあああああ! 信じろおおおおお! 信じてくれえええええ! 頼むううううううううううう! うぅわああああああああああああああ!」




 涙と鼻水とヨダレをたれ流しながら。




「うぅわあああああああああ! うわああああああああああああああああ! うあうあ! うぅぅぅぅあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」




 声を枯らすほどにわめき散らかしながら。




「ああああああああああああああああああああ! アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! ああああアアアアああああアアアアああああアアアアああアアああアアあアあアあアあアーーーーーーーーーーーーー!」




 ボクは素っ裸で村中を走り回るのだった。




 いつまでも。



 いつまでも。



 いつまでも……。


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