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灯り火
赤子
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少女の首に手刀を叩き込み、倒れ込む少女を担いで茶色い犬の横に寝かす。俺は空を見上げ目を瞑って過去を思い返す。
俺の人生は戦いばかりだった。友と顔を合わせれば戦い、同僚と些細なことで戦い、そして主のために戦い続けた。だからこそ今の状況は未知の世界だった。
「おぎゃあああ!!」
「ど、どうしよう」
赤子がクリっとした金色の目に一杯涙をためて泣きじゃくる、もちろん俺の子ではないある日、主から手渡され『この子を強くして欲しい』との命令を受けて育てることになったのだが。
「おぎゃあああ!!」
俺はどうして良いか分からずとりあえず赤子に笑いかける。
「おぎゃああああああ!!」
赤子が先程よりも泣いてしまい、俺があたふたしていると通りかかった同僚の先輩がこちらに近づく。
「貴様なにをしている」
「いや、泣き止んでもらおうと笑いかけてた」
「傍から見ると赤子を食べようとする妖怪に見えたぞ」
「すまない」
「私に任せておけ」
先輩が赤子の前に立ち、三本のナイフを取り出しお手玉のようにナイフを回し始める。
「すげー」
「まだまだ!!」
次第に十本、二十本とナイフの数は増えていき、最終的には百本のナイフを回していた。けれど、ナイフの数が増えるほど赤子の顔が引きつる。
「お前ら何してんの?」
側を通った同僚の後輩が話しかけてくる。
「赤子を喜ばせようとしています」
「いや赤ん坊、滅茶苦茶ビビってるぞ」
「えっ」
後輩の言葉にショックを受けた先輩が手を止めてしまい、百本のナイフが赤子に降り注ぐ。
「危ないな」
後輩が赤子を庇い全身鎧でナイフを受け止める。
「お前ら逆に怖がらせてどうすんだよ」
後輩が兜を脱いで顔を赤子に近づける、俺達からは後輩の黒と茶色が少し混じったブラウンの髪しか見えない。
「べろべろばあ~」
「あうあう」
「笑いました」
「すげー」
赤子が手を伸ばしてくる、後輩は兜を被り直してこちらを見る。
「ほら、抱っこしてやれ」
「俺が?」
「他に誰がいる」
「私が抱っこしましょうか!」
「まずはこいつだろ、こいつが育てるんだから」
「それは確かにそうですね」
「了解した」
俺は赤子に近づき慎重に抱き上げる。
「温かいな」
「次は私ですね」
「いや俺だろ」
先輩が両手を広げ、後輩も籠手を外して両手を広げてくる。俺はそれを見てダッシュで逃げるなんとなくこいつらに渡すと長くなりそうだと思ったから、今はもう少し俺が抱っこしていたい。背後から殺気を感じて右手の窓を突き破って外に出る、赤子に窓ガラスの破片がかからないように墨を落としたようなコートに赤子を隠して木に飛び移る、先程まで俺がいた廊下を見ると二十本のナイフが飛んでいた。
「先輩は俺を殺す気か」
そう言いながら俺は木から飛び降りて地面に下り立つと全身鎧の後輩が落ちてくる。
「マジかこいつ」
地面に降り立った後輩が無言で俺に近づく、逃げ切れるとは思わない後輩は俺と同じ速さだ全身鎧を着た状態で今は籠手を外しているので俺より速いだろう。さらに背後に気配を感じて振り返ればナイフを持った先輩が立っていた、俺はこの緊迫した状況をどう打開するか考えていると。
「おぎゃあああ!!」
「「「あっ」」」
赤子が泣き出し、俺達三人は顔を見合わせ赤子が泣き止むまで力を合わせた。
目を開けて空を見る、ポツリポツリと雫が落ちる。
「お前は誰だ!」
こちらを睨む少年を見ながら俺は涙を流す。
俺の人生は戦いばかりだった。友と顔を合わせれば戦い、同僚と些細なことで戦い、そして主のために戦い続けた。だからこそ今の状況は未知の世界だった。
「おぎゃあああ!!」
「ど、どうしよう」
赤子がクリっとした金色の目に一杯涙をためて泣きじゃくる、もちろん俺の子ではないある日、主から手渡され『この子を強くして欲しい』との命令を受けて育てることになったのだが。
「おぎゃあああ!!」
俺はどうして良いか分からずとりあえず赤子に笑いかける。
「おぎゃああああああ!!」
赤子が先程よりも泣いてしまい、俺があたふたしていると通りかかった同僚の先輩がこちらに近づく。
「貴様なにをしている」
「いや、泣き止んでもらおうと笑いかけてた」
「傍から見ると赤子を食べようとする妖怪に見えたぞ」
「すまない」
「私に任せておけ」
先輩が赤子の前に立ち、三本のナイフを取り出しお手玉のようにナイフを回し始める。
「すげー」
「まだまだ!!」
次第に十本、二十本とナイフの数は増えていき、最終的には百本のナイフを回していた。けれど、ナイフの数が増えるほど赤子の顔が引きつる。
「お前ら何してんの?」
側を通った同僚の後輩が話しかけてくる。
「赤子を喜ばせようとしています」
「いや赤ん坊、滅茶苦茶ビビってるぞ」
「えっ」
後輩の言葉にショックを受けた先輩が手を止めてしまい、百本のナイフが赤子に降り注ぐ。
「危ないな」
後輩が赤子を庇い全身鎧でナイフを受け止める。
「お前ら逆に怖がらせてどうすんだよ」
後輩が兜を脱いで顔を赤子に近づける、俺達からは後輩の黒と茶色が少し混じったブラウンの髪しか見えない。
「べろべろばあ~」
「あうあう」
「笑いました」
「すげー」
赤子が手を伸ばしてくる、後輩は兜を被り直してこちらを見る。
「ほら、抱っこしてやれ」
「俺が?」
「他に誰がいる」
「私が抱っこしましょうか!」
「まずはこいつだろ、こいつが育てるんだから」
「それは確かにそうですね」
「了解した」
俺は赤子に近づき慎重に抱き上げる。
「温かいな」
「次は私ですね」
「いや俺だろ」
先輩が両手を広げ、後輩も籠手を外して両手を広げてくる。俺はそれを見てダッシュで逃げるなんとなくこいつらに渡すと長くなりそうだと思ったから、今はもう少し俺が抱っこしていたい。背後から殺気を感じて右手の窓を突き破って外に出る、赤子に窓ガラスの破片がかからないように墨を落としたようなコートに赤子を隠して木に飛び移る、先程まで俺がいた廊下を見ると二十本のナイフが飛んでいた。
「先輩は俺を殺す気か」
そう言いながら俺は木から飛び降りて地面に下り立つと全身鎧の後輩が落ちてくる。
「マジかこいつ」
地面に降り立った後輩が無言で俺に近づく、逃げ切れるとは思わない後輩は俺と同じ速さだ全身鎧を着た状態で今は籠手を外しているので俺より速いだろう。さらに背後に気配を感じて振り返ればナイフを持った先輩が立っていた、俺はこの緊迫した状況をどう打開するか考えていると。
「おぎゃあああ!!」
「「「あっ」」」
赤子が泣き出し、俺達三人は顔を見合わせ赤子が泣き止むまで力を合わせた。
目を開けて空を見る、ポツリポツリと雫が落ちる。
「お前は誰だ!」
こちらを睨む少年を見ながら俺は涙を流す。
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