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始まりの日

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昨日に引き換え、今日は清々しい晴天である。
高く澄みわたった空は今日の門出を祝って貰えているようだ。

長かったこの十数年。
孤児として拾われ育てて貰い感謝も勿論あります。
勿論ありますが…。
このクソ兄たちのせいで感謝も略マイナスですよ。

長兄は人の事をまるで居ないもののように。
次兄は力でガチ目の暴力を。
三兄はネチッコイ嫌がらせを永遠に。

使用人も同じで実子ではないと養女には関心さえもたず。
誰も助けようとせず見て見ぬふりの使用人ども。

義両親に訴えれば叱ってはくれるが次にはもっと酷くなる。

早くこんな地獄から開放されたかった。
一日も早くここから逃げられるならば縁談なんか誰でも我儘なんて言わない。
数多来た釣書見合い写真その中でも出来るだけ優しそうで穏やかそうで普通の人を選んだ。
これで心穏やかな余生が送れる。
穏やかに送れるなら多少の浮気も飲んだくれも何だって受け入れる。

そう決まってからはお相手の方とお会いしたりお出掛けデートしたり、話が進めば今度はドレスの準備や日取りや式場などの準備も着々進んで。

これで私も幸せになれるなんて心を踊らせていたのに何でこんなことになったの?

式当日やっと着付けが終わり新しい旦那様になる方と馬車へ乗り込み他愛ない話をしながらガタガタとした揺れに身を委ねていると突然馬が嘶きいななき御者さんの叫び、ドカンと強く扉を蹴りつけられ無理矢理引きずり出された。
「XXX様っ」
「○○○っ」
相手のお名前を叫び次の瞬間目の前でその方の首が胴体と切り離された。

涙が出る間もなく自らの服の破ける音と胸に感じた熱さだけ。

何でこんな目に合わなければいけないのか?
ただ幸せになりたかっただけなのに。

そう切なさと無念さを感じながら私の生涯は幕を閉じたのだった…。
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