少女になりたくないのに

雨茶野リリィ

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奇妙な生物と出会うお話

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僕の名前は西村結翔。ごく平凡な男子高校生だ。
ごく平凡な、男子高校生、......のはずなんだけどな。
どうして僕はメイド服を来てメイド喫茶で働いているんだろうか。

[ユイ、お客様ポフ! この気配は悪魔憑きポフ!]

ハリネズミのぬいぐるみが傍で浮きながら話す。
それに対して僕は乾いた笑いを返すだけだった。


それ等と出会ったのは、一週間前。学校からの帰り道だった。
進級したばかりで課題も無かったその日、僕は公園に寄り道をした。

ぼーっと遊ぶ子どもを眺めていると、猫が小さなものを虐めているのが目に付いた。
ふと気になって近付くと、猫はそれを放って僕に擦り寄る。初めて見る猫だけれど、僕は昔からよく動物に好かれやすい性質なため、威嚇されずに済んだ。

猫を撫でながらそれを拾い上げると、ボロボロになったハリネズミのぬいぐるみだった。
どうしてか、そのままにしておけなかった。
家に帰り、ぬいぐるみを洗う用に桶に水と洗剤を入れて綺麗にし、そのぬいぐるみを洗う。そして部屋にある裁縫セットと新しい生地や綿を使ってボロボロのぬいぐるみを修復した。
破れていた所にはアップリケやリボンなどを飾り、そこそこ可愛く仕上がった。

その時は、何も無かったのだ。
それは普通のぬいぐるみだった。

異変が起きたのは、夜寝た後。
修復したぬいぐるみが夢の中に現れて、話しかけて来たのだ。


[ポフ~! 結翔君、ポフを助けてくれてありがとうポフ! ポフは魔法の国から来たポフィル! 魔法少女になってくれる人を探してこっちの世界に来たポフ! よろしくポフ~!]

「............。............。............夢か。」

[そうポフ! ポフが結翔君の夢に干渉しているポフ!]

「あ、ソウ。え、もう寝て良いかな。」

[だめポフーー!]

「え...」
全力で却下された。
そんな馬鹿な。

[ポフが結翔君の夢に出たのは理由があるポフ! 結翔君には魔法少女になって欲しいポフ!]

「...幻聴が...」

[幻聴じゃないポフ! 結翔君には魔法少女になってもらうポフ!]

「何で決定事項のように言ってんの?!」

[結翔君にしか頼めないポフ!]

「いやいや、僕は平凡を愛する普通の男子高校生だからムリ。」

[実はポフたちの魔法の国は長年ある国と対立しているポフ。]

「突然語り出したぞ。僕やらないって。聞いて?」

[それは悪魔といって、人のココロを蝕む存在ポフ。悪魔の素は大昔に妖精王様と魔法少女が封印したのポフ。けれど最近になって封印に綻びが生じて来ているポフ。そこから漏れ出した悪魔が世界中に飛び散り、ポフたちの国も半分以上の民が悪魔憑きになってしまったポフ。]

「(ポフポフ言われて内容が入って来ないんだが...)
...えっと、その悪魔憑きって何?」

[悪魔にココロを蝕まれ自我を失った人の成れ果てポフ。稀に悪魔と結合し、適応した人が現れることもあるポフ。その悪魔憑きは悪魔と自我が同調しているポフ。]

「え、怖っ。ムリ、もう聞きたくない。」

[そしてその悪魔憑きを祓えるのは魔法少女しかいないポフ!]

「もう聞きたくないって!聞いて?!」

[だからポフは魔法少女になれる存在を探していたポフ! そして結翔君を見つけたポフ!]

「見つけんなよ!!」

[結翔君には魔法少女になれる素質があるポフ!]

「嬉しくねぇ!」

[だから魔法の力を与えるポフ!]

「与えなくて良いです!」

[ポフポフ☆ポフィル!]

何か出た。
何か生まれた。
ザ・魔法のステッキっぽい物が。

「受け取らないからな?」

[さあそのステッキを手に取るポフ!]

「取らねえって! 僕の話も聞いて?!」

ステッキから逃げる。
 →ステッキが追いかけてくる。
  →ポフィルも追いかけてくる。

「怖い怖い怖い! 何で距離開かないんだよ! 追って来んな!」

[ここは夢の中ポフ。夢では逃げきれないポフ。]

「可愛いぬいぐるみから怖い言葉が聞こえる!」

[ステッキさん、結翔君の手に握られて来るポフ!]

「なんて命令出してんだよ! うわっ!?」

手を見ると、後ろで飛んでいたはずのステッキが握られている。
パッと手を離してみる。
......。
手のひらにくっ付いて落ちない。

「呪いのステッキかよ!」

[魔法のステッキポフ!]

「......えぇぇ。僕魔法少女とかなりたくないんだけど。男だよ?魔法少女って女の子がなるもんだろ。僕男だよ?」

[変身すると女の子になれるポフ!]

「そういう問題じゃなーーーい!」

[さあステッキに魔法の力を込めて変身してみるポフ!]

「いや、ヤダよ。そんな簡単に変身とか出来るわけ...」

ステッキが光った。
輝かしい光を放った。
その瞬間、僕の身体は僕の意思と無関係に勝手に動いた。

「マジカル☆ミラクル☆メタモルフォーゼ!人のココロに棲う悪魔を祓い☆闇に包まれし世界を救う!魔法少女ユイ☆参・上!
 ――なんっでだよ!!」

思わず手に持っていたステッキを投げ飛ばしてしまう。

[すっっごいポフ! 本当に一度で変身出来るとは思わなかったポフ!]

「何で本当に変身させるんだよ!」

[大丈夫ポフ。魔法少女ユイはとっても可愛いポフ!]

「嬉しくねぇぇぇ...」

[さあ魔法少女ユイ!現実世界でも変身して悪魔から皆を救うポフ!]

「このぬいぐるみ押しが強すぎる!!」







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