駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

文字の大きさ
235 / 349
7.女王の奏でるラプソディー

04.訓練

しおりを挟む
「艦長、第一分隊砲雷科および第五分隊飛行科の合同訓練の時間となりました。訓練の内容をゲストの皆様に説明してよろしいでしょうか?」

 ワイアット航空指令の質問に、僕はうなずきます。

「そうですね。任地に到着するにはまだ日程もかかりますから、エリーゼさんとコリーヌさんは作戦参謀として仮配属をお願いします。お二人は、地上兵力の指揮は経験がおありでしょうけど、まずは飛行科と砲雷科の実力を把握してもらってください」

 お二人をワイアットにお任せして、僕は全周警戒に入ります。先ほどユイはユイで、船務長として船務科の新装備のレーダーとソナー操作の習熟訓練をおこなっています。
 砲雷長と航空指令との打合せを、エリーゼさんたちはおとなしく聞いています。とはいえ、専門用語が飛び交っていますのでどの程度理解しているのかは謎ですが、あの二人なら一日見ていればこちらの実力を把握するでしょう。

 航空指令と砲雷長の打合せによると、航空隊の飛空艇二機は順次発艦して、本艦への模擬弾による攻撃訓練をするみたいですね。砲雷科は、これをやはり模擬弾で迎撃するようです。

「砲雷長、味方とは言え飛空艇の速度はカノン砲弾よりは速いですからね? 航空指令も、最終迎撃ラインを破られたら、僕も動きますので、油断しないよう伝えてくださいよ」

 艦対空防衛は、当分発生しないとは思いますが、飛空艇に対しては魔法攻撃などがありますからね。機体をロストするのも痛いですが、操縦士は一朝一夕では育ちません。一機で一隻沈める神風攻撃に使うには惜しいですからね。

「では航空指令、エリーゼさんを伴って航空隊の指揮をお願いします。手の内を隠そうとしなくていいですからね。本気で来なければ即撃墜されるつもりでお願いします。
 コリーヌさんは砲雷長とともにこの場で防空指揮を見学してください。ユイ、レーダーとソナー担当の習熟はどうですか?」

 僕の質問に、ユイは首を振ります。どうやら、まだ砲雷科との連動は難しいようですので、索敵・発見の訓練をしてもらいましょう。

「航空隊発艦後、五分を経過した時点で訓練を開始とします。航空指令、始めてください」

「了解しました。飛空艇1番機発艦いそげ、2番機の発艦作業開始」

 こうして、ゲストの前での訓練が開始されました。

*****

「さて、そろそろ五分が経過しますね。とはいえ、対空レーダーからは隠れる事はできていませんが……」

 ユイたちには説明してませんが、今回の情報能力強化には対空用レーダーも含まれています。飛空艇や飛行機は存在していないでしょうが、飛竜種や天馬などを使う国はあるかもしれませんからね。
 第二次世界大戦後の軍艦では、一極集中を避けるのと情報の集中と防御面から、艦の中央部に戦闘指揮所(CIC)を設けるようになり、艦橋は航海・操艦・目視確認の場所として重要度は落ちていたのですが、QAクイーンアレキサンドリアは戦闘指揮所を採用することはできませんでした。
 これは、艦を製造した時点ではレーダーやソナーなどがなかった事もありますが、操艦から戦闘まで、全て僕が管掌する必要もあったせいですね。それもあって、QAクイーンアレキサンドリアの艦橋は、某宇宙戦艦のように艦橋に全ての情報が集中するようになっています。まあ、最悪単独特攻も可能な艦ですし、僕がいないとそもそも運用できないので、ダメコンを考えた分散配置を取る意味がなかった事もあります。

「敵機五時の方向に一機発見。後部防空準備せよ」

 砲雷長の指示で、防空戦闘が開始されましたが、帆船相手ではないので、早速迎撃の魔法が後部甲板の魔導砲から発射。実戦では氷魔法の氷針Ice lanceが飛ぶのでしょうが、訓練なので赤く染めた水槍Water lanceが使用されています。

 とはいえ、二機発艦したのに発見したのはまだ一機だけですか……。対空レーダーの反応は光点は一つですが、迎撃された飛空艇が回避行動をとった一瞬、光点が二つになりました。僕は砲雷長に向かって叫びました。

「?! 砲雷長、一機目の上1500フィート!」

 艦からの機体の位置を、水平面だけでも合わせてきたのは、考えてきましたね。人は目標を見つけると、それに注目してしまいます。固まって飛来するのであれば、発見は容易いですが、高度差をとれば一機目の迎撃をしている人の目には留まりにくくなります。

「ちっ、QAクイーンアレキサンドリア回避運動に入ります。両舷全速、面舵おもかじいっぱい。ジグザグ航行開始!」

 航海長が舵を大きくきったため、艦が大きく振られます。QAクイーンアレキサンドリアは空母の形状をとっていますが、多少傾いた程度では軍艦というのは転覆したりはしないのです。
 第二次世界大戦以後の軍艦は、実は九十度傾いても復原ふくげんするように設計されていると聞いたので、QAクイーンアレキサンドリアもそれに習っているのです。

 九十度傾いても復原ふくげんするのならば、なぜ攻撃を受けたり、事故による損傷で船が沈むのでしょうか? じつはそこにダメージコントロール、俗にダメコンと呼ばれるものがあるのです。
 ダメージコントロールで乗組員がおこなう事は、被害が出た区画と隣接する防水扉とダクトをしっかりしめる、バランスをとるバラストタンクに注水をおこなう事ですが、これを短時間に行わなければならないのです。これらが出来なければ、しっかりとした機能があっても、船なんて簡単に沈んでしまうんですよ。
 そして問題となるのは、本格的な訓練がやりにくい事ですね。実際に艦に大穴をあけて浸水させるわけにはいきませんから。
 あぁ、レギニータに手伝ってもらえば、想定した浸水箇所で水魔法を使ってもらうという手もありますか。今度検討しようかな? でも、水浸しにするとあちこちからクレームが来そうですね。ユイに叱られそうですし、リアンもここぞとばかり文句をいってきそうだなぁ……

 おっと、話がそれてしまいましたね。まあ、多少傾斜しても、処女航海の時と違ってケガをしたりする人は居ないでしょう。新人? 新人さんにケガをさせるようでは、なんのための上官かわかりませんよ? 上官はただ偉いのではありません。部下の生命に責任を持つからえらいんですから。
 
 大きく舵を右に切ったQAクイーンアレキサンドリア目掛けて、直上から模擬弾は、航海長の操船でかろうじてかわせましたが、投下した機体は既に上空には居ません。何処にいった……

 そう思った直後、艦橋の直前に何かが落下してきました。それは防弾に替えられた艦橋の前面ガラスの正面、数メートル先で止まります。

「なっ!!」

 投弾後消えたと思った機体が、直上から急降下して艦橋直前で止まったようですね。とはいえ、小型の飛行船の様な物でよくそんな機動が取れましたね。風魔法と操縦技術を駆使したのでしょう。
 呆気にとられていた僕たちの前で、操縦者は機体を空中でホバリングさせながら、キャノピーを開きます。長めのブロンドの髪が、風になびいて、歯がきらりとひかりました……

『ビー!!』

 警報音が鳴り響き、新設された防弾シャッターが突然閉鎖されました。艦橋内の照明が非常灯に切り替わります……

「はっ、機関両舷デッドスローダウン」

 航海長が慌てて機関を減速させます。僕は情報パネルに艦橋方向を表示させましたが、そこに映ったのは、模擬ペイント弾に赤く染まった艦橋と、飛行甲板上一メートルくらい上でホバリングしている飛行艇の姿です。飛行艇も、それに搭乗していたと思われるパイロットも、模擬弾のためか真っ赤に染まっています……

「……いったいなにが……」

 砲雷長の声を聴きながら、僕は情報パネルに映る映像を操作して巻き戻しします。五分くらい前まで戻せばよいかな……
 映像の再生を始めると、航空指揮所から青い顔をしたワイアット航空指令と、なぜか笑いをこらえているエリーゼさんが降りてきました。そして映像を再生した僕たちは、何が起きたのかを知ったのです……

 艦橋前で、カッコをつけた航空隊の隊員が映った途端、右舷二番魔導砲が安全角の制限を手動で切って旋回します。安全角は、魔導砲を射撃した場合、艦橋構造物を破壊しないように設けられた安全装置ですが、それが切られた事によって艦橋を保護するための安全装置が作動、防御シャッターが閉鎖されます。

 右舷二番魔導砲は、そのまま艦橋前に飛行していた飛空艇を射撃。命中弾を受けた機体はそのまま甲板上に落下する直前に、組み込んであった緊急安全装置が作動し、甲板上でホバリング。操縦者は、着弾の衝撃でコクピット内に気絶しています。
 しかし、右舷二番魔導砲も只ではすみませんでした。一番三番魔導砲が自動旋回して、二番砲塔を射撃。右舷二番砲塔も緋に染まったのでした。

 事の次第を確認して固まっている各士官のなかで、特に航空指令であるワイアットと、砲雷長のアンソニーの顔色が特に悪いですね。
 僕は二人の方に首を向けます。ギギギッと、音がしないのが不思議なくらいロボットじみた動きになっているのは自覚していますよ?

「……航空指令、砲雷長。今の映像を見て、何か弁解はありますか……?」

 僕の笑顔はさぞ黒いものになっているでしょうね。

「「ありません!!」」

 僕はため息をついた後、二人に命じます。

「まず、当事者から事情を聴取したあと、始末書を明日の朝までに提出するように。処分は軍規と士官による会議で決定します。その内容によっては、お二方も追加で始末書を書いていただきます。
 合わせて、今回の当事者二名は当直明けに飛空艇、艦橋構造物、魔導砲塔の洗浄を命じます。生活系魔法の使用は認めません。バケツと雑巾を使用して、しっかりと洗浄させること。いいですね?」

「「Yes,Ma'amイエス・マム!!」」

 二人はそう言うと事情聴取に向かいます。そんな彼らをみて、エリーゼさんが残念なものを見たような顔で一言つぶやきます。

「……素晴らしい道具も、使う人によりけりなのね」

 その声にうなずくコリーヌさん。そして、何とも言えない表情を浮かべる、僕やユイたちは苦笑いするしかありませんでした。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

処理中です...