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新たな町へ
閑話 逃げ出した者
しおりを挟む時は遡る。
暁彦の縛りから解き放されて、自由になったニグスの話しを少ししよう。
「はぁはぁ………っ!はぁはぁ!や、やった。化物から逃げれたぞ!ハハハ!」
馬車に縛り付けられていたが、ケイトがこっそり縄を切ってくれて、逃げ出せたと思っているニグスだが………。暁彦の命令で、ケイトが縄を切っただけの事である。
ニグスは、走って馬車から離れた。だが、体力がないので馬車が見えない場所まで来ると、立ち止まり息を整えた。
そして、息が整った所で自分が立っている場所を確認する。
「取り敢えず森は避けて逃げた………。未だ奴の馬車から離れてないな」
しかし、他の奴らは何であんな化物と一緒に居られるんだ?
まあ、もう自分は逃げ出せたのだから良いのだが。
兎に角この道を歩けば何処かの町に着く筈。
取り敢えず歩いて奴から離れるのが先だ。
草原の道をただひたすら歩く。
すると目の前の方向から馬車が走って近寄ってきた。
「馬車か……」
ニグスは、馬車の向かう方向が、奴の居る場所に向かって居るのがわかった。チッ逆方向なら、乗せて貰えたかも知れねぇのに……。
間が悪いな。
すると、すれ違う筈の馬車がニグスの横で止まった。
ニグスは訝しげな顔をして、わざわざ止まった馬車に乗る御者を睨む。
「やぁ?あんた冒険者さんかい。一人で旅か?」
「え?あぁ、そうだがなんだ」
「嫌、この辺りを歩く冒険者なんて珍しいのでね?声を掛けただけ。それだけだ。ククク」
何で笑われないとならない?感じ悪りぃくそ!
「……そうかよ!それならさっさと立ち去れよ?」
「まぁ、そう言わずに聞きなよ」
「お節介は、要らねぇ!」
と、ニグスは馬車から話し掛けて来た男の話しを無視して立ち去る。
「にいさん!そっち危ないぜ!気を付けろよ。せいぜい頑張れ~」
後ろから声がした。
だがそんな話しは、お節介だと切り捨てて直ぐに記憶から消した。
「煩いんだよ!俺に拘わるなよ」
一人で良いんだよ俺は。
そして草原を歩き日が落ちて暗くなってくる。
「やべぇ、なにも用意がねぇ。あるのはくすねてきたこの、食いもん一つだ」
ポケットから出したのは一枚の乾いた菓子だった。
あのピクニックとやらの食いもん、全部がめてこれたら腹もすかずに……歩けた筈だったのだが。
そうは行かなかった。
「兎に角何処か寝れる場所をさがさねぇと」
とはいえニグスが立っている場所は草原のど真ん中だ。隠れる場所一つ有りはしない。
それでも休む場所をさがしなから前を歩く。
「馬車が前から来たなら、この先に町はある筈。歩けば町には着く筈だ」
独り言を言いつつニグスは歩く。
…………夜通し歩いても、町は見えて来ない。
夜は月明かりだけも明るいので、歩けた。
明け方に草原の真ん中に大きな岩があったのでその側で少しだけ休んでまた歩く。
そんなことを、飲まず食わすで歩き3日経った頃にやっと町の形が確認できた。
「やった!やっと町だ……」
道中魔物にも盗賊にも遭わずに無事に町付いた。
「と、取り敢えずあの町に入って休んでこの剣売れば金も出来るだろしな!」
ニグスは、町が見えた嬉しさで最後の力を出して走って町の門に駆け込んだ。
「ハッハッハッ!つ、疲れた……」
門の手前で立ち止まり息を整える。
「おい!大丈夫かお前」
「だ、大丈夫だっ……。す少し……まって」
「………そうか、身分証は持ってるのか?」
「お、おう。此だ」
疲れて、ちゃんと背筋が伸ばせない状態で
冒険者カードを懐から出して門番に渡す。
「……………お前。冒険者か…まぁ、いい。銀貨三枚だ!」
「あ!」
「なんだ?そんな身なりしてるのに金もないのか?」
「あ、あぁ。何処かで落としたらしくて……」
「……」
門番がニグスを頭から爪先まで見下ろす。
「お前………どこで盗んだ?」
「はぁ?なんでこれは俺のカードだぞ!」
「奴隷がか?そんな奴が、冒険者カードなんて持ってる筈がないだろ。どこの貴族の屋敷から逃げ出した?そんな奴は町に入れらる訳がないだろ!おい!誰か来てくれ」
と、門番が他の門番達を呼び出す。
「なんだ?マバル」
「煩せぇなぁから、なんかあったのか?」
「おお、悪いな!2人こっちにきてくれ!」
マバルと言われた門番の側に、二人の門番がやって来たのだった。
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