ある日仕事帰りに神様の手違いがあったが無事に転移させて貰いました。

いくみ

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365話 なかった事に

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「こ、これは…き、君?これは中級の回復薬か?」

 隊長が俺に顔をと、瓶を向けて聞いてくる。

「え?えぇ。目が覚めたら飲ませて上げて下さい。体力回復しますよ?」

「というか……まだ、ちゃんと礼も言ってなかったね?すまん。慌てて居て忘れてた」

「い、いえ、お困りの様でしたから。手を貸しましたが……余計な事しましたかね?」

「いや、そうではないよ。実際あのオークの群れには、てこずっていたのだ。だから助かった。我らは、馬車も守らなければならなくてな。正直本当に助かったありがとう。所で君は?」

「なんですか?」

「あぁ、すまん君の名は?」

「ええとぉ………何もなかった!事にしませんか?」

「はぁ?それはまた……なんで」

「馬車に乗って居られる方は、貴族の方だと思われますし。私は一介の冒険者です。ですから、薬とオークの素材は差し上げます。ですのでご勘弁願いませんか……?」

「た、だがこちらは少し困っていてな?」

 そんなん知るかよ!自分等で何とかしろ!怪我人は治したぞ!他に何がある?

「お困りですか?お見かけしたところ、どこもお困りではない様子ですか?」

「い、嫌……その……」

「ご用が無い様でしたら、私はこれで……」

 この場から離れようとして、隊長さんに背を向けて歩いて行こうとしたら、突然馬車の扉が開いて中に居た人物に止められる。

「ちょっとお待ちになって。まだ、お話しは終わってませんわ」

 えぇっと………誰?
 そして……なに?

「お、お嬢様!突然出てこられたら、この方が驚かれます。お控え下さい」

「煩いわ!イギル。私達が助けて頂いたのに、お礼もしないなんて。お父様に叱られるわ!その方とお話しをするわ」

 突然のお嬢様登場ですか?
 しかも……天然記念物な感じが………。
 早めに逃げよう。

「お嬢様、馬車へお戻りください。この方には私からお礼を申して置きますので」

「嫌よ!私がお礼を言うのよ」

 そしてパタパタと小走りで、俺の目の前に来て頭を下げて挨拶をして来る……。
 やはり貴族様でしたか……これはややこしくならないと良いけど。

「この度は、私共を助けて頂きありがとうございます。私はセリア・マルベスドと申しますわ」

 ニッコリ笑ってカーテシーをしてくる……。

 うん!かわいいね…。

 じゃなくて!名乗られちゃったよ遺族の娘さんにぃ~しくしく。

『名乗らないと不敬になるよねぇ~。しくしく』

《ですよ、早く名乗ってください!全く間の悪い》

『煩いやい!』

「お初にお目に掛かります。私はアキヒコ・ナルミヤと申します。お嬢様、お怪我はありませんでしたか?」

「まぁ、貴方は何処かの貴族でいらっしゃるのかしら?それにお強いのね?私、馬車の中で見ていましたが……お見事でしたわ」

 聞いた事の半分も答えが帰って来ないのだね……。
 これは困ったぞ!

「……いえ、私は貴族では…私の故郷は皆名持ちなのですよ。それでお怪我は在りませんか?」

「……ええ、貴方のお陰で何処にも。本当にありがとうございます」

「それは良かったですね?それでは私はこれで失礼したしますね?道中お気をつけて」

「ま、待って!待って頂戴。貴方何者なの?貴族でなければ……そう!冒険者なのかしら」

「ええ良くお分かりてすね?私は冒険者です。これで良いでしょうか?」

「まぁ、冒険者の方ね?そうだと思ったよの?あんなに強いのですもの!ねえ……ええっとアキ……?あ、あら?なんだったかしら?」

 人の名前も覚えられないのかぁ……ま、初対面だし仕方ないのかな?

「アキヒコですよ、お嬢様?覚えづらいですよね?フフフ」

「そう!アキ…ヒ…コ様で良いのかしら?」

「ええ。アキヒコですよそれで、私に何か?」

「あ、っとええと……あの……」

 うん!勢いで馬車から出てきちゃった感じ満載ですね?

「フフフ。お綺麗なお嬢様。そろそろ馬車にお戻り下さい?私もこれで失礼させて貰いますから。また、何処かでお会いしましょう?」

 それでは、私はこれで。
 それだけ言ってその場を離れて、ある程度歩いたらワープで屋敷に戻った。
 全く最初からこうすれば良かったよ!

「ふぅ疲れた………」

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