ある日仕事帰りに神様の手違いがあったが無事に転移させて貰いました。

いくみ

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新たな町へ

554話 獣人の子供。

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 クッキーを一つ摘まんで、子供の目の前に差し出したが……これは無理かな?
 …手を出さないよね…無理か。

「食べない? 美味しいよ?」

 ……根比べは出来ないので、俺は摘まんだクッキーを自分の口に放り込みモグモグ食べる。

『困ったぞ…ナビ』

《当たり前ですよ!何処の世界に奴隷を買うのに、菓子で子供を釣るなんて、考えが浮かぶんですか!買うなら強引に買うんですよ!》

『ええ!そんな無体な事をすんの?俺には出来ねぇ~!恐いじゃんか』

《………甘い》

 誉め言葉ですよぉ~!

 喉乾いた……アイテム鞄から飲み物を出す。
 勿論子供の分も…飲まなくてもだす!

 だしたのはオレンジジュース氷入り。
 出したジュースを子供の前に置いて、飲んで良いよと声を掛けてから自分も飲む。
 ズズズッ…はぁ~美味しい。

 モグモグ、パクパク、ズズズッと子供の目の前で飲み食いする。
 時折飲まないの?食べないの?と、時折子供に声を掛ける。

 その光景を付き添って来た男の職員が、羨ましそうにガン見してるけどお前には遣らん!

 っても、子供は未だ動いてくれないがな!
 以外にしぶといなぁ~これは釣れねぇ……と思っていたら、とうとう我慢出来なくなったのかな? 目の前に座る子供が、おずおずとクッキーの皿に手を出したのが目に入った。

 やった!釣れたどぉぉーー!

 でも、ここでは俺は見ない振りだ。
 下手に声を出したら食べ無さそうだ。

 おずおずと子供がクッキーに手を伸ばしてクッキーを一つ取ると、自分の口に持って行って「パク」と、クッキーに齧り付いてカジカジ食べてる。

 おっ、食べたな…フフフ可愛いじゃんか!子栗鼠の様な食い方してるぞ。

「フフフ、それ美味しいだろ?ジュースも飲みな」

 両手でクッキーを持ちかじかじしてる子供が何とも可愛い。
 そして俺の言葉にうんと頷いた。

「食べなから聞いてな?」

「……」

 さっきも今も、こくッと頷いたから耳は聞こえてるな。
 よし!

「君、私の屋敷に来るかい?屋敷には君より大きなお兄ちゃんがいるんだ。その子たちの友達に為ってくれないかな?それに屋敷に来ればお菓子食べれるよ? どうかな?」
  
「………?」

「お菓子だけじゃないよ?ちゃんとご飯も食べれるよ?どうかな?」

 飯で釣ってるのは分かってるんだけど…それ以外で今のところ意思の疎通が難しいんだよなぁ…。

「あ……これ……」

 おお、声が聞けたよ!小さい声で精一杯な声だな。

「そう、これも食べれるよ?どうかな?私の家に来ないかい?仕事も出来るし、勉強も出来るよ」

「?」

 こてんと首を傾げてるけど……意味は分かって無いのかな。
 引き取ったら厄介なのか…いまいち迷うけど…。
 でもなぁ~ここに居て、檻の中で膝を抱えてるよりはましだと思うんだけど…。

 それって…俺の独りよがりの傲慢な考えなのかな?

 良く分からん。

「もう一度聞くよ? 私の家に来るかい?」

「………………………」

 おっ!クッキーと俺を交互に見てるけど……。
 俺はニッコリとスマイルだ。
 顔引き釣って無いかな。


 すると子供が、座っていたソファーからトンと降りて俺の側に来ると、俺の袖口を摘まんで引っ張って来たぞ…えっとこれは……?

「君…私と来るかい?」

「……」

 コクリと頷いた。

 ほほぅ……通じたし…。

「そこの人、この子も連れて行くからオーナーのメンバルンさんに伝えて来てよ」

「少々お待ち下さい」

 側に来た子供を俺の隣に座らせる。
 抱っこしてあげたいけど…ここではクリーンを使わない方が良さそうなので、膝ではなく隣に座らせて話し掛けた。

「君…お菓子まだ食べるかい?それともジュースが良い?」

 クッキーを右手に持ち、ジュースを左手に持って聞く。

「………」

 キョロキョロ見比べて困った顔をする。

「どっちも欲しいのかな?」

「…」

 ぱっと笑顔になり【うん】と頷いた。
 ハハハこれは懐かれたかな?
 懐いてくれると良いなぁ~。


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