ある日仕事帰りに神様の手違いがあったが無事に転移させて貰いました。

新たな町へ

664話 市場に行って

　宿を出て、教えられた道をてくてく歩き市場の入り口に到着。

　見れば市場はそれなりに賑わってる様子だ人が多く出てるよ。まだ朝早いのにご苦労様です。
　現在の時間は八時三十五分位。

「でも、これは良いねぇ」

　ポツリと呟き、市場に向かって歩いて行き店を物色して回る事にした。
　いい時間潰しに為れば良いけど。

　フムフム、国境沿いの町だからそれなりに栄えてるのかな？
　色んな店が有る。

　あっ、あれって香辛料の店かな？
　あっちは果物屋だ。
　ここは肉屋だね。
　それからこっちは………と色々店を見て回る。

　で、思ったんだけど。
　食い物を出す店がない。
　素材を出す店ばかり。
　要は調理済みの物を出す店が見当たらない。
　パン屋もない。
　珍しい市場だな。

　仕方なく、果物を売る店に寄って果物を購入しつつ、ちょっと情報を訊きますよ。

「すみません」

「いらっしゃい、なにを買うんだい？」

「えっと、そのリンゴを」

「リンゴ？」

「あっ、『ナビ、こっちのリンゴってなんだっけ？』　そ、その赤い果物と、こっちのを下さい」

　果物なんて、暫く買い物してないから忘れてたよ。

「はいよ、アップーとイチーゴだな。両方とも一籠づつかい？」

「ええ、それで。（ふぅ～アブねぇ～）いくらですか？」

「二籠で銀貨一枚と、大銅貨三枚だよ」

「じゃ、これで。あっお釣りは良いんで、少し話せますか？」

「おう、こありがとよ。で、なんだい？」

「あのパン屋とか、ちょっとした食事を出してる店を探してるんだけど、市場に見当たらなくて」

「なんだい、兄さん。この町は初めてかい？」

「ええ」

「それなら、教えて遣るよ。食い物出してる店はな、この市場を出て直ぐの通りを左に行くんだよ。暫く歩けば軽食なんか売ってる店が軒を連ねてるぜ。食いたきゃそこへ行きな。屋台もそこに行けば出てるよ。パン屋もそこにあるだろうよ」

「そうでしたか、ありがとうございます。行ってみますね」


おじさんにお礼を言って、店から離れ言われた通りに市場を出て左に曲がり歩くと、今度はなんかいい匂いがしてきた。

　有った、あの道がその食事を出す店が多い場所なのだろう。

　あのおっさんの言う通りだ。
　両端に店屋が所狭しと軒を連ねていて、どの店からもいい匂いが立ち込めてた。

　でも匂いだけなんだよねぁ～。
　だからパン屋なら、何とかなりそうだと思いパン屋を目指して歩いてるんだが………。

　どのくらい歩いた？
　結構歩いたけど探してるパン屋がない。
　惜しいなぁ～あのおっさんは、パン屋がこの通りに有るって言ってたのに。

「なんか面倒になってきた。パン屋が見つけられない」

　それならもう半ば諦めて、カフェの様な佇まいの店が目に付いたので、店の中に入って見た。

　店の扉を開けると、中から「いらっしゃいませぇ～」と女性の声がした。
　おや、珍しい女の店員さんがいるんだ。

「いらっしゃい、お客様はお一人様ですか？」

　ニコリと笑って訊いてきたよ。
　ドキドキ、女性から笑い掛けられたなんて経験……有ったな。
　でも無駄にドキドキする。
　美人なお姉さんにニコリとされると弱いんだ。
　ま、勘違いだろうがな。
　向こうは営業スマイルだ。
　そんな事を考えてると、ナビに突っ込み入られそうだから。
　無駄な考えは起こさない。

「ええ」

「お好きな席にどうぞ」

「ありがとう」

　礼を言って店の中を見回し、一人でも気にせず座れそうな席を探して、席に着いて席に置いて有ったメニューに目を通した。

　水は出てこないぞ。
　ここは日本じゃ無いからな。