最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第4章 変革

057 始まりの時

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カランコロンカラン

 落ち着いた雰囲気に、薫るコーヒー。
 静かに流れるジャズレコード。

 カウンターでは渋めのマスターが、一杯一杯丁寧にコーヒーを入れていた。
 サイフォン式でいられれたコーヒーのいい香りが店内中を包み込んでいた。
 そしてコポコポとお湯が沸く音が、店内のBGMと相まっていい雰囲気を演出していた。

「あ、先輩。おはようございます。」
「おはようございます、ケントさん。」

 すでに二人は着いていたようで、店の奥でコーヒーを飲んでいた。

「二人ともおはよう。予定より早いね。」
「それほど待っていません。それより私たちに話が有るとか。」
「あぁ、そのことについてはちょっと待って。マスター、オリジナルブレンドをブラックでください。」

 俺が注文すると、カウンターから了承の声が聞こえた。
 俺は席に座り、2人を見つめ意を決して話を始めた。

 昨日自衛隊から仕入れた情報は、2人からしたら寝耳に水だろう。
 ただ、これは谷浦に関わる重大な話なだけに、2人とも真剣に聞いてくれた。
 二人の反応は思った通り、困惑をしていた。
 そりゃそうだ、俺だってそうだったんだから。

「つまり、俺は国から見張られているってことですか?」
「おそらくは。ただ、どの勢力かはわからない。俺は一ノ瀬さん経由で自衛隊が張り付いている状況だ。ただ、一ノ瀬さんは自衛隊の中でもさらに別のグループってイメージだな。」

 谷浦は腕を組んで考えていた。
 虹花さんも同様に、考え込んでいるようだった。

「じゃあ、昨日の警察官も自衛隊?あれ?でもそれじゃあ、俺も一緒に呼ばれても変じゃないですよね?」
「俺もそれが気になっていた。一ノ瀬さんの話だと、俺のスキルは早々に確認されていたし、谷浦のスキルも確認済みだ。だから普通に考えて俺だけ呼ばれるってのも変だ。もしかしたら一ノ瀬さんのグループが、情報を敢えて弄っているのかもしれない。でも、それも憶測の域を出ないから何とも言えないな……」

 とりあえず今俺たちが直面している問題を列挙してみることにした。

①自衛隊からの監視。
②警察を名のった謎の組織。
③レベル上げ。
④今後の活動方針。

 ①は一ノ瀬さんからの話に乗るか否かって感じだけど、否を選んだら真っ先に俺と谷浦は自衛隊に拘束されることになるだろうな。
 だからと言って、一ノ瀬さんの言っていることをそのまま鵜呑みにもできない。
 かなりもどかしい感じがする。

 ②については今はまだ不明だ。
 誰が何の目的で谷浦に接触してきたのかは分からない。
 念のためにカイリ達にも気を付けるように注意は必要かもしれないな。

 ③については、やっと活動再開できそうだから少しずつやっていくしかないだろうな。
 まずは低レベル帯のスキルで必要なのを習得して、その後に高レベル帯に移行する感じがベターだろうな。
 これについては谷浦も同意見で、谷浦的には取得済みスキルのレベル上げもしたいそうだ。

 ④は……
 まずは明日にカイリ達と会って話をしないといけない。
 これも可能性だけど、俺と谷浦の件に巻き込まれる可能性が高い。
 だから虹花さんには話をしたわけだけど。
 カイリ達はどうしたもんだろうかな。
 もし俺たちと一緒にいることを選ぶのならば、きちんと話さないといけないのかもしれないな。

 あらかた話し終えた俺たちは、マスターに挨拶をして喫茶店を後にした。

「それじゃあ先輩。また明日。朝9時に訓練所入り口でいいですか?」
「あぁ、それで頼む。カイリ達には俺から伝えるから。それと、例の警察が来ても絶対についてかないようにな。最悪一ノ瀬さんにコンタクトをすぐに取るんだ。きっとなんとかしてくれる。」
「ははは。出来れば借りを作りたくないっすね。」
「まったくだ。」

 俺たちは喫茶店の前で別れ、帰宅したのだった。

「ただいま。」
「あ、おかえりお兄ちゃん。」
「なんだ美鈴、帰ってたんだ。」

 出迎えてくれたのは、今朝ダンジョンに向かったはずの美鈴だった。
 やけに早い帰りに驚いたけど、そういうこともあるのが探索者稼業だ。
 
 母さんは台所で昼食の準備を始めていた。
 簡単なものだと言いつつもいつもおいしい手料理を準備してくれる。
 本当に頭が下がる。
 ところで美鈴、そろそろ料理を覚えたらどうなんだ?

ガチャ

「ただいまって、ケントと美鈴じゃないか。二人とも帰ってたのか。」
「あれ?お父さん仕事は?」
「父さん、今日は建築中の建物で問題が発生したから遅いかもって行ってたよな?」

 俺に続いて父さんまで帰宅していた。
 普段だったらこんな時間に返ってくることのないのに、珍しいこともあるもんだな。

「二人ともお帰りなさい。こまったわ、またご飯追加しないといけないわね。」
「それならこれ食べよ!!」

 美鈴が母さんのぼやきを聞いて、インベントリから一つに肉の塊を取り出した。

「じゃじゃ~~~~ん!!フォレストボアの霜降り肉!!」

 これまた超レア食材じゃないか!!
 確か取引額がグラム5000円オーバーの食材だぞ!?
 まさか美鈴がゲットしているとはな。

「お母さん、お昼に食べようよ。」
「あらあら、これは豪勢な昼食になりそうね。」

 母さんは美鈴からフォレストボアの霜降り肉を受け取ると、嬉々として台所へと戻っていった。
 腕が鳴るわと意気込みが聞こえてきた。

「ちなみに美鈴。あの肉の総重量は?」
「え?確か1kgだったと思うよう?」

 ちょっと待て、5万じゃないかよ!?
 それをポンって出すってことは……

「なあ美鈴さんや。もしかしてまだ在庫持ってたりするのか?」
「うん。あと10kgくらいはあるよ~。」

 どんだけフォレストボアを狩りまくってるんだ?
 一日10匹とかそんなレベルじゃない気がしてきた。

「美鈴……。今レベルいくつ?」
「一昨日で25レベルをこえたよ?パーティーのメンバーも25超えたから次の階層に降りるか迷ってるところだね。」

 どうやら俺の妹は食料ダンジョンで荒稼ぎをしているようです……
 あ、本当に俺ヒモになってるわ……



 しばらくして、母さんが焼いてくれたフォレストボアの霜降り肉が食卓を彩った。
 付け合わせも、ダンジョン産の野菜でしめられていた。
 おそらくダンジョン産じゃない食べ物はご飯くらいだと思う。
 これもまたダンジョンの侵略だとも言えなくもないかもしれない。
 このままいけば俺たちは完全にダンジョンに支配されるのかもしれないな……
 そう考えると、かなり恐ろしい状況になりつつあるのかもしれない……



ビィー―――!!
ビィー―――!!
ビィー―――!!
ビィー―――!!
ビィー―――!!
ビィー―――!!
ビィー―――!!

 そして俺たちが昼食を食べていると、突然スマホやテレビから警報が鳴り出した!!
 けたたましくなる警報は、俺たちの家だけではないようだ。
 町内放送でも今すぐテレビ・ラジオを付けるようにと放送を流している。
 いったい何があったんだ?
 地震は起きていないようだし、津波の心配もないだろう。
 じゃあ一体?

 そしてテレビは緊急放送に切り替わった。

———先ほどダンジョンからモンスターがあふれ出しました!!直ちに安全の確保に努めてください!!直ちに安全の確保に努めてください!!繰り返します!!ダンジョンからモンスターがあふれ出しました!!直ちに安全の確保に努めてください!!直ちに安全の確保に努めてください!!———

 そしてその内容は、俺たちの生活を一変させるものになったのだ。
 自称神を語る【プロメテウス】の企みが、本当の意味で始まったのだった。
 
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