最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第6章 富士攻略編

118 武と歩

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「カイリちゃん!!」
「大丈夫!!アスカも行ける!?」
「行きますよぉ~!!【ホーリーソング】!!」

 カイリとカレンの魔法による連携で隙を作ったメンバーは、フィニッシャーとしてアスカを選んだ。
 聖なる祝福の音色が、ダンジョンに響き渡る。
 阿鼻叫喚ともとれる叫び声と共に、無数の蒸気のようなものがモンスターから解き放たれていく。
 それは幻想的と言ってもいいだろうか。
 ここが墓地でなければそうなのかもしれない。

 カイリ達が探索を初めて、すでに3日を経過していた。
 あれから登りの階段は見つける事は出来ず、唯一見付けられたのは下りの階段だけだった。
 それはまさに下へ降りてこいとダンジョンが言っているかのようであった。

あゆむさんどうしますか?」

 カイリはこのパーティーで一番の序列である歩に声をかけた。
 歩も歩で悩んでいた。
 恐らくこれ以上探索しても、登りの階段を見つける事は難しいだろう。
 しかし、これで下ってみて強力なモンスターしかいなかった場合、絶望と言っても過言では無かった。

「ではこういうのはどうでしょうか。一度下の階層を覗いてみて、だめならば階段に退避。救援を待つ。」

 そう提案したのはだん 由貴乃ゆきのであった。
 由貴乃は今とれる行動として、及第点であろう提案をしていた。
 歩もそれには賛成と手を上げている。
 カイリ達も断る理由が見当たらなかったために、一度降りてみる事にしたのだった。

 そして目の前に広がる光景に、全員顔を顰めてしまっていた。
 次の階層のコンセプトは……墓地であった。

 至る所に見える崩れかけた墓石や、教会。
 神社仏閣まで朽ち果てていた。
 その周辺を守るかのように徘徊する、アンデットの群れ。
 腐った肉体を引きずる様にうごめくものや、白骨化の進むもの。
 既に肉体を失ったものもいた。
 皆一様の何かを求めて彷徨っている様であった。

 階段を出てすぐの場所で警戒をしていた歩は、皆に撤退の指示を出した。
 何事かと思い慌てて階段に避難する面々。

「これは……うん、やっかいだねぇ~。こうもアンデットで溢れてるとあたしのスキルが役に立たないかな。アンデットたちは人間の生命を感じ取っているって言われてるんだけど、それだとステルス系のスキルが全く役に立たないんだ。ステルスって言っても生命活動をやめているわけじゃないからね。ここはリーダーに従って階段で待機ってのが無難だろうね。」

 歩の言葉を受け、由貴乃は思考の海へと潜っていく。
 いくら考えても最善が思い浮かばなかったからだ。

「あのぉ~、アンデット系だったら何とかできますよぉ~?ほら私回復職ですからね。やっと聖属性魔法を習得出来ましたから何とかなると思いますよ?」

 そう声を上げたのはアスカだった。
 アスカもまたケントに会いたい一心で己を磨いていた。
 そしてただ守られるだけのアスカを卒業したのであった。

「それじゃあ、アスカちゃんの魔法を軸に行ってみよう♪」

 アッケラカンとした口調で予定を決めていく歩。
 それについて皆も否定的な意見は出なかった。

 それからはサクサクと準備に取り掛かる。
 フォーメーションや戦闘手順の確認。
 それぞれの役割について。

 龍之介は変わらず前方からの襲撃を一手に引き受ける。
 左右からの襲撃は歩が臨機応変に。
 後方警戒はアスカから由希乃へ引き継がれた。

「アンデットの弱点は首チョンパ。丸焼きにする。浄化する。うん、3人に丁度いいね♪」

 魔法担当の3人に笑顔で歩は話しかける。
 若干納得がいかない気もしないではない3人は、曖昧に苦笑いを浮かべていたのだった。

「なんだか微妙な表現ですが、概ねあってますね。三人ともよろしくお願いしますね。」

 由貴乃も若干引き攣ってはいたが、なんとか場の収拾を図ろうとしていた。
 歩も悪ノリが過ぎたと反省したのか、舌を出しながら軽く頭を下げる仕草をした。

「では行きましょう‼」

 由貴乃の掛け声で新たな戦いに赴く面々であった。

——————

ドゴ~ン!!
 
 地面が激しく揺れながら弾け飛んだ。
 焼け焦げる匂いとガラス化した床がキラキラと光りを放つ。

「これは……」

 俺は自分の顔が引きつっているのを感じつつ、ガラス化した地面を見つめていた。
 タケシ君はというと、結果に大満足なのかニコニコと嬉しそうにその原因を抱きかかえていた。

『いやぁ~いい出来栄えです。』
『タケシよ……コレはやりすぎというものではないのか?』

 さすがのタクマも、その結果に苦言を呈さずにはいられなかったようだった。
 ラーは……キラキラと光る床に自分の身体を映して遊んでいた。
 さすがラー、自由人?だな。
 周囲は未だに灼熱の地獄というのに全く気にする様子はなかった。

「それにしても、60層のモンスターを一撃ってかなりやばいね。」
『ケントさん。それなんですけど……あまりにも弱すぎませんか?ここは日本最高峰のダンジョンです。でもこんなに弱いなんて聞いてません。なんだか嫌な予感がします。』

 タケシ君の指摘は俺も感じていた。
 からだ。
 自分が強くなったことを差し引いても、おかしいとしか思えなかった。

『それを今考えても仕方があるまいて。いますべきことは、愛しのカイリ嬢の救出であろう?ならば、今はそれだけを考えるべきであろうな。』

 タクマは思考の海に溺れかけた俺を掬い上げる。
 若干の煽りを感じなくもないが、確かにここで悩んでいても始まらないし、何があったとしても先に進むことも変わらない。
 なら進むしかないってことだな。

 そして俺たちは更に奥へと進んでいったのだった。

『フヌラ!!弱い!!弱すぎるぞ‼』
『はいはい、少し静かにしようか?』

 タクマは手にした魔剣を振り回し、無双を繰り返していた。
 階層は70を超え、普通であれば苦戦を強いられるはずであった。
 だけどその懸念は徒労に終わった。
 苦戦らしい苦戦はなく、こうしてボス部屋の攻略を進めているのだから。

 そして、未だカイリたちとは出会うことが出来ずにいたのだった。

『主~、大丈夫?ずっと怖い顔だよ?』
「ん?あ、あぁ。ごめん。ついね……」

 どうやら俺は、いつの間にか焦っていたらしい。
 ラーがそう言うんだったら、きっとタクマやタケシ君もそう感じていたんだろうな。
 70層を超えると、普通の人間では戦うことすら難しい状況に陥るはずである。
 なのにここまで来て出会えないということは……俺の思考に否が応でも最悪の事態が掠めていく。

『ケントさん大丈夫ですよ。おそらくは無事なはずです。』
「だといいんだけど……」

 タケシ君の言葉もあまり耳に入ってこなかった。
 無事でいてほしい。
 俺の願いはただそれ一点だけだった。

がいるから大丈夫なはずです。一緒だったらって話ですが。』

 タケシ君が言うというのが誰を指すことなのか俺には検討がつかなかった。
 ただ、タケシ君の嫌そうな顔を見る限りでは好む相手ではないことは確実であると確信していた。

『妹が……一緒だったら問題ないです。あいつあれでも上位探索パーティのリーダーですから。無茶はしないはずです。最悪階段スペースでとどまる判断はできますから。』
「多田野……多田野……。もしかして、多田野 歩か?あの〝無音〟の?」

 俺はトップランカーの顔を思い出しつつ、ヒットする情報を思い出していた。
 そして一人だけ該当者がいた。
 それが多田野 歩だった。

『あはははは……。その多田野 歩です。ですから心配はいりませんよ。それに防御のスペシャリストの團姉弟も一緒だと思いますから。』

 タケシ君の推測に少しだけ気持ちが楽になった気がした。
 そして俺は淡い期待を胸に、さらなる奥地を目指すのであった。

——————

「もう少しです……。我が主よ。もう少しのご辛抱を……」

 仄暗い洞窟から聞こえるかすかな男性の声。
 地面にはいくつもの幾何学模様が描かれており、仄かに輝く。
 目深にかぶるフードのおかげでその表情を見ることはかなわない。
だがしかし……
 この男性の登場により、物語はさらなる展開を見せるのであった……
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