11 / 18
現実に夢のブックカバーをかけて
しおりを挟む
夢を見ました。
あの後、おうちに帰って晩ごはんの席でお母さんに八つ当たりをしてしまったことをはっきりと覚えています。なのでこれは夏海さんと別れた後のことを見た夢です。
夢と自覚した夢、明晰夢です。
私は学校の裏庭にいます。時刻ははっきりとはわかりませんが、陽の傾き具合から逢魔時というのが相応しい時間帯です。
なにせ、裏図書室に居た影たちが3人の女の子を取り囲むようにして立ち、うぞうぞうねうねと気味の悪い動きをしています。
影の中心にいる3人は夏海さん、犬上さん、八雲さんです。
「夏海ちゃん、あたしたちを呼び出すって何様のつもり?」
「何様って、私たち友達でしょ?」
「はぁっ!?」
影たちに遮られて夏海さんの顔が見えません。声だけでしか状況を掴むことができないのは何とももどかしいです。
「少なくともクラスのみんなはそう思っているよ。そういうふうに見えるように真尾さんが立ち回っていたし」
夏海さんと真尾さんたちは友だちではないのでしょうか。
「うるさいっ!」
犬上さんが吠えました。
「埒があかないから単刀直入に言うわ。私の友達の雪菜に手を出さないで」
急に名前を呼ばれて心臓が跳ね上がりました。夏海さんは私のことを友達だと思ってくれていたようです。人生初のお友達です。
問題は、これが明晰夢だということです。現実には何の影響も与えないのです。
「へーそー。あの根暗が友達なんだー。どうしようかなぁー」
「少し、いじってあげたらすぐに自殺しちゃいそうな根暗がねー」
犬上さんと八雲さんはくすくすと笑っています。何か悪い遊びを思いついたような悪巧みをする子どものような笑いです。
きっと、私をいじめのターゲットにして夏海さんに嫌な気持ちにさせるつもりです。
「やめて!」
夏海さんがお腹の底から大きな声を出しました。気圧された2人が黙ってしまいました。まさに一喝です。
「命令すんなよ。何様のつもりだ」
犬上さんはどうやら語彙が乏しいようです。私も人のことを言えませんが。
「何様って? さっきも聞かれたらから答えてあげる。人間様よ。これで納得できた? 犬上さんは無様かしら?」
「ふっざけんなっ。私のどこが無様なのよ!」
犬上さんが本当に吠えました。
影たちの隙間から見えたのはほんの一瞬だけでした。
それだけで何が起こったのかを見てとることができました。
夏海さんのスラリと長い美脚が腰の捻りと共に鞭のように振るわれたのです。ハイキックや上段回し蹴りと呼ばれるものです。
美しくすらある一撃は見事、犬上さんの下顎に命中しました。
すとんっと犬上さんは、体から力が抜けて崩れ落ちました。どうやら失神したようです。
夏海さんは八雲さんの間合いへ軽快なフットワークで入っていきます。
半身に構えていた左手で軽く八雲さんの右手を払い除け、一連の動作として右の拳を鳩尾に突き立てました。体重が乗った綺麗な正拳突きです。
一撃必殺という言葉を連想してしました。
夢の中の夏海さんも強くて美しいです。
気がつくと夏海さんの姿はどこにもありませんでした。夢特有の気づいたら登場人物がいなくなっているあれです。
2人を取り囲んでいた影たちが一斉に動き出しました。我先にと倒れている犬上さんと八雲さんに群がっていきます。
「ひっ」
悍ましいものを見てしまいました。影たちが犬上さんを食べています。人の形をしたものが人を食べます。脇腹のお肉が噛みちぎられています。そこからだらりと腸のようなものがつながっています。
ああ、何という事でしょう。凄惨な光景から目を離すことができません。
犬上さんの体は影に食べられたところが、影のように黒く霞んでいます。きっと、影たちに食べられると同じ影になってしまうのでしょう。
どうやら八雲さんには影は群がっていないようです。ただ、彼女の背中からキノコの形をした影が生えています。それがどんどん。どんどん。大きく成長しています。影キノコの成長に合わせて八雲さんの体も犬上さん同様に黒く霞んでいます。
二人は物語の魔物たちと同じ最後を遂げてしまいました。
あの後、おうちに帰って晩ごはんの席でお母さんに八つ当たりをしてしまったことをはっきりと覚えています。なのでこれは夏海さんと別れた後のことを見た夢です。
夢と自覚した夢、明晰夢です。
私は学校の裏庭にいます。時刻ははっきりとはわかりませんが、陽の傾き具合から逢魔時というのが相応しい時間帯です。
なにせ、裏図書室に居た影たちが3人の女の子を取り囲むようにして立ち、うぞうぞうねうねと気味の悪い動きをしています。
影の中心にいる3人は夏海さん、犬上さん、八雲さんです。
「夏海ちゃん、あたしたちを呼び出すって何様のつもり?」
「何様って、私たち友達でしょ?」
「はぁっ!?」
影たちに遮られて夏海さんの顔が見えません。声だけでしか状況を掴むことができないのは何とももどかしいです。
「少なくともクラスのみんなはそう思っているよ。そういうふうに見えるように真尾さんが立ち回っていたし」
夏海さんと真尾さんたちは友だちではないのでしょうか。
「うるさいっ!」
犬上さんが吠えました。
「埒があかないから単刀直入に言うわ。私の友達の雪菜に手を出さないで」
急に名前を呼ばれて心臓が跳ね上がりました。夏海さんは私のことを友達だと思ってくれていたようです。人生初のお友達です。
問題は、これが明晰夢だということです。現実には何の影響も与えないのです。
「へーそー。あの根暗が友達なんだー。どうしようかなぁー」
「少し、いじってあげたらすぐに自殺しちゃいそうな根暗がねー」
犬上さんと八雲さんはくすくすと笑っています。何か悪い遊びを思いついたような悪巧みをする子どものような笑いです。
きっと、私をいじめのターゲットにして夏海さんに嫌な気持ちにさせるつもりです。
「やめて!」
夏海さんがお腹の底から大きな声を出しました。気圧された2人が黙ってしまいました。まさに一喝です。
「命令すんなよ。何様のつもりだ」
犬上さんはどうやら語彙が乏しいようです。私も人のことを言えませんが。
「何様って? さっきも聞かれたらから答えてあげる。人間様よ。これで納得できた? 犬上さんは無様かしら?」
「ふっざけんなっ。私のどこが無様なのよ!」
犬上さんが本当に吠えました。
影たちの隙間から見えたのはほんの一瞬だけでした。
それだけで何が起こったのかを見てとることができました。
夏海さんのスラリと長い美脚が腰の捻りと共に鞭のように振るわれたのです。ハイキックや上段回し蹴りと呼ばれるものです。
美しくすらある一撃は見事、犬上さんの下顎に命中しました。
すとんっと犬上さんは、体から力が抜けて崩れ落ちました。どうやら失神したようです。
夏海さんは八雲さんの間合いへ軽快なフットワークで入っていきます。
半身に構えていた左手で軽く八雲さんの右手を払い除け、一連の動作として右の拳を鳩尾に突き立てました。体重が乗った綺麗な正拳突きです。
一撃必殺という言葉を連想してしました。
夢の中の夏海さんも強くて美しいです。
気がつくと夏海さんの姿はどこにもありませんでした。夢特有の気づいたら登場人物がいなくなっているあれです。
2人を取り囲んでいた影たちが一斉に動き出しました。我先にと倒れている犬上さんと八雲さんに群がっていきます。
「ひっ」
悍ましいものを見てしまいました。影たちが犬上さんを食べています。人の形をしたものが人を食べます。脇腹のお肉が噛みちぎられています。そこからだらりと腸のようなものがつながっています。
ああ、何という事でしょう。凄惨な光景から目を離すことができません。
犬上さんの体は影に食べられたところが、影のように黒く霞んでいます。きっと、影たちに食べられると同じ影になってしまうのでしょう。
どうやら八雲さんには影は群がっていないようです。ただ、彼女の背中からキノコの形をした影が生えています。それがどんどん。どんどん。大きく成長しています。影キノコの成長に合わせて八雲さんの体も犬上さん同様に黒く霞んでいます。
二人は物語の魔物たちと同じ最後を遂げてしまいました。
1
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
烏孫の王妃
東郷しのぶ
歴史・時代
紀元前2世紀の中国。漢帝国の若き公主(皇女)は皇帝から、はるか西方――烏孫(うそん)の王のもとへ嫁ぐように命じられる。烏孫は騎馬を巧みに操る、草原の民。言葉も通じない異境の地で生きることとなった、公主の運命は――?
※「小説家になろう」様など、他サイトにも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる