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第三十二話 緻密な作戦
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「サミー!! どうしてお前がそこにいる!」
空高く浮遊していた人影は数か月前に学院を去っていたサミーだった。
「どうしてだと!? 振り分け戦の時に言ったではないか。私はこの国に仕返しすると。そのためにラムースに加担し、虎視眈々と仕返しの機会をうかがっていたのだ」
「もしアムステリアを滅ぼしたとしても、お前らの神々はイースを必ず滅ぼすぞ!!」
サミーは肩をすくめると、にやりと笑い喋りだした。
「フフフフ...... 貴様は何か勘違いをしているな。イースを滅ぼすのは我々人間だ」
「どういうことだ!?」
「ふっ おっと喋りすぎたようだな。近いうちにその答えは神々から全人類に知れ渡るだろう」
俺はクリルでの悪魔との戦い、ミラでの一件であいつらには人類に対する明確な殺意を感じた。俺と同じようにリリーやイリア、ユニ先生も感じただろう。だが、サミーは滅ぼすのは俺たち、人間だと言っている。サミーらラムース側の人間はミラニドを信仰することによって頭でもおかしくなったのだろうか。その可能性もあるだろう。だが、サミーには狂信者の気配を感じられない。何か俺たちが知らない秘密が隠されているはずだ。
「さて、ずっと喋っているのも無粋ってものだ。戦闘を始めようじゃないか。私が貴様に勝てるとは思わないがな」
なんだろうこの違和感は。サミーは勝てない戦いを俺に挑んできている。サミーは作戦のために俺の前に現れたと考えられないだろうか。いや、それは陶酔者の思考だろう。あり得ない。
まぁ、考えていても仕方がない。ここでサミーを倒して他の方角に支援しに行くべきだ。
「いいだろう! 風よ 俺に力を貸してくれ」
俺は風魔素を足元に集めさみーのもとに高速で移動する。
「ほう。風魔素を使いこなせるようになったか。ますます勝ち目は薄いな! だが! 闇よ! 我に力を与えたまえ! 悪魔の衣 身体強化! 付与!」
俺はサミーが闇魔素を纏っていることに驚いた。それどころか、悪魔の衣まで発動しているのだ。
「なっ!! サミー、おまえは風魔素しか操れなかったはずだ! それに悪魔の衣は魔力4万を超えなければ纏えない技のはず! いったいどうやっ――」
「ふふふ...... ふははははは!!! お前らは何も知らないのだな! 考えてみろ、悪魔と天使のハーフである我々が光魔素や闇魔素を使えない理由はない。人間は元々使えるのだ。だが、3000年の間に人間側が邪悪な魔素と忌み嫌い発現することすらなくなったのだ」
「だが、魔力が低いお前が悪魔の衣を纏っているのはなぜだ!?」
「さっきも言ったばかりだろう? 我々はハーフなのだと。本来我々は4万近い魔力をもっているのだよ。そして、それは神々によって高められる。相変わらずお頭は弱いようだな!」
サミーが言っていることが真実だとすれば、ラムース側の騎士達は既に4万近い魔力を保有している可能性がある。だとすれば、アムステリア側にとって耳を塞ぎたくなるような情報だ。
「お前も相変わらずむかつくやつだ!」
「ふんっ! 貴様の感想など聞いていない」
サミーがそういうとラムース側の騎士がサミーに近寄ってなにやら話している。
「どうやら作戦は成功したようだ」
「どういうことだ!?」
「我々が数百人で、全校生徒600人と教師30人のいるこの場所を占拠しようとでも思ったのか!? そんなわけないだろう。我々の目的は戦力を分散させている間に捕獲することだ」
「なにっ!? お前ら何を――」
「ふふふっ...... 北側に重点的に戦力を集中させたということで察してくれるかな?」
たしか北側にはリリーとイリアが向かったはずだ。ということは
「おまえ! リリーとイリアをどうした!?」
「そう怒るな。殺してはいない。リリーとイリアは皇帝の娘と、懐刀だ。彼女たちを捕えればいい交渉材料になると思ってな! 皇帝に伝えるといい! 我々は大事な娘を預かっている。返してほしければ、アムステリア西部にある占拠した我々の街に降伏宣言の書状をもってこいと」
俺はリリーとイリアが捕まったことに実感がわかなかった。なぜなら、リリー達は並みの騎士、帝国10騎士ですら苦戦する相手だ。それを捕えられるほどの実力者が北側に集合していたということだ。
「それは時間稼ぎのための嘘だろ?」
「ふっ。嘘ではない。貴様に勝つことはこれほどまでに気持ちがいいとはな! それでは、皇帝に伝えてくれよ。さもないと、二人の命はない」
サミーはそういうとサミーのもとに集合した騎士達と共に学院を去っていた。俺はそんな無防備なサミーを追うこともできず、茫然と立ち尽くしていた。
「くそっ!」
「イツキのせいじゃない。俺たち、学院の皆が力がなかったせいだ。すまない」
俺は頭を上げると学院の生徒は俺の周りに集まっていた。皆俺を励ましてくれてるに違いない。だが......
俺が皆に何を言おうか考えていると、空中に人影が見えた。オルフェレウス院長だ。
「イツキよ、無事かの?」
「オルフェレウス院長! リリー達がラムースに連れていかれました! すぐにでも連れ戻しましょう!」
「うむ。それは既にわしの耳にも入ってきておる。冷静になるんじゃ。まずやるべきことは皇帝に報告することじゃ」
オルフェレウス院長が言っていることは正しい。皇帝に報告し、正しい行動をするべきだろう。だが、そうしている間にリリー達は酷い目に遭っているかもしれない。
「ですが、なるべく早く行動をしないと!」
「イツキの気持ちはわかるがの。まずは皇帝に報告がさきじゃ。わしが首都アムステリアまで行くから、イツキは寮でゆっくりと休みなさい。そして、明日わしのところに来るのじゃ」
オルフェレウス院長は俺の肩をポンポンと叩くと、どこかに去っていた。
もしリーシュ陛下がリリーたちを救出することを拒んだら? 娘の命と引き換えに国を渡す指導者がいるだろうか。少なくとも俺の記憶にある指導者はそんな理想主義の塊ではない。
だとすれば、リリー達の命が危ない。A組の皆に事情を話し、救出の計画を立てなければならない。
俺はリリーたちを救出すべく、会長がいる南側に向かった。
空高く浮遊していた人影は数か月前に学院を去っていたサミーだった。
「どうしてだと!? 振り分け戦の時に言ったではないか。私はこの国に仕返しすると。そのためにラムースに加担し、虎視眈々と仕返しの機会をうかがっていたのだ」
「もしアムステリアを滅ぼしたとしても、お前らの神々はイースを必ず滅ぼすぞ!!」
サミーは肩をすくめると、にやりと笑い喋りだした。
「フフフフ...... 貴様は何か勘違いをしているな。イースを滅ぼすのは我々人間だ」
「どういうことだ!?」
「ふっ おっと喋りすぎたようだな。近いうちにその答えは神々から全人類に知れ渡るだろう」
俺はクリルでの悪魔との戦い、ミラでの一件であいつらには人類に対する明確な殺意を感じた。俺と同じようにリリーやイリア、ユニ先生も感じただろう。だが、サミーは滅ぼすのは俺たち、人間だと言っている。サミーらラムース側の人間はミラニドを信仰することによって頭でもおかしくなったのだろうか。その可能性もあるだろう。だが、サミーには狂信者の気配を感じられない。何か俺たちが知らない秘密が隠されているはずだ。
「さて、ずっと喋っているのも無粋ってものだ。戦闘を始めようじゃないか。私が貴様に勝てるとは思わないがな」
なんだろうこの違和感は。サミーは勝てない戦いを俺に挑んできている。サミーは作戦のために俺の前に現れたと考えられないだろうか。いや、それは陶酔者の思考だろう。あり得ない。
まぁ、考えていても仕方がない。ここでサミーを倒して他の方角に支援しに行くべきだ。
「いいだろう! 風よ 俺に力を貸してくれ」
俺は風魔素を足元に集めさみーのもとに高速で移動する。
「ほう。風魔素を使いこなせるようになったか。ますます勝ち目は薄いな! だが! 闇よ! 我に力を与えたまえ! 悪魔の衣 身体強化! 付与!」
俺はサミーが闇魔素を纏っていることに驚いた。それどころか、悪魔の衣まで発動しているのだ。
「なっ!! サミー、おまえは風魔素しか操れなかったはずだ! それに悪魔の衣は魔力4万を超えなければ纏えない技のはず! いったいどうやっ――」
「ふふふ...... ふははははは!!! お前らは何も知らないのだな! 考えてみろ、悪魔と天使のハーフである我々が光魔素や闇魔素を使えない理由はない。人間は元々使えるのだ。だが、3000年の間に人間側が邪悪な魔素と忌み嫌い発現することすらなくなったのだ」
「だが、魔力が低いお前が悪魔の衣を纏っているのはなぜだ!?」
「さっきも言ったばかりだろう? 我々はハーフなのだと。本来我々は4万近い魔力をもっているのだよ。そして、それは神々によって高められる。相変わらずお頭は弱いようだな!」
サミーが言っていることが真実だとすれば、ラムース側の騎士達は既に4万近い魔力を保有している可能性がある。だとすれば、アムステリア側にとって耳を塞ぎたくなるような情報だ。
「お前も相変わらずむかつくやつだ!」
「ふんっ! 貴様の感想など聞いていない」
サミーがそういうとラムース側の騎士がサミーに近寄ってなにやら話している。
「どうやら作戦は成功したようだ」
「どういうことだ!?」
「我々が数百人で、全校生徒600人と教師30人のいるこの場所を占拠しようとでも思ったのか!? そんなわけないだろう。我々の目的は戦力を分散させている間に捕獲することだ」
「なにっ!? お前ら何を――」
「ふふふっ...... 北側に重点的に戦力を集中させたということで察してくれるかな?」
たしか北側にはリリーとイリアが向かったはずだ。ということは
「おまえ! リリーとイリアをどうした!?」
「そう怒るな。殺してはいない。リリーとイリアは皇帝の娘と、懐刀だ。彼女たちを捕えればいい交渉材料になると思ってな! 皇帝に伝えるといい! 我々は大事な娘を預かっている。返してほしければ、アムステリア西部にある占拠した我々の街に降伏宣言の書状をもってこいと」
俺はリリーとイリアが捕まったことに実感がわかなかった。なぜなら、リリー達は並みの騎士、帝国10騎士ですら苦戦する相手だ。それを捕えられるほどの実力者が北側に集合していたということだ。
「それは時間稼ぎのための嘘だろ?」
「ふっ。嘘ではない。貴様に勝つことはこれほどまでに気持ちがいいとはな! それでは、皇帝に伝えてくれよ。さもないと、二人の命はない」
サミーはそういうとサミーのもとに集合した騎士達と共に学院を去っていた。俺はそんな無防備なサミーを追うこともできず、茫然と立ち尽くしていた。
「くそっ!」
「イツキのせいじゃない。俺たち、学院の皆が力がなかったせいだ。すまない」
俺は頭を上げると学院の生徒は俺の周りに集まっていた。皆俺を励ましてくれてるに違いない。だが......
俺が皆に何を言おうか考えていると、空中に人影が見えた。オルフェレウス院長だ。
「イツキよ、無事かの?」
「オルフェレウス院長! リリー達がラムースに連れていかれました! すぐにでも連れ戻しましょう!」
「うむ。それは既にわしの耳にも入ってきておる。冷静になるんじゃ。まずやるべきことは皇帝に報告することじゃ」
オルフェレウス院長が言っていることは正しい。皇帝に報告し、正しい行動をするべきだろう。だが、そうしている間にリリー達は酷い目に遭っているかもしれない。
「ですが、なるべく早く行動をしないと!」
「イツキの気持ちはわかるがの。まずは皇帝に報告がさきじゃ。わしが首都アムステリアまで行くから、イツキは寮でゆっくりと休みなさい。そして、明日わしのところに来るのじゃ」
オルフェレウス院長は俺の肩をポンポンと叩くと、どこかに去っていた。
もしリーシュ陛下がリリーたちを救出することを拒んだら? 娘の命と引き換えに国を渡す指導者がいるだろうか。少なくとも俺の記憶にある指導者はそんな理想主義の塊ではない。
だとすれば、リリー達の命が危ない。A組の皆に事情を話し、救出の計画を立てなければならない。
俺はリリーたちを救出すべく、会長がいる南側に向かった。
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