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第三十四話 潜入前夜
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昨日の一件でノルアドレナリンを過剰分泌した俺は寝れずリリーたちを助け出す方法をずっと考えていた。そんな俺が寝れたのはカーテン越しの明かりが俺の目を刺激する頃だった。
起きる時間もいつもより早く、午前8時には起きると寝不足でぼっーとしている頭を切り替えるために俺は洗面台でいつもより多く顔を洗い、オルフェレウス院長のところに向かった。
「オルフェレウス院長! イツキ テンマです」
「おお! 来たか! 扉はあいておる。入るのじゃ」
俺は頑丈な、院長室仕様の扉を開けるとオルフェレウス院長は窓の外を眺めていた。
「昨日の一件のことで来たのですが」
「わかっておる。その様子だと寝ておらんな?」
「はい。昨日はあまり眠れませんでした」
「ふむ。今日からまた戦闘訓練が始まる。栄養剤でも飲んでおきなさい」
「わかりました。それで、リリーたちの救出はどうなったのですか?」
「イツキよ。残念じゃがリーシュ陛下はアムステリア西部にあるアミルに兵も書状も送らないことを決定した」
「そうですか......」
俺の予想通り、リーシュ陛下はリリーの命より国、いや、人類を守ることを選択したようだ。それは指導者として正しい選択だ。俺はリーシュ陛下の決定に怒りの感情を持つことはなかった。それに、陛下だって辛い決定だっただろう。
「わしも残念じゃが、陛下の決定じゃ」
「わかりました。じゃあ、俺はこれで――」
「待つんじゃ。ユニ先生を知っておるじゃろ? 彼女はアムステリア西部にあるグランデの丘で待つと言っていた」
「それはどういう意味ですか?」
「はて? 何の話だったかの。さあ、授業も始まる。行きなさい」
オルフェレウス院長はユニ先生がアムステリア西部にあるグランデの丘で待つと言っていた。ということは、俺たちがリリーとイリアを助けだすと思っていたのかもしれない。だが、ユニ先生は一体グランデの丘で何をしようと企んでいるのか。
俺が考えながら寮へと戻る廊下を歩いていると白銀の髪のエル会長が反対側から歩いてきていた。
「あら? その様子だと院長室に行ったようね」
「はい」
「それで、院長はなんといっていたのかしら?」
「院長はリーシュ陛下が兵や書状を送らないことを決定したと言っていました。ですが、ユニ先生がグランデの丘で待っているとも言っていました」
エル会長は細く綺麗な手を口元にやると考えている
「ユニ先生が学院にいなかったの不思議に思わなかった?」
「ええ、たしかに」
「ユニ先生はおそらく何らかの任務にあたってるに違いないわ。それで、リリーさんとイリアさんが捕まっている情報を得て私たちに力を貸してくれると言っているんじゃないかしら?」
会長の言う通りユニ先生の姿をここ最近見ていない。だとすれば、クリルの街の一件と同じく何らかの任務に就いている可能性が高い。それに、ユニ先生が俺たちを裏切るとは思えない。
「俺もそう思います!」
「じゃあ、早速行動しなきゃね! 私は皆に知らせに行くから、イツキ君は用意して馬車乗り場で馬車の確保をお願い」
「わかりました!」
俺は会長の言葉通り、寮で準備を済ませるとこっそりと馬車乗り場に向かい馬車を確保した。
◇
学院を去ってから4日くらいたっただろうか。俺たちは野宿をしながらユニ先生が待つグランデの丘周辺についていた。
「そろそろグランデの丘につくはずだが......」
「そうね。この辺りにユニ先生がいるはずだけど」
俺たちはグランデの丘周辺をぐるぐる回っているが一向にユニ先生の姿が見えない。
「もしかして、グランデの丘の頂上で待っているのかしら?」
「ユニ先生のことだ。入り口で待ってるんじゃなく、頂上で待ってるのかもしれない」
ロドリゴ先輩と会長は互いに納得し合っている。
「それじゃ、頂点にむかいましょう。だけど、馬を走らせると面倒だから数人で行くことにしましょう」
会長はそういうと俺と会長とロドリゴ先輩はユニ先生が待つ丘に向かう。すると、頂上に人影が見えた。
「遅いじゃないか!! さてはお前ら、道中で美味しい食べ物でもたべていたな!?」
というとがはははははと笑い出した。
「先生! 真面目な話をしようとしているのですよ?」
「すまんなエル! それじゃあ、早速呼んだ理由を教えよう」
どうやらユニ先生は占拠されたアムステリアの街で情報収集の任務に就いていたようだ。それでリリーたちが捕まったことを聞いたらしい。
「おまえたち! 目の前に見える街がアミルの街だ。見ての通りアミルの街は城郭都市で城壁で街が覆われている。街に入るには通行証が必要だ。そこで、通行証を用意してきた」
ユニ先生は普段はぼっーとしているが、意外と頼りになる先生で、ピンチの時だけ駆けつける勇者のような人だ。こういっては失礼だが、これほどまでにギャップがある人も珍しいだろう。
「さすがはユニ先生ですわね」
「エル! 本当に思っているのか?」
「どうでしょうか! 冗談はさて置き、ユニ先生がいなかったら城壁を飛び越えて無理やり入るしかなかったでしょう。ありがとうございます」
「礼はいいよ! だけど、怪しまれない為にも数時間ごとに入ったほうがいいね」
「ユニ先生! それだとリリー達の命が!!」
数時間ごとに馬車を出していれば明日の昼まで何も行動できない。既に5日も立っているのだ。一刻も早く救出しないとりりーたちが危ない。
「イツキ。気持ちはわかるが、慌てて行動してばれたらそれでおしまいだ。慎重に行動したほうがいい」
「ロドリゴの言う通りだ! 一度しか機会はないんだ! 慎重にやるんだね」
「わかりました。ユニ先生はこれからなにを?」
「私はこれからこの街を離れガリア皇国の調査をしなきゃならないんだ」
ユニ先生はリリーたちの救出任務より優先すべき大事な任務を皇帝から与えられているのだろう。ユニ先生がいれば心強いが仕方がない。
「それじゃ! 私はいくよ!」
そういうとユニ先生は丘から去っていた。
「俺たちも時間がない! 早速ユニ先生がくれた通行証で街の中に潜入しましょう!」
「そうね!」
俺たちは変装をし終えると、数班に分け通行証でアミルの街に潜入し始めた。
起きる時間もいつもより早く、午前8時には起きると寝不足でぼっーとしている頭を切り替えるために俺は洗面台でいつもより多く顔を洗い、オルフェレウス院長のところに向かった。
「オルフェレウス院長! イツキ テンマです」
「おお! 来たか! 扉はあいておる。入るのじゃ」
俺は頑丈な、院長室仕様の扉を開けるとオルフェレウス院長は窓の外を眺めていた。
「昨日の一件のことで来たのですが」
「わかっておる。その様子だと寝ておらんな?」
「はい。昨日はあまり眠れませんでした」
「ふむ。今日からまた戦闘訓練が始まる。栄養剤でも飲んでおきなさい」
「わかりました。それで、リリーたちの救出はどうなったのですか?」
「イツキよ。残念じゃがリーシュ陛下はアムステリア西部にあるアミルに兵も書状も送らないことを決定した」
「そうですか......」
俺の予想通り、リーシュ陛下はリリーの命より国、いや、人類を守ることを選択したようだ。それは指導者として正しい選択だ。俺はリーシュ陛下の決定に怒りの感情を持つことはなかった。それに、陛下だって辛い決定だっただろう。
「わしも残念じゃが、陛下の決定じゃ」
「わかりました。じゃあ、俺はこれで――」
「待つんじゃ。ユニ先生を知っておるじゃろ? 彼女はアムステリア西部にあるグランデの丘で待つと言っていた」
「それはどういう意味ですか?」
「はて? 何の話だったかの。さあ、授業も始まる。行きなさい」
オルフェレウス院長はユニ先生がアムステリア西部にあるグランデの丘で待つと言っていた。ということは、俺たちがリリーとイリアを助けだすと思っていたのかもしれない。だが、ユニ先生は一体グランデの丘で何をしようと企んでいるのか。
俺が考えながら寮へと戻る廊下を歩いていると白銀の髪のエル会長が反対側から歩いてきていた。
「あら? その様子だと院長室に行ったようね」
「はい」
「それで、院長はなんといっていたのかしら?」
「院長はリーシュ陛下が兵や書状を送らないことを決定したと言っていました。ですが、ユニ先生がグランデの丘で待っているとも言っていました」
エル会長は細く綺麗な手を口元にやると考えている
「ユニ先生が学院にいなかったの不思議に思わなかった?」
「ええ、たしかに」
「ユニ先生はおそらく何らかの任務にあたってるに違いないわ。それで、リリーさんとイリアさんが捕まっている情報を得て私たちに力を貸してくれると言っているんじゃないかしら?」
会長の言う通りユニ先生の姿をここ最近見ていない。だとすれば、クリルの街の一件と同じく何らかの任務に就いている可能性が高い。それに、ユニ先生が俺たちを裏切るとは思えない。
「俺もそう思います!」
「じゃあ、早速行動しなきゃね! 私は皆に知らせに行くから、イツキ君は用意して馬車乗り場で馬車の確保をお願い」
「わかりました!」
俺は会長の言葉通り、寮で準備を済ませるとこっそりと馬車乗り場に向かい馬車を確保した。
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学院を去ってから4日くらいたっただろうか。俺たちは野宿をしながらユニ先生が待つグランデの丘周辺についていた。
「そろそろグランデの丘につくはずだが......」
「そうね。この辺りにユニ先生がいるはずだけど」
俺たちはグランデの丘周辺をぐるぐる回っているが一向にユニ先生の姿が見えない。
「もしかして、グランデの丘の頂上で待っているのかしら?」
「ユニ先生のことだ。入り口で待ってるんじゃなく、頂上で待ってるのかもしれない」
ロドリゴ先輩と会長は互いに納得し合っている。
「それじゃ、頂点にむかいましょう。だけど、馬を走らせると面倒だから数人で行くことにしましょう」
会長はそういうと俺と会長とロドリゴ先輩はユニ先生が待つ丘に向かう。すると、頂上に人影が見えた。
「遅いじゃないか!! さてはお前ら、道中で美味しい食べ物でもたべていたな!?」
というとがはははははと笑い出した。
「先生! 真面目な話をしようとしているのですよ?」
「すまんなエル! それじゃあ、早速呼んだ理由を教えよう」
どうやらユニ先生は占拠されたアムステリアの街で情報収集の任務に就いていたようだ。それでリリーたちが捕まったことを聞いたらしい。
「おまえたち! 目の前に見える街がアミルの街だ。見ての通りアミルの街は城郭都市で城壁で街が覆われている。街に入るには通行証が必要だ。そこで、通行証を用意してきた」
ユニ先生は普段はぼっーとしているが、意外と頼りになる先生で、ピンチの時だけ駆けつける勇者のような人だ。こういっては失礼だが、これほどまでにギャップがある人も珍しいだろう。
「さすがはユニ先生ですわね」
「エル! 本当に思っているのか?」
「どうでしょうか! 冗談はさて置き、ユニ先生がいなかったら城壁を飛び越えて無理やり入るしかなかったでしょう。ありがとうございます」
「礼はいいよ! だけど、怪しまれない為にも数時間ごとに入ったほうがいいね」
「ユニ先生! それだとリリー達の命が!!」
数時間ごとに馬車を出していれば明日の昼まで何も行動できない。既に5日も立っているのだ。一刻も早く救出しないとりりーたちが危ない。
「イツキ。気持ちはわかるが、慌てて行動してばれたらそれでおしまいだ。慎重に行動したほうがいい」
「ロドリゴの言う通りだ! 一度しか機会はないんだ! 慎重にやるんだね」
「わかりました。ユニ先生はこれからなにを?」
「私はこれからこの街を離れガリア皇国の調査をしなきゃならないんだ」
ユニ先生はリリーたちの救出任務より優先すべき大事な任務を皇帝から与えられているのだろう。ユニ先生がいれば心強いが仕方がない。
「それじゃ! 私はいくよ!」
そういうとユニ先生は丘から去っていた。
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