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第21話 宰相はジークを追放したことを後悔する
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ラザルは1週間近くかけて王都の巨大な門までたどり着いた。
そんな門の前には大勢の魔法騎士や衛兵がラザルを待ち構えていた。
ラザルはそれを自らの出迎えだと思い、口を開く。
「諸君! 出迎えご苦労!」
ラザルはここ1週間、機嫌が悪かったがこの光景を見てにっこりと笑う。
だが、そう言うラザルを魔法騎士達は包囲する。
「な、何事だ?」
「国家反逆罪の容疑がかけられている。宰相殿。ご同行を」
ラザルはその瞬間、アルベールたちが密告したのだと悟る。
「密告者はアルベールたちか?」
ラザルのそんな言葉に長は頷く。
「さあ、行きましょう。宰相殿」
ラザルは逃げ出そうにも、逃げ出せないので仕方がなくついていく。
門を抜け、大通りに入ると、大勢の民衆がラザルを睨みつけていた。
だが、ラザルは気にしない。むしろ虫けらのように民衆を見て鼻で笑う。
誰のおかげでクルザが成り立っていたと思ってるのだとラザルは思う。
ラザルは未だに自分が無能だという事を理解しようとはしなかった。
そんなラザルは王城までの通りを魔法騎士達に護衛されながら進む。
その間、ラザルの耳には民衆たちの色々な言葉が入ってきていた。
「ふざけるな、この糞野郎! ジーク様を返せ!」「リースとの交渉はお前のせいだ! お前の金で食料を買え!」「蛮族たちは既に王国内に侵入している! どうしてくれるんだ!」
暴動寸前の民衆の声にもラザルは鼻で笑っていた。
(たかが平民がこの私を罵倒するのか! まるでジークのように愚かだ)
ラザルは心の中で呟くと、さらに進む。
その間も、民衆たちからの声は聞こえてくる。
その言葉はラザルの頭のねじを狂わせていた。
ラザルの精神はボロボロだった。ラザルは自分が無能だと分かりたくないから、今の今までジークのようにできる人間だと偽ってきた。
自分はもっとできるはず。ジークがやれたことは自分もできるはずだと、そう思い込んでいた。
だが、その思い込みは王都中に響き渡る民衆の声によって、瓦解した。もう限界だった。
「うるさい! だまれぃ! これ以上喋るんじゃない!」
ラザルは大声でそう言うが、民衆の声はやまない。
「ふざけるな、この国を壊すんじゃねえ!」「ジーク様がいなくなったからこうなったんだ! ジーク様に謝れ!」
そんな言葉を聞いてラザルの偽りの精神はついに崩壊する。
(そうだ。全てはジークがいたからこそだった。そんなジークはもはやいない。私は取り返しのつかないことをしてしまった)
偽りの鎧が壊されたラザルはジークを追い出したことを後悔していた。
(ジークがいたから、蛮族との争いがなかった。ジークがいたから、食料の問題はなかった。ジークがいたから民衆は国に不満を抱かなかった。そしてその他の問題もおそらくはジークが)
ラザルは激しく後悔していた。
そんなラザルには、王座の間までの道のりは一瞬だった。
気が付けばラザルは王座の間にいた。
「宰相ラザル。ジークを嘘で追い出し、リース国との完全なる国交断絶。蛮族との戦争。これらは全て貴様が引き起こしたこと。間違いないか?」
ラース王は威厳のある表情でそう答えた。
というのも、ラースには二つの顔がある。
ひとつは、側近にしか見せないだらしない顔。もうひとつは、外向けの顔。
「間違いありません、我が王よ」
「ふむ。そうか」
ラースは静かにそう言うと、一拍あけていた。
その隙に、ラザルは口を開く。
「陛下。私にもう一度チャンスをください。ジークを戻して見せましょう」
ラザルはこの状況でさえ解決できるジークを取り戻せば、減刑できると考えての発言だった。
しかし、ラースは首を横に振る。
「ならん! 余もジークを取り戻す計画は立てておる。だが、そのためにはラザル。お前が苦しむ必要がある」
ラースは本当は計画など立ててはいなかった。
怠惰なラースがそんなことをするわけがないのだ。
アルベールたちはジークに戻ってきてもらう作戦を立てていて、この発言はアルベールたちの入れ知恵。
『ラザルが苦しめば、ジークが戻ってきてくれる可能性が高まる』
その言葉でラースはあっさりと了承したのだ。
「苦しむとは?」
「ラザルよ。お前の刑は、お前がジークにやらせていたつまらない仕事を永遠にやり続けることと、毎日ちょっとした拷問を行う。もちろん、部屋は牢屋。だが、ジークが望めば刑は変わると思っておれ」
ラースはラザルに宮廷の全ての雑務をやるように言っていた。掃除、洗濯、皿洗いなど。
加えて、『痛い』と感じる程度の拷問も考えていた。
「どうか、お許しを。陛下!」
ラザルはひれ伏す。
「ダメだ。ラザルよ」
「どうか!」
「陛下に何度も言わせるな! 囚人!」
ラースを護衛している数十の近衛騎士はラザルを叩く。
だが、ラザルはやめない。
「お願いします! 陛下!」
ひれ伏すラザルのそんな言葉にはラースに届かない。
ラースは無感情で切り捨てる。
「ダメだ、ラザルよ。貴様は国を破壊したのだ。むしろこのくらいの刑で有難いと思え」
ラザルはそんなラースの厳粛な声を聞いた時、再びジークを追い出したことを激しく後悔した。
最初からジークのことを正しく評価していれば、こんなことにはならなかったと。
そんな門の前には大勢の魔法騎士や衛兵がラザルを待ち構えていた。
ラザルはそれを自らの出迎えだと思い、口を開く。
「諸君! 出迎えご苦労!」
ラザルはここ1週間、機嫌が悪かったがこの光景を見てにっこりと笑う。
だが、そう言うラザルを魔法騎士達は包囲する。
「な、何事だ?」
「国家反逆罪の容疑がかけられている。宰相殿。ご同行を」
ラザルはその瞬間、アルベールたちが密告したのだと悟る。
「密告者はアルベールたちか?」
ラザルのそんな言葉に長は頷く。
「さあ、行きましょう。宰相殿」
ラザルは逃げ出そうにも、逃げ出せないので仕方がなくついていく。
門を抜け、大通りに入ると、大勢の民衆がラザルを睨みつけていた。
だが、ラザルは気にしない。むしろ虫けらのように民衆を見て鼻で笑う。
誰のおかげでクルザが成り立っていたと思ってるのだとラザルは思う。
ラザルは未だに自分が無能だという事を理解しようとはしなかった。
そんなラザルは王城までの通りを魔法騎士達に護衛されながら進む。
その間、ラザルの耳には民衆たちの色々な言葉が入ってきていた。
「ふざけるな、この糞野郎! ジーク様を返せ!」「リースとの交渉はお前のせいだ! お前の金で食料を買え!」「蛮族たちは既に王国内に侵入している! どうしてくれるんだ!」
暴動寸前の民衆の声にもラザルは鼻で笑っていた。
(たかが平民がこの私を罵倒するのか! まるでジークのように愚かだ)
ラザルは心の中で呟くと、さらに進む。
その間も、民衆たちからの声は聞こえてくる。
その言葉はラザルの頭のねじを狂わせていた。
ラザルの精神はボロボロだった。ラザルは自分が無能だと分かりたくないから、今の今までジークのようにできる人間だと偽ってきた。
自分はもっとできるはず。ジークがやれたことは自分もできるはずだと、そう思い込んでいた。
だが、その思い込みは王都中に響き渡る民衆の声によって、瓦解した。もう限界だった。
「うるさい! だまれぃ! これ以上喋るんじゃない!」
ラザルは大声でそう言うが、民衆の声はやまない。
「ふざけるな、この国を壊すんじゃねえ!」「ジーク様がいなくなったからこうなったんだ! ジーク様に謝れ!」
そんな言葉を聞いてラザルの偽りの精神はついに崩壊する。
(そうだ。全てはジークがいたからこそだった。そんなジークはもはやいない。私は取り返しのつかないことをしてしまった)
偽りの鎧が壊されたラザルはジークを追い出したことを後悔していた。
(ジークがいたから、蛮族との争いがなかった。ジークがいたから、食料の問題はなかった。ジークがいたから民衆は国に不満を抱かなかった。そしてその他の問題もおそらくはジークが)
ラザルは激しく後悔していた。
そんなラザルには、王座の間までの道のりは一瞬だった。
気が付けばラザルは王座の間にいた。
「宰相ラザル。ジークを嘘で追い出し、リース国との完全なる国交断絶。蛮族との戦争。これらは全て貴様が引き起こしたこと。間違いないか?」
ラース王は威厳のある表情でそう答えた。
というのも、ラースには二つの顔がある。
ひとつは、側近にしか見せないだらしない顔。もうひとつは、外向けの顔。
「間違いありません、我が王よ」
「ふむ。そうか」
ラースは静かにそう言うと、一拍あけていた。
その隙に、ラザルは口を開く。
「陛下。私にもう一度チャンスをください。ジークを戻して見せましょう」
ラザルはこの状況でさえ解決できるジークを取り戻せば、減刑できると考えての発言だった。
しかし、ラースは首を横に振る。
「ならん! 余もジークを取り戻す計画は立てておる。だが、そのためにはラザル。お前が苦しむ必要がある」
ラースは本当は計画など立ててはいなかった。
怠惰なラースがそんなことをするわけがないのだ。
アルベールたちはジークに戻ってきてもらう作戦を立てていて、この発言はアルベールたちの入れ知恵。
『ラザルが苦しめば、ジークが戻ってきてくれる可能性が高まる』
その言葉でラースはあっさりと了承したのだ。
「苦しむとは?」
「ラザルよ。お前の刑は、お前がジークにやらせていたつまらない仕事を永遠にやり続けることと、毎日ちょっとした拷問を行う。もちろん、部屋は牢屋。だが、ジークが望めば刑は変わると思っておれ」
ラースはラザルに宮廷の全ての雑務をやるように言っていた。掃除、洗濯、皿洗いなど。
加えて、『痛い』と感じる程度の拷問も考えていた。
「どうか、お許しを。陛下!」
ラザルはひれ伏す。
「ダメだ。ラザルよ」
「どうか!」
「陛下に何度も言わせるな! 囚人!」
ラースを護衛している数十の近衛騎士はラザルを叩く。
だが、ラザルはやめない。
「お願いします! 陛下!」
ひれ伏すラザルのそんな言葉にはラースに届かない。
ラースは無感情で切り捨てる。
「ダメだ、ラザルよ。貴様は国を破壊したのだ。むしろこのくらいの刑で有難いと思え」
ラザルはそんなラースの厳粛な声を聞いた時、再びジークを追い出したことを激しく後悔した。
最初からジークのことを正しく評価していれば、こんなことにはならなかったと。
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