【完結保証】宮廷仕えの聖女の護衛は、王や宰相から追放を言い渡される~聖女の護衛の任は表向きの話。平和のために俺は帝国を黄金時代へと導く~

カレキ

文字の大きさ
25 / 52

第25話 久しぶりに会う人は変わらない

しおりを挟む
俺たちはもこもこのモコンに乗りモラの村に向かっていて、あと少しのところだ。

 だというのに、帝国部隊のマントが邪魔で仕方がない。

 黒を基調として赤が少し入る程度の帝国の制服は帝国の将ならば着なければいけないらしく、俺はアシスヘイムを出る辺りから着ているのだが、どうもマントと言うものが慣れない。

 クルザ王国でもマントはあるが、クルザでは自由なので俺は着ていなかった。

 こんなにも邪魔なのか......

 俺はマントを右手で押さえる。

「ジーク。そのマント邪魔そうね」

 横を走っていたティアはついに気づいてくれたのかそう言っていた。

 ちなみに、ティアは聖女なのでクルザと変わらずの白い服だ。

「ああ、そうなんだ。風でなびいてな......」
「慣れですよ。大元帥」

 前を行くヨセフは相変わらず振り向きもせずそう言うと、

「さあ、着いたようです」

 前を指さしながらそう言っていた。

 俺がマントに現を抜かしている間に、どうやらもう着いていたようだ。

 俺はそんなヨセフの言葉に前を見ると、真っ暗な中橙色の魔法掲示板の光や、魔法電灯が光っている。

 俺はその北部限定の質素な明かりを見て懐かしいと感じた。
 以前、ここに来たのは18の頃。俺がまだ学生だった頃だ。
 あのときにはもう先代宰相の元で働いていたか。

 俺は過去を懐かしく思っていると、前方からモコンの足音に気づいた村人たちが近寄っていた。

「おお、これはヨセフ元帥様。それに......」
「こちらはジーク大元帥とリスティア聖女です」

 村長の言葉にヨセフは敬語でそう答えていた。
 やはりヨセフは礼儀正しいようだ

「なんとっ! これは失礼しました。ジーク様、リスティア様」

 村長は頭を下げると、後ろにいた村人たちは何やら話している。

「リリーザ様を救ってくれたクルザの魔法使い!」「でも魔法使いなんて怖い.......」「ばか! 声がでかいぞ!」

 聞こえてるんだがな。

「これ! 失礼なことを言う出ない! すみません、北部は代々魔力を持たないものが多いもので」
「そうですか」

 俺はティアのバックからクリスタルをとると魔力を補充し、村長に手渡す。
 これでいくらか安心してくれるだろう。

 あと、クリスタルの補給についても考えなければな。

「5年は持つだろう」
「5年ですと? 馬鹿なあり得ない! いや、失礼。ジーク様の力ならあり得るのでしょうか......」
「まぁ、使ってみてくれ」
「わかりました。ジーク様、ありがとうございます」

 と村長が言うと、村人たちも納得してくれたのか俺の事を怖い人と言う認識を捨て去った顔をしていた。

「それで、今日ここに来たのは頑固な爺さんを探すためなんだ」

 俺がそう言うと村人たちは一斉に頷いた。どうやら有名人になったらしい。

「ああー! あの変わりものの。あっ! これは失礼」

 事実だからな。言ってもいいぞ。

「ザンビさんなら、もうずっとこの近くにある滝の裏の洞窟で暮らしています」

 村長はそう言うと北東の滝を指さす。

 グレアにいた頃、ザンビは家に暮らしていたから、もっと変わり者のようになったらしい。


「ありがとう村長。さあ、行こう」

 俺はティアとヨセフを見る。

「もう、行かれるのですか?」
「ええ、少々忙しいので」

 とヨセフは俺が言うより早くに言い、俺たちは村の近くの滝へと向かう。

「本当にこんな薄暗い洞窟に暮らしているのかしら。しかも、ちょっと焦げ臭いし」

 ティアは鼻の前で手を振っている。

「この匂い。確実にザンビ爺さんだな」

 俺はこの臭いを知っている。鉱石を溶かして打つときの臭いだ。

「すごい臭いですね......」

 ヨセフも臭いのか鼻をつまんでいた。

「独自の技術だからな。どうしても臭くなるそうだ」

 俺はそう言うと、洞窟の中に進む。

「ザンビ爺さん!」

 すると、奥から白髭を生やした小太りの久しぶりに見る顔が現れる。

「ほう。これは珍しい。8年ぶりか」
「ああ、そんなところだ」
「でかくなったもんだな」

 爺はそう言うと、ティアとヨセフをちらっと見る。

「それで何の用なんだ?」

 爺さんやはり話が早くて助かる。

「実は、天剣を作って欲しい」
「断る」
「お願いだ」
「横のおなごに触っていいならやってやる」
「断る」
「ちょっとだけだ」
「絶対に断る」

 俺がそう言うと間が開く。

 だが、嫌な雰囲気にはならない。

 そんな中、俺はようやく理由を言いたくなってきたので、言うことにした。

「人の命を救うためだ。頼む」

 するとザンビは大きな溜息をした。

「なぜ早く言わんのだ。相変わらず頑固な小僧だ」
「爺さんだって相変わらず頑固じゃないか」

 すると再び間が開く。
 これが俺たちのコミュニケーションだった。

「だが、わしもただで引き受けるつもりはない。それに本来ならば、絶対に断ってたぞ」

 ザンビは力強い目でそう言うので、俺は頷く。

「ああ、分かってる。それでも来たんだ」

 俺がそう言うとザンビは眉を上げる。

「変わらずだなお前は。まあ、いい。条件だ。わしはクルザの国民の命など遠すぎて、もはやどうでもいい。だが、近くとなると別だ。モラの村の北東、ここから先にさらに進んだところに魔物の住みかができた」

「倒せばいいのか、その魔物を」

 相変わらず損な性格をしている。魔物を倒していることを村の皆が知れば、どんなに驚くことか。

 いや、それは俺もだったか。人のことは言えないな。

 俺はそんなことを思いながらそう言う。

「そう言うことだな。ジーク。ここはクルザから遠い。魔物も頻繁に沸く。大抵はわしが倒すが、今回の魔物はレベルが違う。鍛冶師のわしでは無理だが、お前ならできる。そうだろう?」

 ザンビはニッコリと笑っていたので、俺は頷く。

「もちろんだ。速攻で片付けてくるよ」
「ああ、天剣は任せておけ」

 俺はそう言うと、ティアとヨセフを見る。
 ぽかんとしていた二人だったが、俺の視線に気づくと頷く。

 だから俺は北東へ向かった。

 宣言通り、速攻で片付けるために。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...