【完結保証】宮廷仕えの聖女の護衛は、王や宰相から追放を言い渡される~聖女の護衛の任は表向きの話。平和のために俺は帝国を黄金時代へと導く~

カレキ

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第32話 砦をつくる

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北部への道中、俺はティアの機嫌を損ねてしまった。
 俺が道中に『「助言通り気長に待つことにします」ってどういう意味だ?』

 そう尋ねてからティアはうんともすんとも言ってこない。
 いや、それは間違いだ。

『私がいなくなってもいいのかしら? 馬鹿ジーク』

 この言葉を俺が話しかけるたびに、むっとしながら独り言のように言ってくる。

 当然、冗談だとわかりつつも、いままでずっと一緒だったティアにどこか行かれては困る。
 小さいころから一緒だったわけだし、性格だって合う。まさに理想の友ってやつだ。

 だから俺が素直に何度謝っても、ティアはむっとしたままだ。

 今もティアはほっぺを魔法風船のように膨らませながら、俺をジトっとした目で見ている。

 はぁ。どうしたものか。

 そう思っていると、先頭にいたヨセフの声が聞こえてきた。

「大元帥。あなたって人は。いつ気づくんですかね」

 そういってため息を吐き出す。

「まぁ、人間ですから苦手なことはあります。いいですか、大元帥。第三者であるこの私が、大元帥たちの話を聞いていてわかったことがあります。それはお互いのことが好きってことです」

 その瞬間、俺は心の中で『何言ってるんだ? こいつは』そう突っ込むと

 ティアも慌てたふためいて、

「ち、違うわ! ヨセフさん! それは違う!! 私たちはそのお互いの方向性で揉めていたといいますか......」

 顔を真っ赤にしながら俺に同意を求めそういっていたので、俺は頷くと、ヨセフは再びため息をついた。

「聖女様まで...... まぁ、勝手にしてください。ですが、惚気を道中聞かされるのはごめんです。もう勘弁してくださいよ」

 そういってモココを止める。

「ちょうどいい具合で、目的地に到着です。大元帥、この場所はどうでしょう」

 そういいながらヨセフは辺りを見渡す。相変わらずティアはあたふたしているが、俺もそうするわけにはいかないので、俺も周囲を見る。
 左右は鬱蒼とした森でこの通路を北部の連中は通らざるを得ない場所だ。

「いい場所だ」
「はい、大元帥。この場所に砦を築くのがいいかと」
「道幅は馬車10台分もないか......」

 となればタイタンのような巨大な召喚獣は不適切だな。
 なるべく飛べる召喚獣や小さいものがいいだろう。

「はい、大元帥」

 ヨセフは表情でどうするか尋ねているので、俺は頷く。

「じゃあ、さっそく砦を作るとしよう」

 俺は携えていた天剣を抜くと、左の鬱蒼とした森に軽く一振りする。
 本当に軽く一振り。誰もが見える速度で剣を振ると、一部の区画だけ切り株がいくつもできている。

 さすがは天剣。
 どういう理屈でこれほどの出力ができるのかはわからないが、名前の通り天からの剣って感じだ。
 俺は久しぶりの感覚に驚きつつも、倒れている木を魔力によって近くに運ぶ。

「よし! あとは木の砦を作るだけだな」
「私も手伝う?」
「ああ、頼む。帝国兵が宿泊できる程度の砦でいい」

石材はこの辺りには見当たらないし、狭いこの道では木程度で十分だ。

「わかったわ」

 ティアはそういうと、魔法陣をいくつか書いている。
 ピモットだ。ピモットは膝よりも小さい人型精霊で、主に人間の手伝いをしてくれる。
 当然、その存在を見つけ出し、倒さないと魔法陣は使えないのでティアも倒したということだろう。

 召喚されたピモットはティアの前にテクテク歩き、集まり整列している。
 そんなかわいらしい召喚獣たちにティアはしゃがみこんで、どうすればいいか命令を出していた。

「いい、この木を適切な長さにカットするから、あなたたちは組み立ててちょうだい。できる?」
「ピモ!」

 変な掛け声を出すピモットとティアの笑っている様子に、なんだかホッとした感じを覚えつつ、俺もやらなければいけないことがあるので、杖を取り出す。

「さて、俺はこれから召喚獣を道に配置していくが、ヨセフはどうする?」

 俺は手を額に当てながら、首を横に振っているヨセフにそう問いかけると、ヨセフは軽くため息をついた。

「魔法というものは、なんでもありですね......」
「まぁ、そうかもな」
「しかし、そんな魔法を監視するため、私がいるのですから、当然同行します」
「言い方、おかしくないか」
「別にそんなことはないですよ。気にしすぎです、大元帥」

 目を見ずに答えるヨセフに若干の怪しさを覚えつつ、俺は砦の外に魔法陣を描くために、ティアたちから距離をとる。

 さて、どんな召喚獣にしようか。
 俺は自分が召喚できる召喚獣を脳内で再生し、適切な召喚獣をいくつかピックアップする。

 まずはそうだな。砦の近くということで、守護的な役割がいいだろう。
 ならばゴーレムだ。

 俺はなるべく小さくなるように魔力を調整しながら、魔法陣を描く。

「それはなんですか?」
「ゴーレムだ」
「何体配置する予定で?」
「馬車5台分の間隔で4体」
「まぁ、ここまでなら普通の魔法使いですね」

 魔法陣を眺めながら、そういうヨセフに若干イラっとしてしまう。
 俺たちは打ち解けたんじゃないのか? いや、もともとの性格なのだろうか?
 悪い奴ではないんだが。

 俺はヨセフを無視して、次の魔法陣を左右の森に描く。
 砦を無視して、強引に侵入してくるかもしれないからな。
 そんなことをすれば行軍がかなり遅れるが、用意をしておいたほうがいいだろう。
 どうせ、道から来ても発動するし。

 俺はフェンリル、狼の召喚獣を召喚するために魔法陣を描く。
 こいつならば素早いし、森の中でも簡単に動き回れるはずだ。

 こいつらを左右で12体ほど用意しよう。

「さて、並みの魔法使いのレベルを超えましたね。さすがです」

 さっきとはうってかわって、褒めるヨセフに俺は驚いて後ろにいるヨセフを見るために、振り返っていた。

 ヨセフはそんな俺を見て、眼鏡をくいっとあげ、怪訝そうにしている。

「どうしたんですか、大元帥。さあ、始めましょう」


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