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第39話 クルザ弱体化計画は始まる
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俺たちは北部に魔法陣を展開するときのように徹夜で行動していた。
モココに乗り偉大壁まで移動したり、門が遠い壁を浮遊魔法で飛び越え、ようやくクルザ領内についたと思う暇なし、そこから近くの町へと睡眠なしで移動した。
それもすべては敵の親玉がアラン・ウォードが捕らえられたと気づく速さが未知数のため。
アランが待っていたのはたったの数日だろうが、親玉が早く気づく可能性も考慮しなければならない。
油断は禁物というやつだ。
弱体化する前にクルザ魔法騎士部隊との戦闘は絶対に避けたい。
というわけで、俺たちはクルザで一番北にあるマーネ地方にきている。
マーネ地方は隣接している田舎地方のリースと違い、一番重要な地方であるからだ。
マーネは帝国との国境線全てに隣接していて、その地政学上、帝国魔法騎士部隊がたくさん中央から派遣されている。
だから、この地を最優先するべきなのだが、やはりというかなんというか俺たちが来たライアの町は酷い有様だった。
食料がないから住人は自足自給の生活をしなければならず、魔法照明は切れ、人はあまりいないし、閉店しただろう店がたくさんある。
もうここは色鮮やかなはずのクルザの町という雰囲気はない。
帝国に行く前に立ち寄ったラッティアの村より規模は大きいというのに、ライアの町の佇まいは悲しいほどだ。
だというのに、豪華な刺しゅう入りの服を着て、杖を携え、昼間からビールを飲める連中もいる。
魔法騎士部隊だ。
魔法騎士部隊は王都学院を卒業した生徒のみが成ることが許されている貴族職だが、その実はほとんどが貴族の親を持つ子供だ。
つまり、大昔から貴族連中の苗字は変わっていない。
これもヨセフが言っていたクルザ中心思想というやつなんだろう。
俺は変装用のフード付きマントからティアの顔を覗き込む。
同じく黒いフードを被っているティアは俺の視線に気づくと、
「ど、う、す、る、の?」
なぜか声を出さずに、口パクをしている。
そんなティアが面白すぎて吹き出しそうになると、ティアは慌てて俺の口を塞いでいた。
「なにも口パクじゃなくても」
俺はティアの手を離すとそういう。
「だって! 私、初めてなのよ?」
金髪がチラチラフードから見えるティアはむっとしている。
なんだろう、ティアがかわいく思えてきた。
そんなことはどうでもいい。
「ごめん、ティア。それと......」
俺は冷静を装いながら続けて話す。
「この街を見る限り、マーネの住人は反乱さえ起こせないようだ。だから、予定していた作戦でいこう」
俺たちはクルザに来るまでの間作戦を考えていた。
もし仮にマーネで反乱がおこっていたのなら、マーネ弱体化計画は簡単だ。
反乱軍を活用して、弱体化させることは容易だ。
だが、反乱さえ起こっていない今の状況は厳しい。
そこでティアと話していた作戦が役に立つ。
クリスタル教会を利用するという手だ。
教会なら聖女であるティアの言うことは絶対に等しいから協力してくれるはずだ。
協力してくれそうな住人を見つけてもいいのだが、なるべくリスクになることは避けたいからな。
そうして、この田舎町であるライアから徐々に地方都市マーネリアに迫るという作戦だ。
「わかった! でも、中央から派遣されている貴族たちから爵位をはく奪することはできないんじゃない?」
テーブルに膝をつき、手で口元を隠しながら小声でそう囁くティア。
そんな必死になっているティアが可笑しくて笑いがこみあげてくるが、必死に抑えつつ、俺は頷く。
王都や王と周辺のエリート地域から何らかの理由により派遣された貴族は、名誉は傷つけられても、高級貴族出身の奴らの爵位をはく奪することはほぼ不可能だ。
地方であるマーネで起こったことなんて些細なことであるし、金や領地すらも奪えないからな。
だから、俺もその点だけは困っていた。
左遷させられた、もしくは教育のためマーネに来た高級貴族共の爵位を剥奪させることは難しい。
となると、最終手段として残るのは戦闘による殺害、もしくは拘束。
だが、拘束して捕虜として扱うには食料が不可欠。
貴族共は支給された食料があるだろうけど、それはこの街の住人に分け与えたいが......
「どうしたのジーク?」
ティアの不安そうな声をきいて俺は結論をいつの間にか出していた。
なぜだろう。
死なせるのは流石に俺の権利を超えている。住民には悪いが。
「いや、なんでもない。とにかく、クリスタル教会に行こう」
俺は席を立ち、「ならいいんだけど」そう言っているティアの手を取り踵を返す。
だが、酒場の高級シートで酒を飲んでいた貴族共の声が聞こえてきて、俺は足を止めた。
モココに乗り偉大壁まで移動したり、門が遠い壁を浮遊魔法で飛び越え、ようやくクルザ領内についたと思う暇なし、そこから近くの町へと睡眠なしで移動した。
それもすべては敵の親玉がアラン・ウォードが捕らえられたと気づく速さが未知数のため。
アランが待っていたのはたったの数日だろうが、親玉が早く気づく可能性も考慮しなければならない。
油断は禁物というやつだ。
弱体化する前にクルザ魔法騎士部隊との戦闘は絶対に避けたい。
というわけで、俺たちはクルザで一番北にあるマーネ地方にきている。
マーネ地方は隣接している田舎地方のリースと違い、一番重要な地方であるからだ。
マーネは帝国との国境線全てに隣接していて、その地政学上、帝国魔法騎士部隊がたくさん中央から派遣されている。
だから、この地を最優先するべきなのだが、やはりというかなんというか俺たちが来たライアの町は酷い有様だった。
食料がないから住人は自足自給の生活をしなければならず、魔法照明は切れ、人はあまりいないし、閉店しただろう店がたくさんある。
もうここは色鮮やかなはずのクルザの町という雰囲気はない。
帝国に行く前に立ち寄ったラッティアの村より規模は大きいというのに、ライアの町の佇まいは悲しいほどだ。
だというのに、豪華な刺しゅう入りの服を着て、杖を携え、昼間からビールを飲める連中もいる。
魔法騎士部隊だ。
魔法騎士部隊は王都学院を卒業した生徒のみが成ることが許されている貴族職だが、その実はほとんどが貴族の親を持つ子供だ。
つまり、大昔から貴族連中の苗字は変わっていない。
これもヨセフが言っていたクルザ中心思想というやつなんだろう。
俺は変装用のフード付きマントからティアの顔を覗き込む。
同じく黒いフードを被っているティアは俺の視線に気づくと、
「ど、う、す、る、の?」
なぜか声を出さずに、口パクをしている。
そんなティアが面白すぎて吹き出しそうになると、ティアは慌てて俺の口を塞いでいた。
「なにも口パクじゃなくても」
俺はティアの手を離すとそういう。
「だって! 私、初めてなのよ?」
金髪がチラチラフードから見えるティアはむっとしている。
なんだろう、ティアがかわいく思えてきた。
そんなことはどうでもいい。
「ごめん、ティア。それと......」
俺は冷静を装いながら続けて話す。
「この街を見る限り、マーネの住人は反乱さえ起こせないようだ。だから、予定していた作戦でいこう」
俺たちはクルザに来るまでの間作戦を考えていた。
もし仮にマーネで反乱がおこっていたのなら、マーネ弱体化計画は簡単だ。
反乱軍を活用して、弱体化させることは容易だ。
だが、反乱さえ起こっていない今の状況は厳しい。
そこでティアと話していた作戦が役に立つ。
クリスタル教会を利用するという手だ。
教会なら聖女であるティアの言うことは絶対に等しいから協力してくれるはずだ。
協力してくれそうな住人を見つけてもいいのだが、なるべくリスクになることは避けたいからな。
そうして、この田舎町であるライアから徐々に地方都市マーネリアに迫るという作戦だ。
「わかった! でも、中央から派遣されている貴族たちから爵位をはく奪することはできないんじゃない?」
テーブルに膝をつき、手で口元を隠しながら小声でそう囁くティア。
そんな必死になっているティアが可笑しくて笑いがこみあげてくるが、必死に抑えつつ、俺は頷く。
王都や王と周辺のエリート地域から何らかの理由により派遣された貴族は、名誉は傷つけられても、高級貴族出身の奴らの爵位をはく奪することはほぼ不可能だ。
地方であるマーネで起こったことなんて些細なことであるし、金や領地すらも奪えないからな。
だから、俺もその点だけは困っていた。
左遷させられた、もしくは教育のためマーネに来た高級貴族共の爵位を剥奪させることは難しい。
となると、最終手段として残るのは戦闘による殺害、もしくは拘束。
だが、拘束して捕虜として扱うには食料が不可欠。
貴族共は支給された食料があるだろうけど、それはこの街の住人に分け与えたいが......
「どうしたのジーク?」
ティアの不安そうな声をきいて俺は結論をいつの間にか出していた。
なぜだろう。
死なせるのは流石に俺の権利を超えている。住民には悪いが。
「いや、なんでもない。とにかく、クリスタル教会に行こう」
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だが、酒場の高級シートで酒を飲んでいた貴族共の声が聞こえてきて、俺は足を止めた。
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