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第45話 ライアの騎士ギースの末路2
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そんな天井にはリスティアがいて、合図を待っていた。その合図とは、アーシャが『えい!』と叫んでいたら、天井から岩を降らすという作戦だ。
もちろん、高位な魔法を発動させればギースは死んでしまうので、怪しまれずにかつギースが防げる程度の岩だ。
アーシャは成功を祈るように杖を抜き取ると、杖をぶんと振り、その言葉を言う。
その瞬間、天井をぶち破り掌ほどの大きさの岩がギースの頭めがけ降り注ぐ。
余裕の表情でいたギースはそれを見て、再度笑いだす。
「なかなかいい魔法だ。だが、なぜわしが騎士であるか忘れたか。魔法が使えるからだ!」
ギースは軽く握っていた杖をくいっと降ると、ギースの頭上にはたちまち岩の壁が出来上がっていた。
刃物のように薄く、ギースの頭部ほどの大きさしかない壁だが、降り注ぐ岩にはびくともしない。
岩と岩が激しくぶつかり合う音が聞こえてくる中、ギースはアーシャに向き直った。
「終わりか?」
「いえ! これからです!」
アーシャは中年の男を見ると、中年の男は決意したかのように頷く。
「やるしかないんだ。やるしか!」
決意が籠った声を出した男は、杖を取り出すと、ギースめがけて小さな火玉を繰り出す。
だが、そんなものは当然ギースには利かない。魔力の差だけでなく、練度も低い技をくりだしたところで、容易に避けるられる。
だが、ギースの足は思っていたように素早く動かない。
ギースはその時になって、足を怪我したことを思い出していた。
「ああー!! くそ! どいつもこいつも、面倒なことをしやがって」
ギースは杖を軽く握ると、痛みで杖を放しそうになる。
だが、堪えて杖を振る。
すると、今度は火球を打ち消すように水が杖の先から直線状に出ていた。
それは火球を楽々と消すと、中年の男の腹にヒットする。
男はそれを受けて腹を抑えていた。
「ダメだったか......」
悔しそうにつぶやく男に対してアーシャは
「いえ! 十分じゃないですか! さっきのギース騎士の行動を見ましたか。最初は避けようとした。でも、怪我をしていて避けられない。次に魔法を繰り出そうと杖をふるった。ここですよ! 明らかに速度が遅いです! 繰り返せば私たちでも勝てるんです!」
アーシャは希望を与えるようにニコリとほほ笑むと、
「たしかに! 今こいつは確かに遅かった」
「そういわれてみれば...... でも、こんなの卑怯なんじゃ」
「そんなことあるか!! 今までしたことを考えればどっちが卑怯なんて考える筋合いもない!」
「そうだわ! 中央がお認めになるくらいにボコボコにしてやりましょうよ!」
町人たちは一丸となっていた。
そんな町人たちに恐怖を覚えたのか、ギースは焦った表情をしている。
「おい、まて! 怪我人だぞ? そううまくことが運ぶわけがないだろう! 騙されるな!」
「傷をつけたのは血の夜明けです。誰が、真実を話すと思いますかー」
アーシャは心の底から晴れやかだ。
ああ、不可能が可能になる。
まるで何かが肺辺りからパチンとはじけ、そのはじけた汁が全体に拡散していくような開放感を覚えていた。
それは町人たちも同じだった。
一つの目標を持った集合体というのは恐ろしいほどに強い。
酒場は希望のような明るさや、開放的な怪しい空気に包まれていた。
未だに降り注いでいる岩がゴツゴツと岩の壁にぶつかる音だけが聞こえてくる。
そんな状況の中、先手を取ったのはギースだった。
ギースはどうせ攻撃されるのなら、攻撃してしまえと考えて痛む手で杖を振る。
「酒場ごと燃やし尽くしてやるわ!! お前らごときが勝てるわけがないだろう!!! 阿呆が!」
杖の先から現れた炎が見る見るうちにギースを取り囲み、炎の先端は天井まで達し、焦げ臭い匂いが町人たちの鼻を刺激している。
そんな圧倒的な力量差を見せつけられた町人たちの表情は再び暗くなっている。
勝てるわけがない。
皆がそう思った時だ。
炎の壁はそれと同程度の水の円によって奇麗に消え去っていた。
それは一瞬の出来事で、ギースも町人もいったい何が起こっているのかわからなかった。
リスティアがやったことだと、唯一わかっていたアーシャは、
「クリスタルも応援してくれてるかも!!」
適当なことを言ったアーシャだったが、町人たちの士気はますます高まる。
「おおー!! これは正義の戦いなんだ! 勝てるぞ!」
「ええ、皆で力を合わせて倒しましょう!」
先ほどと同じ展開にならないように、町人たちは杖を取り出し思い思いの魔法を繰り出している。
それは赤色、青色、黄色、茶色。
酒場中が色鮮やかな魔法照明のように光る。
ゆっくりとギースに近づくそれらを防ごうとしたギースは額に大粒の汗をかきながら、杖を振る。
すると、ギースを取り囲むように床から岩の要塞が高速で出来上がろうとしていた。
が、ギースのくるぶしまで完成したころ、それは一瞬にして崩れ落ちる。
リスティアの水魔法だ。カッターのように鋭い水は一瞬にして、ギースの要塞を破壊していた。
その光景を見てますます士気が高まる町人。焦るギース。
そこからの戦いは一方的だった。
何度作っても崩壊する防御魔法を見てギースは止むを得ず、一つ一つを相殺しようと技を繰り出すが、あまりにも数が多い。
漏れた魔法はギースの肩、足、手に当たる。
痛みでふらつくギース。
だが、止まらない。
町人たちが2回目に繰り出した技は、ギースにこれまた防がれつつも、すべては防ぎきれない。
ギースは痛みで声をあげながら、その場に倒れこんだ。
「そこまでです!!」
アーシャのピンと糸が張ったような声に町人たちは杖をおろす。
「ギース騎士を殺してはいけませんよー! 拘束しておかなければ」
その指示に町人はギースの杖を蹴り、縄で拘束すると、
「さて! これで誇り高き騎士は平民に負けたことになります! でも、それを証明するにはまだ足りません。みんなでギース騎士のお金を山分けし、屋敷を焼き払いましょー!!」
「おおー!!!」
酒場は町人たちの声で、微かに振動していた。
もちろん、高位な魔法を発動させればギースは死んでしまうので、怪しまれずにかつギースが防げる程度の岩だ。
アーシャは成功を祈るように杖を抜き取ると、杖をぶんと振り、その言葉を言う。
その瞬間、天井をぶち破り掌ほどの大きさの岩がギースの頭めがけ降り注ぐ。
余裕の表情でいたギースはそれを見て、再度笑いだす。
「なかなかいい魔法だ。だが、なぜわしが騎士であるか忘れたか。魔法が使えるからだ!」
ギースは軽く握っていた杖をくいっと降ると、ギースの頭上にはたちまち岩の壁が出来上がっていた。
刃物のように薄く、ギースの頭部ほどの大きさしかない壁だが、降り注ぐ岩にはびくともしない。
岩と岩が激しくぶつかり合う音が聞こえてくる中、ギースはアーシャに向き直った。
「終わりか?」
「いえ! これからです!」
アーシャは中年の男を見ると、中年の男は決意したかのように頷く。
「やるしかないんだ。やるしか!」
決意が籠った声を出した男は、杖を取り出すと、ギースめがけて小さな火玉を繰り出す。
だが、そんなものは当然ギースには利かない。魔力の差だけでなく、練度も低い技をくりだしたところで、容易に避けるられる。
だが、ギースの足は思っていたように素早く動かない。
ギースはその時になって、足を怪我したことを思い出していた。
「ああー!! くそ! どいつもこいつも、面倒なことをしやがって」
ギースは杖を軽く握ると、痛みで杖を放しそうになる。
だが、堪えて杖を振る。
すると、今度は火球を打ち消すように水が杖の先から直線状に出ていた。
それは火球を楽々と消すと、中年の男の腹にヒットする。
男はそれを受けて腹を抑えていた。
「ダメだったか......」
悔しそうにつぶやく男に対してアーシャは
「いえ! 十分じゃないですか! さっきのギース騎士の行動を見ましたか。最初は避けようとした。でも、怪我をしていて避けられない。次に魔法を繰り出そうと杖をふるった。ここですよ! 明らかに速度が遅いです! 繰り返せば私たちでも勝てるんです!」
アーシャは希望を与えるようにニコリとほほ笑むと、
「たしかに! 今こいつは確かに遅かった」
「そういわれてみれば...... でも、こんなの卑怯なんじゃ」
「そんなことあるか!! 今までしたことを考えればどっちが卑怯なんて考える筋合いもない!」
「そうだわ! 中央がお認めになるくらいにボコボコにしてやりましょうよ!」
町人たちは一丸となっていた。
そんな町人たちに恐怖を覚えたのか、ギースは焦った表情をしている。
「おい、まて! 怪我人だぞ? そううまくことが運ぶわけがないだろう! 騙されるな!」
「傷をつけたのは血の夜明けです。誰が、真実を話すと思いますかー」
アーシャは心の底から晴れやかだ。
ああ、不可能が可能になる。
まるで何かが肺辺りからパチンとはじけ、そのはじけた汁が全体に拡散していくような開放感を覚えていた。
それは町人たちも同じだった。
一つの目標を持った集合体というのは恐ろしいほどに強い。
酒場は希望のような明るさや、開放的な怪しい空気に包まれていた。
未だに降り注いでいる岩がゴツゴツと岩の壁にぶつかる音だけが聞こえてくる。
そんな状況の中、先手を取ったのはギースだった。
ギースはどうせ攻撃されるのなら、攻撃してしまえと考えて痛む手で杖を振る。
「酒場ごと燃やし尽くしてやるわ!! お前らごときが勝てるわけがないだろう!!! 阿呆が!」
杖の先から現れた炎が見る見るうちにギースを取り囲み、炎の先端は天井まで達し、焦げ臭い匂いが町人たちの鼻を刺激している。
そんな圧倒的な力量差を見せつけられた町人たちの表情は再び暗くなっている。
勝てるわけがない。
皆がそう思った時だ。
炎の壁はそれと同程度の水の円によって奇麗に消え去っていた。
それは一瞬の出来事で、ギースも町人もいったい何が起こっているのかわからなかった。
リスティアがやったことだと、唯一わかっていたアーシャは、
「クリスタルも応援してくれてるかも!!」
適当なことを言ったアーシャだったが、町人たちの士気はますます高まる。
「おおー!! これは正義の戦いなんだ! 勝てるぞ!」
「ええ、皆で力を合わせて倒しましょう!」
先ほどと同じ展開にならないように、町人たちは杖を取り出し思い思いの魔法を繰り出している。
それは赤色、青色、黄色、茶色。
酒場中が色鮮やかな魔法照明のように光る。
ゆっくりとギースに近づくそれらを防ごうとしたギースは額に大粒の汗をかきながら、杖を振る。
すると、ギースを取り囲むように床から岩の要塞が高速で出来上がろうとしていた。
が、ギースのくるぶしまで完成したころ、それは一瞬にして崩れ落ちる。
リスティアの水魔法だ。カッターのように鋭い水は一瞬にして、ギースの要塞を破壊していた。
その光景を見てますます士気が高まる町人。焦るギース。
そこからの戦いは一方的だった。
何度作っても崩壊する防御魔法を見てギースは止むを得ず、一つ一つを相殺しようと技を繰り出すが、あまりにも数が多い。
漏れた魔法はギースの肩、足、手に当たる。
痛みでふらつくギース。
だが、止まらない。
町人たちが2回目に繰り出した技は、ギースにこれまた防がれつつも、すべては防ぎきれない。
ギースは痛みで声をあげながら、その場に倒れこんだ。
「そこまでです!!」
アーシャのピンと糸が張ったような声に町人たちは杖をおろす。
「ギース騎士を殺してはいけませんよー! 拘束しておかなければ」
その指示に町人はギースの杖を蹴り、縄で拘束すると、
「さて! これで誇り高き騎士は平民に負けたことになります! でも、それを証明するにはまだ足りません。みんなでギース騎士のお金を山分けし、屋敷を焼き払いましょー!!」
「おおー!!!」
酒場は町人たちの声で、微かに振動していた。
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