【完結保証】宮廷仕えの聖女の護衛は、王や宰相から追放を言い渡される~聖女の護衛の任は表向きの話。平和のために俺は帝国を黄金時代へと導く~

カレキ

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第47話 決意

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貴族を斬り殺した夜。
 ライアの町でひと際目立つ建物。まるでここが田舎町じゃないような錯覚をさせる建物。

 俺たちはそんな建物の前にいた。

「いいですかー! 今夜、私たちはクリスタル団となりました。ギースを倒した私たちは、その象徴であるお金を奪い、屋敷を燃やすことで、中央への意思表示になるのです!」

 アーシャは屋敷の2階、ベランダから俺たちにそう伝えている。
 クリスタル団。そのネーミングセンスはアーシャだが、仕向けているのは俺だ。

 そんなアーシャは操り人形。

 だが、操り人形といっても、初日からここまで完璧に演技してくれるとは思わなかった。
 アーシャの表情は語調とは裏腹に真剣だ。きっとアーシャも思うところがあったんだろう。

「プライドが高い貴族達はこれを鎮圧することなどないでしょう! 魔力が少ない、敗れるはずがない民衆に敗れたなんて恥ですから。じゃあ、次に私たちがやることは、マーネの解放です! 隣町や村の方々に手段を伝え助力し、皆を開放するのですー!」

 その瞬間、町人たちは思い思いの反応をしている。叫ぶ者、相槌をする者、体を動かす者。本当に様々だ。
 だけど、反対するような人はいなかった。

 全員が一丸となって立ち向かおうとしている。これも心理の一つだろう。
 強大な敵に立ち向かうための人類の知恵という感じだろう。

 無敵な魔法部隊へと進化したように、ここにいる町人たちを止められる者などいない。
 魔法照明が様々な色に輝く中、彼らの顔を見てそう思う。

 リスティアもそう感じているようで、俺に微笑んでいる。

「ジークは一体いつからこうなることを考えていたの?」

 意味深な言葉に俺は首を横に振った。

「さて、いつだろうな。わからないな」

 本当にわからない。
 もしかしたら心の奥底でもうすでに計画は出来上がっていたのかもしれない。そんな感覚はあるけど、客観的に判断すれば俺は追放された時点ではわからなかったはずだ。

 本当に自分でもわからなかった。だから首を振る。

「私は、帝国に逃れた時からだと思うな―。そんなジークがちょっと恐ろしいわ」

 ティアはクスっと笑う。

 それを機に待っていましたと言わんばかりに、アーシャは再び口を開いていた。

「ではー! クリスタル団結成を祝って! クルザ貴族達からのマーネ開放のために、前ギース騎士の屋敷を燃やしてその象徴にしましょうー!」

 アーシャは嬉しそうに両手を上げると、ベランダから飛び降りる。
 地面に吸い寄せられるように落ちていくアーシャだったが、大丈夫だ。

 男たちはアーシャを手で受け止めると、屋敷の外に連れ出す。

「火だ!」

 隣にいたこの街の少女は珍しい物を見るような声で言っていた。

 俺は屋敷を見ると、メラメラと燃えている。
 火は屋敷2個分まで高く昇っていて、まるで俺たちを祝福している様だった。

 だが、これではまだ足りない。
 俺はティアを見るとティアは頷く。

 ティアは杖を取り出し振ると、魔法照明のように青色や黄色なんかの色が火に付着し、さらに高い色鮮やかな火柱が出来上がっていた。

 森の木々より高く、遠くに見える山の半分ほどの色鮮やかな火柱。

 この世の物とは思えないような火柱に、町人たちはどよめく。

「な、なんだこれは!!」
「火が色づいている??」
「クリスタルだ! クリスタルを通せば色は変わる!」

 誰かが最後に言い放った言葉に、町人たちはさらに力強く声を上げていた。

 アーシャが宣言した時よりもずっと大きな歓声は、その炎を遠くに広げる様だ。

 それは表現だが、事実、山の半分ほどの大きさの色鮮やかな火柱。
 それを見ることができる町は沢山あるだろう。

 興味が沸いた人がライアを訪れ、話を聞き、さらに話は拡散していく。
 そうやってマーネの町はマーネ貴族から解放され、そうすればナナはこれを遣っているのが俺たちだと、きっと気づいてくれる。

 ナナがどこにいるのかわからない。願わくば、反乱がおこりそうにない裕福な西じゃなくて、南東にいればいいのだが。

 そうすれば、意図を察したナナは必ず同じことをしてくれるはずだ。

 頼むぞ、ナナ。

 俺はそう心の中で呟くと、隣に来ていたアーシャの肩を揺する。

「次、俺たちが現れる頃にはお前は立派なクリスタル団の長だ。頼んだ」
「え? ちょっ、もういくんですか?」
「クリスタル団が動く前にライアの町のような解放された町をいくつか作らないと、ライアの町人たちだけでは無理だからな。時間がない」

 俺がそういうと、アーシャは不安そうな表情で、

「でも! 私、まだ全然話を聞いていないですよ! どうすれば......」
「心配ないよ。アーシャちゃんならきっと団長になれるし、私たちも魔法手紙を送るから!」

 ティアはアーシャを抱きしめた。
 アーシャはそれに戸惑いながらも、抱きしめ返す。

「リスティア様......」
「お願いできる?」

 子供をあやすように言うティアはまるで女神だった。いや、聖女なんだからあながち間違いではないんだが。

「わかってます! でも、不安なだけで」

 アーシャはティアの腕の中から抜け出すと、ガッツポーズをしている。

「でも、やらなきゃいけないんですよね」

 俺たちはそれに頷いた。

「頼んだぞ、アーシャ」
「了解しました! えと......」
「ジークでいい」
「ジーク閣下!」

 俺はアーシャの発言に突っ込まずに立ち去った。
 笑える程度の別れがちょうどいい。
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