18 / 18
交渉と【はぐれ召魔】
しおりを挟む
「なんですって!?騎士団新人のあなたが王宮に出入りしたい!?」
エレナは驚きながらいう。
「そうだ。どうしてもだ」
「王宮は、わたくしのような貴族でさえも用もなしに出入りできる場所じゃありませんわよ。ましてあなたは素性の知れない平民。無理に決まっていますわ」
「だから用を作るんだよ、用を。わかるだろ?」
「わたくしをいいように利用するおつもり?」
エレナは怪訝な表情でこちらを見る。
プライド高き自分に対して信じられないといった様子だ。
「助けてやったろ」
「それはそうですけど…」
「恩を仇で返すつもりか?それともおれを利用するつもりだったのが逆に利用されてしまって、憤りを感じているのか」
「違いますわっ。わたくしは…」
エレナは言いかけてやめた。
そして再び俺に問いかけた。
「目的はなんですの?というかあなたは何者?」
「それを知ってどうするんだよ」
「わたくしはミスーレ家の貴族としてこの国を守る義務がありますわ。あなたが危険人物なら王宮に入れるわけにはいかないですもの」
チッ。
これだから交渉というのは上手くいかない。
俺が無言でいるとエレナは正義感からか、ますますヒートアップしてくる。
「そうわたくしは由緒あるミスーレ家の貴族!この国を、ひいては国民を守る義務があるのですわー」
「…」
「あなたはグイン様の政治についてご不満を持っていたようですから見込みがあると思いましたけど。わたくしを利用するなら話は違ってきますわ」
「なんだ、反乱でも起こす気なのか?」
「ち、違いますわっ!?」
エレナは顔を真っ赤にして否定する。
否定してはいるが、恐らくはそんなもんだろう。
スキだらけの弱小国ゆえに貴族が権力を欲しがる、よくある話だ。
もっとも召喚騎士の存在すら知らなかったエレナがグインに勝てるわけもないが。
「わたくしはこの国を思って」
「いい機会だから言ってやる。この国は終わりだよ、終わり。学生のアクエリアスが騎士団長、副団長は冒険者を掛け持ちしている道楽ぶり」
「なっ…!」
「おまけにエレナ、お前の実力はS級ではない決してな。帝国なら良くてC級だ。つまり帝国とこの国じゃ戦力の偏差値が違い過ぎるんだよ」
「あなたっどういうこと!」
「どういうこともそういうことだ。お前は戦争もなにもしらない、お花畑のお嬢様ってことだよ!」
「~~~!」
ダッ!
そこまでいうとエレナは屈辱の顔をしてその場を去った。
しかし貴族どもも不穏な動きをしてるとなると、いよいよもって君主であるグインは詰みの状態だな。
「そこのお前さん…悪いことはいわん。王宮に行くのはやめておきなされ」
「あなたは」
よく見かける厨房で皿洗いをしているバアさんだ。
今は休憩中、といったところか。
「お前さんも知っての通り、ヴリドラは変わってしまった。近年帝国から独立してしまったのもその証じゃ」
「王宮には危険があると?」
「さよう」
バアさんは俺の横に腰かけ続けた。
「もともとこの国を統治していたグイン殿は、反乱など起こす人ではない。だが一人の少女が王宮に入ってから変わってしまわれた」
「なるほど」
「このままでは、この国はもう…」
バアさんはふーと息をはいた。
「一人の少女か。『はぐれ召魔』の可能性があるな」
「むっ?」
「グインには強力な召魔ヴリドラがついている。それを突破できるものがいるとしたら、同じく召魔を使役する召喚騎士かあるいは召魔単体だ。そこで一人の少女ということは、あるじのいないはぐれ召魔だろう」
「よくわからんが、気をつけなされ」
バアさんはスッと立ち上がりその場を去ろうとした。
「忠告ありがとう。はぐれ召魔のセイレーン」
「…!知っておったか」
「ケタ違いの力は召喚騎士の俺に感知できるんだ。隠していてもな」
「で?どうする?ワシをとらえて帝国に突き出すか?」
「やめておくよ。殺されるのがオチだ」
セイレーンは召喚騎士の間でも有名な『はぐれ召魔』だ。
なぜなら遥か昔、あるじである召喚騎士が死んでからも変わらず忠誠を誓い続け、その後も目立たぬようにどこかで暮らしているという珍しい召魔だったからだ。
とはいえこの目で見るのは初めてだったが。
「とにかく忠告はしたぞえ」
その言葉と同時にセイレーンは消えてしまった。
エレナは驚きながらいう。
「そうだ。どうしてもだ」
「王宮は、わたくしのような貴族でさえも用もなしに出入りできる場所じゃありませんわよ。ましてあなたは素性の知れない平民。無理に決まっていますわ」
「だから用を作るんだよ、用を。わかるだろ?」
「わたくしをいいように利用するおつもり?」
エレナは怪訝な表情でこちらを見る。
プライド高き自分に対して信じられないといった様子だ。
「助けてやったろ」
「それはそうですけど…」
「恩を仇で返すつもりか?それともおれを利用するつもりだったのが逆に利用されてしまって、憤りを感じているのか」
「違いますわっ。わたくしは…」
エレナは言いかけてやめた。
そして再び俺に問いかけた。
「目的はなんですの?というかあなたは何者?」
「それを知ってどうするんだよ」
「わたくしはミスーレ家の貴族としてこの国を守る義務がありますわ。あなたが危険人物なら王宮に入れるわけにはいかないですもの」
チッ。
これだから交渉というのは上手くいかない。
俺が無言でいるとエレナは正義感からか、ますますヒートアップしてくる。
「そうわたくしは由緒あるミスーレ家の貴族!この国を、ひいては国民を守る義務があるのですわー」
「…」
「あなたはグイン様の政治についてご不満を持っていたようですから見込みがあると思いましたけど。わたくしを利用するなら話は違ってきますわ」
「なんだ、反乱でも起こす気なのか?」
「ち、違いますわっ!?」
エレナは顔を真っ赤にして否定する。
否定してはいるが、恐らくはそんなもんだろう。
スキだらけの弱小国ゆえに貴族が権力を欲しがる、よくある話だ。
もっとも召喚騎士の存在すら知らなかったエレナがグインに勝てるわけもないが。
「わたくしはこの国を思って」
「いい機会だから言ってやる。この国は終わりだよ、終わり。学生のアクエリアスが騎士団長、副団長は冒険者を掛け持ちしている道楽ぶり」
「なっ…!」
「おまけにエレナ、お前の実力はS級ではない決してな。帝国なら良くてC級だ。つまり帝国とこの国じゃ戦力の偏差値が違い過ぎるんだよ」
「あなたっどういうこと!」
「どういうこともそういうことだ。お前は戦争もなにもしらない、お花畑のお嬢様ってことだよ!」
「~~~!」
ダッ!
そこまでいうとエレナは屈辱の顔をしてその場を去った。
しかし貴族どもも不穏な動きをしてるとなると、いよいよもって君主であるグインは詰みの状態だな。
「そこのお前さん…悪いことはいわん。王宮に行くのはやめておきなされ」
「あなたは」
よく見かける厨房で皿洗いをしているバアさんだ。
今は休憩中、といったところか。
「お前さんも知っての通り、ヴリドラは変わってしまった。近年帝国から独立してしまったのもその証じゃ」
「王宮には危険があると?」
「さよう」
バアさんは俺の横に腰かけ続けた。
「もともとこの国を統治していたグイン殿は、反乱など起こす人ではない。だが一人の少女が王宮に入ってから変わってしまわれた」
「なるほど」
「このままでは、この国はもう…」
バアさんはふーと息をはいた。
「一人の少女か。『はぐれ召魔』の可能性があるな」
「むっ?」
「グインには強力な召魔ヴリドラがついている。それを突破できるものがいるとしたら、同じく召魔を使役する召喚騎士かあるいは召魔単体だ。そこで一人の少女ということは、あるじのいないはぐれ召魔だろう」
「よくわからんが、気をつけなされ」
バアさんはスッと立ち上がりその場を去ろうとした。
「忠告ありがとう。はぐれ召魔のセイレーン」
「…!知っておったか」
「ケタ違いの力は召喚騎士の俺に感知できるんだ。隠していてもな」
「で?どうする?ワシをとらえて帝国に突き出すか?」
「やめておくよ。殺されるのがオチだ」
セイレーンは召喚騎士の間でも有名な『はぐれ召魔』だ。
なぜなら遥か昔、あるじである召喚騎士が死んでからも変わらず忠誠を誓い続け、その後も目立たぬようにどこかで暮らしているという珍しい召魔だったからだ。
とはいえこの目で見るのは初めてだったが。
「とにかく忠告はしたぞえ」
その言葉と同時にセイレーンは消えてしまった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる