召喚され救世主じゃないと言われたが、復讐の旅でなぜか身体を狙われている

輝石玲

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復讐の旅、開始!

21.兎獣人と獣人の町へ

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 朝、目が覚めるとやけに疲れて喉が乾いていた。

「おはようございます、ヤト。一晩中うなされていましたが、大丈夫ですか?」
「おはよう…って一晩中?ごめん、うるさくて寝れなかった?」
「悪魔なので一日寝ないくらいはどうってことありません。ただ、ヤトが苦しそうだったので夢見が悪かったのかと……」

 心配させたかな。はぁ…俺、うなされてたのか?一体どんな夢を見てたのか全く思い出せない。でも…体が、酷く冷たくなっていく感覚だけがリアルに残ってる。
 なんとも言えない感覚に気だるげになっていると、グルーが俺に軽くキスをした。本当に触れるだけの。

「夢の中でも貴方を守れたら良かったのですが……」
「グルー…」

 たかが悪夢で心配しすぎじゃないか?それも俺は覚えてないし。
 ベッドから降りて顔を洗った。その時にやっと涙の跡に気付いたが…グルーが心配してたのはこれのせいか。目脂めやにが凄いな……。





 ●●●





 広いダイニングで朝食を食べ、リットに今日の予定を聞いた。今日は町に行って仕事をするらしい。リットの仕事は町の見回りをする兵士から報告書を回収して、そこに問題点が書かれてたら解決することらしい。そこに俺も同行してリットに俺がどうな人かを確認してもらう。
 リットが信用してないのは俺の性格とかじゃなくて俺の実力らしい。それで、足の速いリットについて来れるかと力仕事がどれくらいできるかを見たいとか。魔法は獣人には不向きらしいから、魔法がどれだけ使えるかは確認しないらしい。種族ごとに向き不向きもちゃんとあるんだな。

「では、こちらを飲んでください」
「これは?」

 渡されたのは赤い大きめの錠剤。

「変身薬です。人間の姿で町中に出れば喰われてしまいますから」

 あ、そっか…って納得するのもどうかと思うけど、やっぱり人間は食い殺してもいい対象みたいな扱いなのかもな。
 水を貰って薬を飲むと、体が急に熱くなってきた。なんか尻の近くと頭の上の方が変な感じする!もしかして耳と尻尾か?そういえばどんな姿になるんだろうなぁ…。

 他種族への変身にワクワクしていると、突然ステータスが目の前に出てきて『条件クリア』の文字と共に光が目の前に現れた。何だか変な予感がして席から立ち上がると、目の前の光は少しずつ大きくなって弓の形へと変化して行った。あれ、これってもしかして神器の『三日月の弓』じゃ…!
 目の前に浮かぶ光の弓を掴むと、光は弾けて真っ白な弓が姿を現した。ずっしりと重量のある、陶器のような白い弓。月のクレーターを連想するくぼみがシンメトリーに掘られ、白い弦は光を吸収して淡く光っている。

「え……なんで今!?」
「ヤト、それは一体……」
「なんだそりゃ!?」
「えっ…えぇっ……!?」

 三日月の弓って兎の血を飲むヤツだよな!?あ、待って?そう言えば今の俺の姿…感覚でもしかしてと思ったけどやっぱり兎獣人になってる。もしかしてあの薬…。

「…リット、さっきの薬って兎の血とか入ってる?」
「は、はい……」

 やっぱりか!いやまぁ血をそのまま飲むよりはいいけど、普通にビックリした!こんな顕現の仕方でいいのかよ!?

「あー、悪い。兎の血を飲むと弓が現れるらしくてな…。話を戻そうか」
「ひえぇ…人間ではないと聞いていましたが、こんな気配は初めて感じました……。こほんっ、え、えっと…とりあえず変身は出来たので、町に行きましょう!ちなみに変身は二十四時間で解けます!」

 無理矢理進めたリット。いや、なんかごめんって。俺もこんな時に神器が出るとか思ってなかったからさ…。




 ●●●




 とりあえずリットと二人で城を出た。グルーとヴィンセントは流石に留守番だ。まぁ…町に出たら大変なことになりそうだもんな、二人とも。グルーはウサ耳ついたところでパチモン感凄いだろうし、ヴィンセントはこの国の王様だもんな。

「いいですね。ヤト様…こほんっ、ヤトは私の手伝いをしながら仕事の見学をする見習いということでお願いしますよ。しばらくの間は口調も私の真似はしなくていいですが、丁寧な言葉遣いでお願いします」
「はーい」
「もし貴方の実力が不十分だと感じた場合は、しばらくこの国で訓練をして貰いますから!」

 まぁ、弱いヤツに自分の国の王であり大切な家族を任せようとは思わないよな。俺も出来る限り頑張りますか!





 ーーーって、本当に足速っ!ぴょんぴょん進むから追いかけるので精一杯だ!やっぱり変身薬って見た目だけで、能力まで寄るわけじゃ無い。だから俺は素の脚力だけで追いかけないといけないわけだ。
 人を避けてスイスイ進んで行くリットを見失わないように近くにいないとだが、正直めちゃくちゃ足にクる。明日は筋肉痛かな………

「驚きました、本当に着いてくるなんて……。私は兎族の中でも速い方なんですよ?」
「や、正直キツイっス……」
「これは…実力者であっても育てたくなりますね………」

 それは褒められてるってことか?伸び代があるのか?もっと強くなれるなら大歓迎だが、俺の独断は良く無いからとりあえず濁しておいた。

「さて、報告書の回収は終わりです。あとはこの中で今解決できること……道の補修は業者を呼びましょう。枯れ木が目立つ…管理者は何をしてるんですか!?後で話を聞きに行かなければ…!それからモンスター討伐…また増えているのですか!?」

 うわぁ…大変そう……。書類と睨めっこしてこれからの予定を立てたリットは、

「行きますよ!」

 とだけ言ってまたすぐに行ってしまった。だから速いって!



 最初に町外れの建物に行った。そこには木材や石材、レンガが積み上がっていて、いかにも職人って感じの人がたくさんいた。

「リット様!どんなご用で?」
「城下町の西側の大通りのレンガが崩れていました。速やかに修復をお願いします」
「あちゃー、またですか」
「西側は特に人や物の流れが多いですから」
「やっぱり新作使っちゃダメですかいねぇ」
「使いたければ審査を通してくださいといつも言ってますよね…。まぁ、希少な鉱石を使ったレンガなど一生通しませんが」

 わぁ…リットがイライラしてる…。そりゃあ大量に使って大量に消費するレンガに希少なものをホイホイ使うのはダメだろうよ。


 次に行ったのは森小屋だ。小屋の周りは綺麗な花が大きく育っている。そこには水やりをする小動物の獣人たち。

「貴方達ッ!趣味のガーデニングの前に仕事なさい!」
「ひゃっ!り、リット様ぁ!?」
「リット様だ、リット様だぁ!」

 あたふたと焦る小動物達。なるほど、仕事サボって花育ててたらそりゃあ木も枯れるよな。見た感じここってあんまり雨降らない国っぽいし。キャーキャーと騒ぐ小さな獣人達にリットは深いため息を吐いた。



 森小屋から少し進んだ先には、キメラの様な複数の動物の特徴を持った大きなモンスターがうじゃうじゃいた。

「はぁ、私は戦闘職では無いのですが…人手不足ですしやるしかありませんよ、ね…………な、何か?」

 疲れ果てているリットの肩を叩き、俺は自分を指差した。ここ!ここに人手あるよ!

「……そうですね。貴方の力を見るのにはうってつけです。それでは協力を…いえ、一人でできるとこまで戦ってみてください。何かあればすぐに私も加勢します」

 よし来た!戦いは得意…とは言えないけど、俺もちょうど試したいことがたくさんあったからな!


 朝に顕現した三日月の弓を…使ってみたいのは山々だが、弓は使ったことないから使い方がさっぱりだ。だから使う獲物は黒曜石のナイフ。
 魔力武装を出来るだけ強くやったらどうなるのか、試してみたかったんだよな!グルーみたいに形がすごく変わるとかあるのだろうか。ワクワクしながら魔力をたくさん注ぐと、ナイフは磁石みたいに俺の手に引っ付いた。形は多少長くなるくらいだけど、やっぱり魔力は多い方が使いやすい。

「さて…それじゃあ行ってくる!」

 そう言ってからキメラの群れに突っ込み、一番手前にいるやつの喉にナイフを刺してそのまま掻っ切った。

「グオォォッ……!」

 一体やられてようやく俺に気付いたキメラは、威嚇か仲間への警告か大声で吠えて俺の方に襲いかかった。一体一体の特徴は違ってぐちゃぐちゃだけど、大きさや大して速くない速度は同じだったから、丁寧に一体ずつ狩って行く。首、頭、関節…斬れるとこはどこでも斬って、返り血を浴びながら確殺して行く。


 ……なんだ、結構あっけない。



 気付けば群れを完全に落とし、一息ついたところで体の節々の痛みに気付いた。しまった…無理に動きすぎたか……。ドーパミン出して誤魔化してたんだろうな、俺の体。

「ヤト様!フラフラじゃないですか……!血もこんなにっ…!は、早く治療を……」
「全部返り血、俺はかすり傷ひとつ無いから大丈夫だ。ただ…少し飛ばしすぎて、疲れただけだ……」

 あーあ、グルーに買ってもらった服が血だらけだ。染み抜きしても残るだろうな……。

「とりあえず城にもど……っ!」
「リット?」
「す、すみません…今日は宿で一泊していいですか…?」
「え?あ、あぁ……」

 突然顔色を変えたリット。俺より顔色が悪いんじゃないか?




 ●●●




 一番近くの宿に行くと、出入り口でストップを掛けられて近くの服屋で俺の着替えを買った。やっぱり血だらけの服はダメか。

 上下白の服と、丈の長いパーカーのような黒いコートを買って宿に入った。顔に付いた血を拭いて着替えていると突然何かが落ちる様な音が聞こえ、そこを見るとーーー


「リット!?」


 リットが膝から崩れ落ち、今にも倒れそうな状態で椅子にしがみついていた。
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