ストレインフルアーズ

姫楽木明日華

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宝石の涙目

魔女の嘘

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「ヘルドレイドが、、、死んだ。」
「は?」
ライはただただ間抜けな声しか出なかった。
「何を言ってるの?ヘルドレイドは生きてるよ。ついさっきまで話してたよ。」
「いや、分かってる。生きてる。``彼奴は´ ´ 生きてる。でも、、、!! 」
「フール、何があったの?何が見えてるの?」
ライはひたすら優しく聞く。それでも、フールの答えは呆然としていて、
「わかんない。ただ、、、俺の記憶じゃないのに、俺の記憶があるんだよ。」
「フール、、、」
「俺のじゃない。でも!!俺の記憶なんだよ!俺の、、、俺の、、、見たことなんだ。知ったことなんだ。経験したことで、嫌でもチラつく現実なんだ。」
「・・・」
ライにはフールが何を言っているかさっぱり分からない。けれども、フールが苦しんでいることは分かる。困惑した手でフールの背中をさする。
「あるはず、、、ないんだ。だって、、、だって、ヘルドレイドは、、、ベディが助けたから。」
「うん。」
「ベディが助けたんだ。だから、この景色は無い。」
「うん。そうだよ。ベディが助けた。」
「うん、、、助けたよ。」
「なんで、、、なんで、、、」
「フール、、、落ち着いて。その記憶はあったとしてもここじゃないから。大丈夫。」
「そ、うだな。」
フールは下げていた顔を上げ、立ち上がる。ライが心配そうに顔を見上げ
「大丈夫?」
「うん。大丈夫。」
ライはフール涙を拭うと、
「嘘つくな。お前だいぶ弱ってるだろ。」
「はは」
乾いた笑いで誤魔化そうとするが、ライにデコピンを食らった。
「笑って誤魔化すな。」
また涙を指で拭う。
「ガキみたいだな。俺。」
「今更だろ。」
「ありがとう。今日は、このまま寝るよ。その方がお前らも安心だろ。」
「お、言わなくても分かってくれるなんて、嬉しいねぇ。」
少しふざけたように言うライにフールは返す。
「まぁな。お前らの事はいちばんよく分かってるつもりだから」
「はいはい。じゃあおやすみ~。」
「うわ!」
フールをベッドに押し込んで部屋を出る。
「雑!!」
ライは楽しそうに
「はいはい。ちゃんと休めよ~。」
そう言って、扉を閉める。
下に戻ると、ヘルドレイドとコールがいた。ベディの姿が無く、キョロキョロ見回していると、ヘルドレイドが
「ベディならお風呂行ったよ。フールはどうだった?」
「そう。取り敢えずの寝かしてきた。わかんないけど、だいぶ弱ってたよ。」
「フール。いつも。言わない。悪い。癖。」
コールが頬を膨らます。ヘルドレイドもライも思っていることは同じだった。フールは一番大事で苦しむことは言わない。それがヘタレなのか、優しさなのか、弱さなのか分からないが、一人で苦しめば済む。という精神をやめて欲しい。ベディが来てから多少はマシになったが、それでも、長年の癖は抜けない。仕方が無いと言えばそれまでだが、生憎ここにいるベディも含めて四人はそこまでフールの事を思っていないわけが無いので、済ますわけが無い。もっと端的に言えば、フールのことが大好きなので、苦しんでいたら力になりたいと思ってる。
「ほんと、フールには困っちゃうよね。」
ヘルドレイドが肩をすくめる。
『ヘルドレイドが、、、死んだ』
ライは先程フールが言っていた言葉を思い出してヘルドレイドを見つめる。
「何?ライ。俺の顔になんか付いてる?」
キョトンと首を傾げるヘルドレイドを見ていられなくなって、たまらず目を背けてしまう。
「いや、なんでもない。」
(冗談でも、そんな世界知りたくない。)
無意識に拳を握りしめるライ。
扉が開き、ワイシャツ姿のベディが入ってきた。
「ライ様!フール様は大丈夫でしたか?!」
ライに駆け寄って心配そうに見つめる。
「どうだろ。取り敢えず寝せてきた。」
「・・・ライ様、、、フール様は大丈夫ですよね?居なくなったりしませんよね?!」
ベディは今にも泣きそうな顔で縋り付く。
「大丈夫。居なくなったりはしないよ。俺達がさせない。」
「はい、、、。」
「ベディは何が心当たりは無い?」
なぜ自分がこの質問をしたのか分からない。ただ、何となくベディなら何か知ってるように思えてしまった。
「心当たりは、、、ないですが、最近フールが弱っているように思えます。まるで、``何かの影響を受けたように´ ´ 突然弱り始めたような気がします。」
ヘルドレイドがベディの言葉になにか思い出したように口をついた。
「そういえば、、、セライラがフールの体に誤差みたいなのがあるとかなんとか言ってた気がするけど、、、それと関係あるのかな??」
「言ってた。ね。」
ベディが誤差という言葉に反応した。
「誤差?」
「どうしたの?ベディ。」
ヘルドレイドが聞くと、少し涙目になって、
「いえ、なんでもありませ、、、ん。」
ミルラと名乗った魔女のことを思い出す。
(あの人、、、過去の私と言った?過去とは何?一度もあの人と会ってない。過去の私も助けたいと言ったの?それに、誤差ってまさか私がヘルドレイド様を助けたのが関係あるの??)
ぐるぐる考える。
愛して。
「っ!!」
耳を覆う。
三人が疑問に思い、呼びかける。
「ベディ?どうしたの?」
「ベディ。」
「大丈夫?」
愛して。
後ずさり、尻もちを着いてしまう。
やっと、聞こえた。
愛して。
「み、皆さんには、、、声が聞こえないんですか?!」
「声。?。聞こえ。無い。」
耳を塞がないで。聞いて。
「今!聞こえないんですか?!」
愛して。ちゃんと聞いて。
「すごく苦しい声です!」
お願い。夢にしないで。
「悲しい、声!」
ライ様が、、、
だんだん声が遠くなってゆく。
「辛い声、、、!」
コール様、、、き、、、あっ、、、たすけ、、、
ぱったりと聞こえなくなった。ベディは息を切らして三人を見た。困惑の色を浮かべながら自分を見ている。
「はぁ、はぁ、」
「大丈夫?」
ヘルドレイドがベディ脇にしゃがみ、肩に手を伸ばす。ベディの震えた小さな手がヘルドレイドの手を掴み、握りしめる。
「よかった、、、。」
「大丈夫?」
もう一度繰り返す。
「はい。大丈夫です。もう平気です。」
「ベディ、、、」
ヘルドレイドは顔を歪める。
「ヘルドレイド様、、、もう、居なくならないでください。」
自然とベディの口から出た。ライは少し笑って、
「居なくならないよ。誰も、かけないよ。」
ベディの沈んだ目がまた輝き出した。
「はい、、、。変な事を言ってごめんなさい。」
少ししんみりした雰囲気にコールが手を叩く。
「もう。寝よ。みんな。最近。忙しい。疲れ。てる。おやすみ。する。」
そう言って立ち上がり椅子を戻す。
「そうだね。夢魔である僕らにだって、休息である睡眠は必要不可欠だ。それに今日見れなくても、明日には見えることがあるかもしれない。」
ライが気休めに、ベディとヘルドレイドを納得させる。
「はい!今日はもうおやすみ!!」
二人の背中を押して互いの寝室に行かせる。
「うお!お、おやすみ、、、。」
「おやすみなさい、、、。」
二人は顔を見合せて、納得のいかないままに部屋へ行かされた。
電気のスイッチを消すと、コールが
「一番。納得。行って。ないのは。ライ。でしょ?」
「まぁね。コールは頭が悪いのに、目の付け所がいいから困っちゃうよね。」
「知らない。今。さら。ライ。が。一番。苦しむ。そう。見える。」
月明かりの差し込む窓の遮光カーテンを閉める。部屋が真っ暗くなって、
「そんな事は、、、あるかもね。でも、大丈夫だよ。みんなが居るからね。」
「でも。僕。達が。苦しめ。てる。ように。見える。」
「そんな事ないよ。」
「そう。」
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ライは自分の部屋もとい、今は使われなくなった客室のベッドに寝っ転がった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!疲れたー。もう、みんななんなんだよぉー」
(あ、風呂入り忘れた。まぁ、朝入ればいいか。)
ワイシャツのボタンを外して、シャツを脱ぐ。中のティーシャツを脱いで、ライの細くたくましいからだが現れる。そのまま洗面台の前に行き、別のシャツを取ろうとした時、ふと、鏡に映った横腹の傷跡が目に入る。

ドレス姿の騎士に剣を突き立てられ、鎧に組み敷かれながら無力さに打ちひしがれる。
短い肩までの黒髪垂らし悲しそうな、憐れむような、苦悶の表情を浮かべる。
「っ、、、」
剣を刺された所に熱が集まり、じわじわと服を濡らしてゆく。触ることさえ怖い剣をぬこうと手に力を入れても、ビクとも動かない。
「お前は、」
騎士が口を開く。
「何ゆえ、おのが間違えを受け入れない。」
痛みに耐えながら幼いライは言う。
「ま、違え?」
「受け入れたくば罪を赦せ。幾度も間違え、誇れ。」

「罪を赦すってなんだよ。」
タオルだなのシャツを取って着る。
(めんどい。もう、何もかも明日でいいや。)
ベッドに潜り、ふかふかの布団に体を預け、目を閉じる。
(今日は大分変な一日だった。
ジンテーゼ家の処刑に立ち合うわ、テュミルが変なこと言い出すわ、変なこと言い出すと言ったら、フールとベディもそうか。二人ともヘルドレイドになにか関係してそうだったけど、、、)
「ベディがヘルドレイドを助けたってなんだ?」
記憶を辿って、お菓子の魔女とヘルドレイドが対峙した日を思い出した。
「お菓子の魔女、、、彼奴が襲撃して来た日は何もかもが変だったな、、、」
(ベディの行動、まるで未来が見えてるみたいな、、、まさか!!)
ノイズと共に頭に激痛が走る。
「っ!!何、これ!!」
布団の中でうずくまると、直ぐに納まった。
そのまま気絶するように眠った。
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「ライ様、、、!ライ様!」
ベディの声と共に目が覚める。
「ん、、、ベディ?もう、朝?」
「はい。朝です。」
「はは、僕寝坊しちゃった?」
「いいえ。フール様とコール様は起きていません。」
「そう。」
ベディが不意に、ライを抱きしめる。
「何?」
「ライ様、大丈夫ですか?お疲れのように見えて、、、その、勝手な事を、、、」
ライは少し焦った。自身をりっしてベディを抱きしめた。
「全く!俺の事を心配するのは嬉しいけど、警戒心がないのは困る!!」
行き良いよく起き上がって、ベディの首筋を甘噛みする。
「きゃっ!ライ様!くすぐったい、です」
弱々しく言うベディに立てた歯を強める。
「っ、、、」
``尖った歯が´ ´ ベディの肩に小さく血だまを作り壊れてライの口の中へ入ってゆく。小さく細い血でも食うことの少ないライには十分で。
歯を抜いて、まだ出る血を舐めとる。口の端からこぼれ落ちる血を親指で拭う姿は艶めかしくて、いやらしくて、見とれてしまうほどに、かっこよくて。見ているベティが赤面してしまう。
「ライ様、もう、大丈夫ですか?」
「ん?あぁ!うん!ごめんね!痛かったね!!すぐ手当する!」
ベッドから立ち上がり、ガーゼを持ってくる。
ポツンとベッドの上に一人になったベディは赤くしたままの顔を押さえる。
(ふえええええぇぇ!!!ドドドドどうしよう!!なんだかココ最近いえ!病院から帰ってきてからというもの!フール様もライ様もヘルドレイド様もコール様もかっこよくて思うんですよ!!元々かっこいいですけど!!顔に出ないようにするのに精一杯で!!うぅ、、、!どうしよう!!ドキドキつたわってないかな?!大丈夫かな?!)
実はずっとときめいていた。
「た、食べられちゃった、、、」
肩をしびれさせる痛みすらもライ様が着けたものだと思えば愛おしく感じてしまうほどに重症だった。自分でも分かっていた。これは異常だ。たまたま、今更、フール達の魅了が自分に伝わってきたのだ。そう思う事にした。
戻ってきたライに大人しく手当される。
「ごめんね、、、ベディ。痛かったよね。」
「ふぇ!い、いえ!大丈夫ですよ!私、痛いの慣れてますから!!」
痛みになれてる、その言葉に力が入る。
「慣れちゃダメだろ!」
「っ!」
「あ、ごめん。」
「いえ、私の方こそごめんなさい。不謹慎でした。」
「いや、大丈夫。やっぱり俺は疲れてるな。ごめん、、、。」
自分を責めるように俯くライ。その姿を見てベディは頬をふくらませた。
「むー!」
「えっ?べ、ベディ?」
ベディはライの頬を両手で包んでいつもライがするように言う。
「ライ様!!」
「はい!」
ベディの突然の大声につられてしまった。
「私はライ様が大好きです!」
「え?!うん、、、?」
「だからライ様がお辛かったら私も力になりたいです!」
「・・・」
「私が傷ついてもダメだと言ったのはライ様です!なら、そのライ様が傷つくのはもっとダメです!!」
「・・・」
あまりに真っ直ぐな眼に言い返すことが出来なかった。
そして、少し、フールの気持ちがわかった気がした。少し弱ってる時にこんな真っ直ぐな目をむけりたら、蔑ろにされてきた自分達は目を逸らしたくなってしまう。どれだけ逸らしてもベディは見続けるのは分かってるのに。そう思うと、あながちフールのヘタレも間違ってないのかもしれないなんて思ってしまうから、自身が弱っているんだなとつくづく思う。
「そうだね。ありがとう。じゃあ、困った時に頼ろうかな。」
ベディの手を頬から離して、
「ライ様、、、」
心配そうにライを見つめるベディ。ライは何かが吹っ切れたように笑いかけた。
「ベディ、ヘルドレイドに風呂入ってから行くからそれまで準備よろしくって言っといて。」
「わ、わかりました!」
そう言って、ライは部屋を出ていった。1人残されたベディは少し悲しそうに呟いた。
「ライ様、、、大丈夫かな?」
(そんな事を思う資格は、、、私には、、、きっと、、、)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「アレ?ライじゃん。珍しいな。」
「フールこそ。この時間に起きてるなんて珍しいね。」
「まぁな。」
湯船に浸かる。フールの隣に座って、互いに向き合わずに沈黙を流す。
互いに視線を幾度か合わすが、喋りは出さない。この意味の無いやり取りに痺れを切らして、フールが話しかける。
「なんだよ。」
「・・・」
「いい加減無意味な探り合いはやめようぜ。どうせ、昨日の事だろ?聞きたいのは。」
「違う。」
真逆の応答に少し動揺する。
「じゃあなんだよ。」
ライは少し言いずらそうに水面を見ると、意をけして、フールを見る。
「なぁ、
ベディの血の味からお前の味がするんだ?」
フールは目をぱちくりとさせて、しかめた。
「は?何言ってんの?」
「いや、だから、、、」
「意味はわかるよ。つか、ベディのこと食ったのかよ。」
「食べてはいないよ。血は飲んだけど。」
「それを食ったって言うんだよ。」
「うん、、、。」
「だいたい、ベディの血が俺の味なのは、、、アレ?」
「ん?」
「いや、俺、ベディに加護を与えたっけ?」
「俺は見てないけど。」
「だよな?``所有の鎖´ ´ は付けたけど、加護は与えてない、、、気が、、、」
「・・・」
「・・・」
少し沈黙が流れたあと、フールは
「っあああああぁぁぁ!!!」
「うおおぉ!びっくりした!いきなり大きい声出すなよ!! 」
「あ、ごめん。」
「別にいいけど、、、どしたの?」
「いや、考えても変な事ばっか思い出してんのかわかんないけど、出てくるじゃん!」
「まぁ、そうだな。」
「だから、考えんのやめる!今解決出来ない疑問ばっかじゃこっちがやられる。」
「そうだけど、、、また極端だな、、、お前は。」
「わかってるよ。でも、一つのことばっかりに目が行き過ぎるのもダメだろ?」
「まぁ。」
「それに囚われて、見なきゃ行けないとこが見えなっちゃ本末転倒だろ。」
「そう、だな。あと、本末転倒使い方違う。」
「そうそう。いつものお前に戻ってきたな。」
「はぁ。全く。」
(そんなんだから、、、お前が読めないんだよ。)
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「遅ーーーーーい!!いつまで風呂はいてんだ!!フールもライも!待つ方の身になれ!!」
「「ごめんなさい。」」
床に正座で座られられて、ヘルドレイドから叱られているフールとライ。
「朝風呂が悪いだとか、言うつもりは無いよ?昨日は色々あってそこはシャーない。それはまぁ許すけど。それで話が盛り上がってのぼせかけるのは如何なものかと思うよ?そこの所どう思いますゥ?」
フールが
「へ、ヘルドレイド、中途半端に言葉が戻ってへんな、、、」
「おぉ、あんさんはいい返せる立場におられるなんてホンマに上々すなぁ?ホンマ、どつくぞ。」
「ひぇ。すいません。」
「そんな怖がらんでも、言うほど怒ってないで?」
そんな風には一切見えない。後ろからマグマが溢れだしている火山が見えるほど雰囲気はやばい。ライもフールも震えるしかできない。ライが、
「ま、まぁ、落ち着け、ヘルドレイド。ご飯前に待たせてしまったのは悪いと思ってる。話が長くなってしまったことも申し訳ないと思ってる。本当にすまなかった。」
「やから、言うほど怒ってないでぇ?ホンマに。」
「じゃぁ言葉を直してくれ。怖いから。」
ヘルドレイドは溜息を吐いて、
「ライ。俺が怒ってる理由ちゃんとわかってないだろ。」
「へ?」
「フールもだけどさ、昨日あれだけ俺らに、特にベディに心配かけといて、呑気に風呂はいってましたーってさすがに酷すぎるんじゃない?」
「「うっ。」」
「俺はお前らの事をそういう意味では全心的に信頼してる。それはコールも同じだし。」
「お、おう。いきなり褒めるね。」
「でもさ、ベディは違うんだよ。」
「「・・・」」
そう。一番ヘルドレイドはそこに怒っていた。何十年単位で一緒にいる自分と違って、ほんの一年程度なのだ。そのうえつい数年前まではアンナクソ野郎の所にいたのだから、色々心配性になるのは当たり前の事で、ようやくベティの感情が出てきて、そのせいでより深く傷つくことを嫌がっているのだ。ヘルドレイドは。
「分かってる?二人とも。俺らが意図しないところでこれからたくさんベティを傷つけるだろうし、嫌だけどその自信がある。でも俺はそれが感情の向き合い方だと思ってる。でもさ、心配をかけて苦しめるのは違うだろ。」
ヘルドレイドの言葉にぐうの音も出ない。ひたすらにド正論を叩きつけられて、言い返すことすらおこがましいようにすら感じた。
「それに、ベディ今すごい不安定なんだよ。」
「え?あぁ、せい、、、いや、それは無いだろ。」
「フール。言いたいことは分かったけど、違うよ?感情が出来た頃ってのは、、、」
とヘルドレイドの言葉は高い声によって遮られた。
「常時的に不安定で、なおかつ元が豊かだからいくつもの感性が同時に働いて疲れやすくなるのよ。」
三人が声のした方に目を向けると、セライラとセライラの後ろに隠れる髪を一本におろした少女が居た。
「あの子、だいぶ感情が出てきたわね。」
セライラは少し笑う。フールが立ち上がって、前に出る。
「まぁな。俺としてはいい事だと思うよ。」
セライラが動揺したようにお菓子の魔女と目を合わせた。
「なんだよ。」
動揺する二人を見てフールが聞く。
「あんたがそんなこと言うなんて、珍しいわね。」
「そうか?」
「ええ。ほんとに珍しい。」
「?なんだよ。そんなに変か?」
「いえ、貴方がそうなら、変じゃないわ。ただ、少し、、、びっくりしただけよ。」
「用事はそれだけか?」
「なわけないでしょ。ベディに会いに来たのよ。テュミルに言われてね。」
「テュミルに?」
フールは一瞬ライを見る。ライも困惑の表情を浮かべていた。
「そうよ。ベディちゃんが心配だからちょっと見てきて欲しい~!って。てんやわんやで大変だったわ。」
肩をすくめるセライラにライは
「それは、、、申し訳ない。妹が失礼しました。」
(テュミル、、、ベディのこと好きなのか嫌いなのか本格的にわかんなくなってきた。)
セライラが一歩前に出ると、少女が慌てて声を出した。
「ちょ!!セライラ!!離れないでよ!!」
その声を聞いて、ヘルドレイドとライが少女を睨みつける。
「ひぃ!!き、ききょうは!何もしないわよ!!た、ただついてきただけだもん!!魔法使わないもん!!」
うずくまって、プルプル震える。フールはよくわからず二人に聞く。
「なぁ二人とも、一体何が、、、」
「コイツ、俺を殺しに来たお菓子の魔女だよ。」
「っ!」
無意識的に睨んでしまう。セライラが溜息を吐いて、
「安心しなさい。手出しさせないから。今回は味方よ。というか、もう敵になることは無いんじゃないかしら?だって、、、」
ドアが勢いよく開く。
開かれた内にいたのはヘンゼルとグレーテルとベディだった。
お菓子の魔女は「げっ!」と顔を青くして、ヘルドレイドの後ろに隠れた。
「ヘンゼル、グレーテル、、、」
息を切らしたグレーテルはズンズンとお菓子の魔女に近づく。
「・・・っ」
グレーテルが涙目でお菓子の魔女を睨む。お菓子の魔女はそれに耐えられなくて、そっぽを向いて、ヘルドレイドの後ろに隠れてしまう。
「ひ、久しぶり~、、、あはは、、、。」
グレーテルは奥歯に力を入れて、とうとうこらえきれなくなった涙を流す。
「何が久しぶりですか!!!``魔女様´ ´ !!」
「「「「「?!」」」」」
事情を知らないベディを含めた五人は何が何だかわからなかった。けれども、ヘンゼルとグレーテルにとって、このお菓子の魔女が大事な人物であることはわかった。
「えっと、、、あの時置いていったのは悪いと、、、思ってるよ?でもね、色々その、、、事情が、、、」
人差し指の先をつつかせ合って、渋い顔をしながらこの場の逃げる策を考える。グレーテルは高く震えた声で、
「事情って何ですか。思ってるってなんですか。」
「いゃぁその~、、、えっと、、、」
「私達があのだとどれだけ心配したと!!!」
グレーテルが怒鳴りに近い声を上げた時、ヘルドレイドが片手をあげて、意見を言う。
「あのさ、水を差すようで悪いけど、俺を挟まないでくれる?」
「・・・」
グレーテルは黙り込む。
「概ね二人、、、いや、三人の関係がわかったよ。でも、ここでその押し問答らやないで。邪魔だから。」
フールは驚愕した。
(言い切りやがった、、、こいつ!!)
ライも仕事に行って、ベディとフールが念の為に残っているこの状況で淡々と本音を言った。そもそもヘルドレイドはお菓子の魔女に殺されかけているわけで、自分を殺しに来た相手の感動の再会を板挟み状態で仲介してやるギリはないのだが。どころかやりたくないというのがひしひしと伝わってくるため、止めようとはしなかった。
グレーテルはポタポタと大粒の涙を流して、お菓子の魔女を睨みつけて部屋を出ていった。
「グレーテル!!」
ヘンゼルが呼びかけても無視してた。肩を落として、ヘンゼルがお菓子の魔女に呼びかけた。
「魔女様」
ヘルドレイドの後ろから出てきていた魔女はグレーテルを掴もうとした手を下ろした。
「何、、、ヘンゼル。」
ヘンゼルは少し悲しそうに、そして辛そうに言った。
「魔女様は僕らが嫌いですか?」
お菓子の魔女は俯いて、下唇を噛む。
「・・・、いいえ。私はあたな達を、諢帙@縺ヲ繧九o!!」
「え??」
この場にいた誰も魔女自身でさえも何を言ってるか聞き取れなかった。ノイズだか、声だが、モスキートーンだか分からないものになっていた。
「魔女様、、、?」
お菓子の魔女は悲しく笑い、
「ごめんなさいね。もう、あなた達の知ってる私じゃないの。」
癖でヘンゼルを撫でようとした触れた指先がザラザラと白い砂粒の砂糖へ変わってゆく。
ヘンゼルはそれを見て酷く傷ついた顔をして、グレーテルを追いかけた。
残ったフールは、納得いったように言う。
「なるほどねぇ。``魔女の契約´ ´ ねぇ。」
「え?」
ベディが首を傾げる。
「魔女同士の契約の事。魔女は基本的に契約は悪魔や魔物、妖精、人獣、エトセトラ、それらと契約しても手に入らないものが時折あるんだよ。その時に魔女同士て契約するんだ。ま、半人なぶん、代償は大きいけどね。
アイツは何かを引き換えに願いを果たしたんだ。その代償が今のだろうな。」
「・・・そんなに大きな代償なのに、なぜその願いを、、、」
お菓子の魔女が鋭く言う。
「貴方も人の事言えないわよ。」
「え?」
「聞こえなかった?貴方も人の事言えないわよ。」
少し冷たい目でベディを見る。ベディは息を飲んで、お菓子の魔女を見つめ返す。
「どういう、、、事ですか?」
「はぁ。ベディ、もし貴方の目の前でフール達が死んだとして、それを回避する未来を作ることが出来たとしたら、貴方はどうする?」
そんな答えは決まっていた。確実に助ける未来を選択する。即答できる。けれど、ベディが答える前にフールが冷たく低い声で
「ベディ。」
呼んだ。
「っ!、、、フール、、、様?」
フールの目は、、、光っていない。けれど、おどろおどろしい物が目の中にあった。悪寒とよく分からない恐怖心で背筋が伸びる。
「フール様。」
フールの手に溶けた肌を重ねた。
少し骨ばった硬い手は 醜くい小さい手を握り返した。
「フール様?どうなさいました?」
「別に。答えて欲しくなかっただけ。」
お菓子の魔女は溜息を吐いて、
「ホント、相思相愛ね。あなた達。」
フールが口元をニヤつかせ、
「そりゃあどうも。」
「安心しなさいな。私はベディをとって、食おうなんて思ってないから。」
「私は??」
「あんたたちは知らないけどね。」
「言うじゃねーか。ヘルドレイドとベディに呆気なくやられた三流のくせに。」
「ベディが来なかったら勝ててたわ!」
「そりゃあ良かった。ベディが来なかったら、お前が俺に殺されてたよ。」
確実に怒りを孕んだ声で言う。ベディを自分の胸下に押し付けて顔が見せない。
「っ、、、そう。なら、失敗して良かったわ。どれほど残酷に殺されていたのかわかったもんじゃないもの。」
フールを睨み付けた。その二人を見てベディがアワアワと手を振る。
「待っ待ってください!!ヘルドレイド様も無事でしたし、ここで怒るのは!!」
セライラがベディを援護するように
「そうよ。とりあえずは丸く治まってるんだから。蒸し返す必要は無いじゃない。」
ベディも強く頷く。フールは
「なぁ、結局要件ってなんだ?ベディの様子を見に来るのは、、、分からないがいいとして、ほかの用事があったんだろ。」
セライラがニヤリと笑って、
「よくわかってるじゃない。ちょと気になったことがあったのよね。」
「んあ?」
楽しそうにスカートをはためかせて、
「あんた、魔法石持ってたりする??」
「あぁ、一つだけ。」
「見せて?」
「はい。」
セライラに投げて渡す。手のひらより小さな宝石はうちのでキラキラガラスが散りばめられたように光っていた。
「この魔法石、どこで手に入れたの??」
「失礼を働いた客から巻き上げた。」
「その客は何か言ってた?」
「知らね。言う前にぶっ飛ばして放り投げた。」
「あんたねぇ。一番気になるところなんだけど、、、。」
「大体なんだよ。その魔法石は貴重な物かなにかなのか?」
「はぁ?本気で言ってんの?!魔法石は一つの山でしか取れない貴重なものでしょ!!」
「あーはいはいそうでしたね。興味がなくて忘れてたわ。」
「嘘でしょ、、、信じらんない、、、あんたマジでイカれてんのね。」
「そこまで言うか?普通。」
「言うわよ!!上級だと石の価値すら分からないわけ?」
「それは、無い。単純に俺が特殊なだけだ。」
「あらそうなの?なら安心だわ。あとの三人も同じこと言ったらいい加減頭がおかしくなりそうだもの。」
「そんなにか??」
「そんなによ。」
魔法石をライトに当てて、光を見る。
「本当に魔法石なのね。」
「なぁ、セライラ、もしかして、こないだ言ってた誤差ってそれが原因か?」
セライラの身体が一瞬跳ねる。何事も無かったように魔法石をしまうと、顎の下をパステルグリーンで塗られた爪で何度か叩くと、肩をすくめて
「どうかしらね。私が見たのはもっとヤバそうだったと思うけど。」
「お前のヤバそうほど怖いもんはないんだが、、、」
「そうねぇ、あの時感じたのは、、、なんて言えば良いのかしら。あんたの力の誤差って感じなのよね。」
「俺の中の誤差?たしかにあの時だるかったけど、、、そんなに力は使ってなかったぞ?」
「・・・まさか、、、ベディ?」
ベディを見た。ベディは首を傾げていた。セライラは肩を掴んで、
「ベディ、、、貴方、どうしてヘルドレイドがお菓子の魔女に襲われることがわかったの??」
「へ?!いや、それは、、、その、えっと、、、」
何故か言うのが躊躇われた。けれど、質問に答えなければと、口を開けると心臓が大きく鳴った。
また心臓が痛み始める。だんだん肺に広がって、肋に広がって、たっていられなくなった。
「ベディ!!」
「っ、、、!!くっ、、、はぁ、ぁッ!はぁっ!」
(握り、潰されるっ!!)
直感でそう思った。思っても痛みの広がりが止まるわけはなく、無慈悲にベディの体を締め付ける。
セライラの手が再び肩に置かれると、ピタリと痛みが消えた。
「え、、、?」
「その様子だと楽になったみたいね。大丈夫?」
「ハイ、、、大丈夫です。えっと、今何を、、、?」
「何もしてないわよ。ただ肩に触れただけ。」
「・・・」
「なるほどね。なんでフール達にも言おうとしないのかよく分かったわ。」
セライラは手を離した。
「すみません。」
「いいのよ。納得がいったわ。」
「すみません、、、」
「その様子じゃ、誰と契約したとかも言え無いと思うし。」
「契約?」
「魔女の契約よ。」
「していませんよ?」
「「は?」」
「私はそんなものしてません。」
「は??」
「私は、知ってる魔女は御二方とテュミルさんだけです。あと、、、」
夢の中の魔女。名前は一体なんだったか、、、そんな魔女なんていなかったのでは??いや、そんなことは、、、確実に、、、
淡くしか出て来ない。声も、姿も、くもりガラスの先にいるようにしか見えない。
「あと?」
「いえ。私のあったことのある魔女さんは三人だけです。あ、バルゴさんも不思議な力を使ってました!」
「バルゴ?もしかして、十二星士の?」
「ハイ!」
セライラはフールに視線を向けた。フールは頷いて静かに驚愕の顔をして眉間にシワを寄せた。
「それは、、、だいぶ違うわ。たしかに彼女は異常者だったはず。」
「いじょうしゃ?」
「数十万人に一人の割合でいる、、、異能力所持者のこと。生まれつきの能力者。」
「ホエー。そんな人がいるんですね、、、」
「帝国総合病院にいたなら、ストレインレッドの連中に会ったでしょ?」
「はい。ルナーさんとナルーさん、ガルさんやユウさんも時々お見舞いに来てくださいました。」
「そう。ガルが、、、。彼、少女趣味なのかしら。」
(聞く時聞く時女の子たすけてる気がするけど。)
「そんなことは、、、ないと思いますよ?」
一応のフォローを入れておくベディ。
「まぁいいわ。ガルがねぇ。もしかして、彼が起点なのかしら?」
「起点?」
「、、、なんでもない、、、。」
意味深にベディを見て、フールに呼びかける。
「フール。あんた気おつけなさいよ。」
「うん?うん、、、わかった。」
「どうせあんたの事だから三人に呪縛みたいなもんかけてんでしょ?」
「鎖を呪縛ゆうな。そうだけど!!」
「メンヘラ。」
「やめろ。本気でやめろ。言っていいとと悪い事がある!」
「ふん。」
セライラはドアに手をかける。
「行きましょう。アプリコット。」
「うえ!うん!」
お菓子の魔女がセライラに続く。
「フール。」
少しだけ悲しそうな声で呼んだ。けれど、その声がフールに気づかれるくことは無い。
「なんだよ。」
いつも通りキツめに返す。その姿にセライラは心底安心して、これからこの声が聞けなくなるのかもしれないと不安な気持ちに走りながら、言う。
「魔女としての仕事。

ライとコールに気おつけて。

さよなら。」
トビラが閉められた。
フールとベディは首を傾げて、
「ライとコール?あの二人、変なところあるか?」
「分かりません。でも、ライ様が元気がない気がします。コール様は、、、分かりません。」
心配そうに眉を顰めるベディの頭を撫でながら言う。
「俺も。ベディ、極力でいいからライとコールを気にかけてやって。」
「はい。」
「出来れば、、、いや、できる限りどちらかのそばにいて。異変があればすぐに俺に報告。」
「わかりました。」
小さく頭を傾けて、部屋を出ていった。
(さて、どうしたもんか。二人に気おつけては、どういう意味なんだ??実際に二人に気おつけて、なのか、二人の行動に気おつけるのか、、、アイツはそこが一番曖昧なんだよな~本当。)
「困ったもんだ。」
(魔術はそんなもんだけど。)

「なぁ、ミルラ。お前はどうすんだよ。

俺にはわかんねーよ。」

小さな自分に差し伸べられた手を思い出してしまう。
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