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 久しぶりに訪れた廃墟は懐かしい鉄の匂いがした。
 かつて旅館だったそこは、今は錆と植物に侵食されている。
 深い森の中、隠れ家的な旅館だったのだろうが、今では育った木々や葉っぱに覆われて、本格的にその姿を隠そうとしている。

 ここは、オレの秘密基地だった。その時は、まだ植物の威勢は壁に食い込むほどではなく、ガラスも一部は残っていたが、今では全てのガラスが割れ、鉄の部分は全て錆に覆われている。

 旅館を営業していた頃はどれほどの客足があったのか知らないが、きっと様々な人間を迎えてきた玄関を屈んでくぐる。
 オレが秘密基地にしていた時は、まだあったドアが、今は外れてどこかに持ち去られている。
 代わりに板が打ちつけられているが、どこかの悪ガキが剥がしたのか、頭を打つ位置に1枚だけ残った板が虚しい。

 落ち葉が降り積もった床を歩き、そこで過ごした過去を思い出す。
 ここには色んな思い出がある。
 その多くが良い思い出で、オレの胸は少し満たされる。

 玄関ホールを入ると、正面には大階段があったはずだが、根本から崩れて、今やツルが垂れ下がる空間が残されているだけだった。

 確か、右に進めば食堂が、左に進めば大浴場があったはずだ。
 さぁ、どちらに向かおうか?

【選択肢】
▽食堂に向かう→1へ
▼大浴場に向かう→5へ
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