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記憶
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男は目を覚ました。男の名は千葉晋二。年齢は35歳、スーツ姿に短髪。ワイシャツのポケットにはタバコが入っている。普段から鍛えているのであろう、胸板が厚い。『…どこだ…ここ…。一体、俺はいつから…』左腕に巻かれた時計に目をやった。辺りは薄暗く、文字盤がやっと見える程度だった。時刻は午後2時を指している。不自然な程の薄暗さからここが室内で、さっきから嫌と言う程味わっている『前頭部の痛み』から千葉晋二は察した。そう、千葉晋二は監禁されているのだ。『丸1日か…。』千葉晋二は、監禁される前の記憶を必死に呼び戻していた。前日、千葉晋二は仕事をしていた。午前中に急ぎの仕事を済ませ、上司に嫌味を言われながらも午後からは休暇を取っていた。千葉晋二には3年交際している恋人がいる。恋人の名は坂本恭子。年下の28歳であり、とても可愛らしいショートカットの笑顔が似合う女性だ。3年前に千葉晋二の仕事中に坂本恭子から一目惚れ。それまで、仕事一筋だった千葉晋二は戸惑いながらも坂本恭子の猛アタックに根負けし、交際に発展した。その日から丸3年が経とうとしていた。千葉晋二は前々から考えてはいたが煮え切らない想いでいっぱいだった。『そろそろプロポーズしないとな。恭子もきっと、待ってるだろうな。』お互いに結婚の話が出ていたのかは分からない。ただ、千葉晋二には坂本恭子しかいないという考えだけは揺るがなかったのだろう。千葉晋二は、結婚指輪を購入し、坂本恭子に電話を掛けた。『もしもし、晋二?どうしたの?仕事中に電話掛けてくるなんて珍しいね!何かあったの?』いつもの明るい声に胸がホッとした。『ほら、明日で俺達が付き合って丸3年だろ?恭子が前から行きたがってた駅前のレストランの予約が取れたんだ!』我ながらワザとらしいと千葉晋二は自分の演技力の無さを呪った。『えっ!?本当に!?嬉しい!じゃあ、明日は盛大にお祝いしようね!』千葉晋二はプロポーズする事を悟られない様に声を落ち着かせ『よしっ!詳しい事は恭子が仕事終わったら連絡するよ!』そう言って電話を切った。千葉晋二は以前から何度も何度もプロポーズの練習をしていた。例え辿々しくなってもいい。恭子への気持ちを伝えるんだと。千葉晋二は、緊張感からか再度プロポーズの言葉を練習しようと自宅へ戻った。千葉晋二の自宅は2階建てのアパートで、結婚した暁には新居をと考えていた。坂本恭子にバレない様にモデルハウスも巡った。それが最近の楽しみでもあった。色々な想いを巡らせながら自宅に入ろうと玄関の鍵を回した。その時、ふと郵便受けにチラシに混ざり、封筒が入っているのが見えた。『何だ?』千葉晋二は不思議に思いながらも封筒を開けた。中に紙が1枚入っており、そこにはこう書かれていた。
『気づいているか?』
その瞬間、背後から声がした。振り返ったと同時に頭に走った衝撃で千葉晋二は意識を失った。記憶の断片を繋ぎ合わせ、千葉晋二は何者かに襲われた事を思い出した。
『気づいているか?』
その瞬間、背後から声がした。振り返ったと同時に頭に走った衝撃で千葉晋二は意識を失った。記憶の断片を繋ぎ合わせ、千葉晋二は何者かに襲われた事を思い出した。
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