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SS
SS 我が子
しおりを挟むボクがユナズフからアルシリヤにやってきて、あっという間に十年が過ぎた。
アルシリヤでの生活が充実しているから、もう十年?、と驚くくらいだ。
「おあぁまぁ」
「あぶないよ」
まるまるころころとした体でよく転ばないな、と感心しながらとびついてきた二歳の第二子を抱きしめる。
四歳の長子も駆け寄ってくるのが見えた。
乳母に抱かれて、首のすわっていない第三子もいるようだ。
もちろん三人とも、ボクには一欠片も似ていない。
ふくふくの体を持ち上げようとして、固まった。
思っていたよりも重たかった。
子供の成長は、早い。
もうすぐ、この子を抱き上げるのも難しくなりそうだ。
貧弱なままの自分がいけないのは知っているけれど、筋力鍛錬は苦手だから。
男だけど、魔術を使って子供が産めるボクは、対外的にも本質的にも王妃扱いをされている。
女装しなくて良いと聞いた時は安心した。
アルシリヤの政治形態については、ユナズフと規模が違い過ぎて、口を挟むこともできない。
人口が百倍以上違う国で、主要産業もまったく違う。
政治の世界ではボクは役立たずだ。
本当に何度でも思うよ。
どうしてボクを王妃にしたのだろうって。
十年前にボクが提案したように、女性に王妃になってもらった方が良かったんじゃないのかな。
ずっと考えは変わっていないけれど、トゥアバヌが傷つくから言えない。
怒らせるのも嫌だけど、悲しませたくない。
きっとボクは、トゥアバヌが好きだ。
頭ではそう考えている。
心は、悪い人ではない、だけど。
ボクに人を愛する心があれば良いのに。
いとしごを決めるのは魔神で、いとしごの地位を返上することはできない。
ボクの以前のいとしごたちも、そうだったのかな。
愛なんていらないのに。
愛が。
うらやましい。
……きっと、神様もそう思ったんだ。
自分以外の誰かのために、生贄になることを志願した者の心が、愛でいっぱいだったのかもしれない。
いつか魔神様が人の心を理解するその時までに、魔術師が必要ない世界になれば良い。
ボクはもう、契約に縛られていない。
第一子を孕んだその時に、王の子を宿す契約は果たされている。
だから自分自身の頭で考えて、二人目、三人目を産んだ。
間違いなく卵子の提供元が違う子供たちを。
トゥアバヌと同じ、王族の黄瞳を持つ子供たちを。
王妃として。
この国で生きていきたい。
トゥアバヌといっしょに。
派閥争いを鎮めるために子を産んだ。
周囲に仲睦まじさを見せつけつつ、魔術師を畏れさせるために子を産んだ。
ボクは愛なんていらない。
でも、愛は、世界にあふれている。
「あい、おーつ」
「うん、おやつだね、いこう」
踏み出した靴の下で柔らかい草が折れる。
ずっしりと重たい我が子の成長を感じて、むずむずする。
ボクは、愛されている。
きっと、愛している。
# #
アルシリヤでは魔術師は得体が知れない存在、畏怖の対象+トゥアバヌ王の執着と独占欲=目元以外隠す王妃が爆誕!
我が子を抱く王妃の周囲だけ、なぜかうす暗い状態
毎回、生まれた子のお披露目の際に、ボソッ
(⑅∫°ਊ°)∫ニチャァアァ
「もし、この子がはかなくなったら、ボク、なにをしてしまうかわからない……」
「は、はひいっっ、大切に育ませて頂きますぅっ」
アルシリヤの三派閥
現王(が大人しい間は)派、先先代王弟の血筋(の方が転がしやすい)派、貴族派
派閥ごとに卵子提供したせいで、三すくみ状態になっちまったゼ(´∀`*)
10
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