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拾った人が死にそうだ
しおりを挟む先端を押し付けて揺らして窄みを広げようとしても、なかなか入れられない。
少し切れてしまったから広がりにくいのかな。
無理に入れたら、垂れ流しになって戻らなくなるのを知ってる。
ご近所さんのお嫁さんがそうだもの。
ボクよりも本性の体が大きいご近所さんは「いつでも子作りできる良い嫁だ♡」と、お嫁さんを溺愛しているから、垂れ流しでも困らないのは知ってるけど。
〝人〟は弱いから、傷を負った後にどれくらい傷を治す時間が必要か、どこまで回復するかが分からない。
せっかくのお嫁さん候補なんだから、いっぱい抱いてあげたい。
傷つけないように、優しくしてあげないと。
しばらく腰を揺らして窄みをゆるめようと馴染ませている間に、だんだんとオトコの反応が薄くなっていく。
「……ぁ……っ……」
「あれ、もう限界?」
まだ入ってないのに?
がっかりしながら脱力している体をひっくり返すと、顔が死体みたいな土気色になっていた。
その上で新しい涙と鼻水とよだれを垂らして、白目をむいていた。
これだけ汚れているのに、死相って分かるものなんだ。
あ、まずいや。
このままだと、本当に死んでしまう。
中に出してあげるまで耐えてくれるかなと思っていたけど、すでに体液を流し過ぎていたらしい。
体内が腐りかけているのも、関係あるかも。
やる気満々のボクの相棒をなだめすかしながら、意識のないオトコをかついで、家とは名ばかりのぼろ小屋に帰ることにした。
周囲でおこぼれ待ちをしていた貧民窟の住民には、ボクのご飯を分けてあげることにした。
新鮮な山菜を諦めるのは辛いけれど、もっと良いモノを拾ったので惜しくない。
あとは、略奪狙いで追いかけられた時に考えよう。
現場を見ていたなら、歯向かうやつはいないだろう。
ボクの本性が〝人〟ではないと分かるように、魔力を垂れ流したけど、人は鈍感だから気づかない者がいないとは言い切れない。
いつでも崖っぷちな貧民窟に生きる者の多くは、生存本能に従うことを知っている。
今のボクの、人そっくりでよわよわな見た目にだまされるような愚か者は、少ないと信じたい。
〝人〟種族だって、動物と同じように忌避本能があり、ボクらは基本的に人種族に嫌われがちだ。
貧民窟に来てから、ボクが襲われたのは一度だけ。
人の子供の姿そっくりだから、さらって売ろうと考えたようだ。
金に目が眩んだんだ、許してくれ、と泣かれた。
悪逆は嫌いでは無いけど、まったくもって好みではなかったから、踏み潰してその辺に転がしておいた。
その後、どうなったのか確認してなかったな。
ボクらは人種族が嫌いでは無いのに、一方的に嫌われる。
悲しいというより困るよねぇ。
雨漏りと隙間風が同居人の仮住まいに戻り、引き戸に気休めの尻刺し棒をはめてから、寝台代わりの枯れ草の山にオトコを寝かせる。
もうそれは、お姫様を絹の寝台にご案内するように優しくね!
本物の絹を山繭以外で見たことないけど、繭をたくさん敷き詰めた寝台ってことなのかな。
あんなものの上に寝たら、繭が中身ごと潰れそうだけど。
人が考えることってよく分からないや。
そもそもボクらには屋根も壁も必要ないからね。
……うっわぁ、枯れ草の山がものすごく似合わない。
ボクにはこれで十分だけれど、人を飼うなら、見栄えと寝心地が良い寝台が必要だということがよく分かるよね。
あ、そうだ、ご近所さんの真似をしてボクの抜け毛で寝床を作ったらどうかな。
そんなことを考えながら、意識のないオトコが体に巻いていた布を引き裂く。
布地の裏に変な文字がいっぱい刻まれている。
ずたずたに引き裂かれて、全部ダメになってしまっているけど。
フクを着たままで、寸刻みにされたみたい。
なにがあったんだろうね。
「うーわぁ」
裸にしたオトコの全身が、見事に傷だらけなことに呆れる。
よくこんなぼろぼろで生きてたよ。
なにをどうしたら、ここまでぼろぼろになるんだろう。
確認してみても、オトコの体の構造は〝人〟種族そのもの。
どこにでもいる〝普人種〟だと思う。
頭部から頚椎の角度がおかしいのは、二足歩行だから。
ご近所さんたちのお嫁さんにも、二足歩行の種族がいるから、事前の情報収集も兼ねて勉強してきた。
「人の国で手に入るお嫁さんは〝人〟種族の確率が高いでショーッ!」というご近所さんの発言を、切り捨てなくてよかった。
四肢のはえる場所、関節の形状がおかしいのは、この貧民窟に来てから知った。
前脚を器用に使うから、関節形状がおかしいんだよ。
人種族の基本形は二足歩行。
頭部には長く伸びる〝カミ〟と呼ぶ体毛があることが多い。
体を守る毛が無いか少なくてよわよわの皮膚だけだから、〝フク〟を着なければ身を守ることもできない。
角や尻尾、牙を持ってないことが多い。
気遣ってあげたから、ちょっと切れしまったけど垂れ流しになってない、はず。
それでも、まあ、体液がからっけつで、魔力も無くて死にかけている。
体の中も腐りかけ。
年齢は不明。
ボクは外見で人の年齢は見抜けない。
赤子と老人くらいはわかるけど。
全身が泥と体液まみれ……たぶんだけど、ジイサンって呼ばれる歳くらいかな。
骨格や贅肉のつき方から見て、過去に鍛えていた時期がある。
鍛えるのをやめてしまったから、ぶよぶよとゆるんでたるんだ不摂生を重ねた肉体になった。
そんなとこだろう。
素敵なお嫁さん候補のジイサンを見つけた悪徳に、ニンマリして。
随分と、古い傷跡も多いことに気がつく。
体液を含んでしまった長いカミはきつく編み込まれて、垢と脂と泥にまみれてべたべたでずっしりと重たいし、とても臭い。
淫蕩と退廃の臭いがする。
古傷と長いカミ。
文字通り地を這うほどにのばされたカミを、縄のように編み込んでいる〝人〟で思い当たるのはマジュツシくらい。
鍛えていた痕跡と傷痕から、戦場、それも最前線に放り出される系だろう。
まあ、これだけ臭ければ、もう魔力は使えないだろうね。
人種族だけが使う、魔力の運用方法がマジュツ。
それを扱うのがマジュツシ。
このジイサンが自分から堕落したのか、堕落させられたのか。
体液と垢と汚濁の奥底に、酒と魔薬とオンナの淫液の臭いを感じる、このオトコは肉体の芯まで汚染されている。
体内の魔力合成機能が破綻している。
おそらくだけれど。
普人種は他の人種に比べて体内魔力製造力が弱い。
繁殖力が強くて、寿命が短いことと関係している、ような気がする。
たぶん。
酒と魔薬に体内が汚染されて、徐々に弱っていく魔力合成機能。
生合成される魔力量が減ってしまえば、戦場でまともに戦えなくなり、失墜していく忿懣をオンナで発散して。
オンナの中に魔力と子種をぶっ放せば、さらに魔力が回復しなくなる……と。
ご近所さんに聞いた人種族あるある堕落話を思い返せば、そんなところだろう。
最高に効率が良い悪循環を繰り返して、ジイサンは堕落したのかもしれない。
体内で魔力が生合成されなければ、魔力は枯渇する。
使い方を知っていても、無いものは使えない。
相入れないご近所さんでもあるアイツらに聞いた「普人種のマジュツシは崇高にして高潔、その弱さが愛しい」という言葉は、本当だったわけだ。
享楽と淫蕩に耽るだけで力を失う弱小種族か、本当に哀れだ。
繁殖するだけで力尽きるなんて。
可哀想で、可愛すぎるよ。
弱くて気高い身を堕落させた後だからなのか……その身をむさぼるのはとても美味しそうだ。
マジュツシとして使えなくなって、廃棄処分されたのか。
それとも……貧民窟に逃げ込んだのか。
どちらにしても、ボクのお嫁さんに相応しい。
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