【R18】異世界で白黒の獣に愛される四十路男

Cleyera

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暗闇からの解放と拘束 ※

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 意識が戻ると同時に目を開いて、叫びそうになった口を押さえた。
 くぐもった声は漏れたけれど、喜びの叫びはかみ殺すことができた。

 周囲が見える。
 これだけのことが、どれだけ嬉しいか。

 周りを囲んでいるのは薄いレースカーテンのような布で、布の向こうが微かに透けている。
 室内は薄暗いので、今は朝なのか夕方なのか、真昼間でも締め切った部屋に閉じ込められている可能性もある。

 寝ていた体を起こそうとして、もう慣れてしまった全身の重怠さ以外の違和感を覚えた。
 じゃらりと音がした首元に触れ、体にかけられていた毛皮を剥いで喜びが怒りに変わった。

 指に触れたのは幅の広い首輪のようなもので、左の足首には蔦でできたような重たい綱がつながっている。
 救いは首輪に紐がついていないことか。
 紐付きの首輪なんてつけられたら、間違いなく首を痛めてしまう。

 暗闇から出られたと思ったら今度はペット扱いだ、飼育係はよほど毛の塊のお相手に困っているらしい。
 首輪の表面には凹凸があり、頭を動かすとじゃらじゃらと音がする。

 外せないかと首輪の内側に指を突っ込んでみれば、内側は柔らかかった。
 痛くならないようにという配慮なのかもしれないが、痛くないからといって繋がれた生活をしてたまるかとも思う。
 暗闇に閉じ込められないのであれば繋いでおけ、ということなのかもしれないが、思考の到達点がおかしい。

 周りが見えるのと、寝かせられていたのが広いベッドなのが、少しだけよい方向への改善点か。
 暗闇の石部屋で全裸生活から、明るい部屋のベッドで全裸生活になったが、あまり変わってないというか、首輪と足を繋がれていることを考えれば、扱いとしては悪化している気もする。
 ゆっくり眠れそうなところだけは評価してもいい。

 薄暗いとはいえ周囲が見えることで、ものすごく久しぶりに自分の体を見る。
 記憶の中で年齢相応に緩んでいた日焼け知らずの体は、思っていた通り新旧のアザだらけだった。

 赤黒いできたばかりのものは、毛の塊が触れてくる腰から膝までに多く、緑や黄色がかった治りかけは数える気が失せるほどの数だ。
 毛の塊の硬い爪が触れるだけでアザができてしまうのなら、外傷になっていないことが不思議でもある。
 アザが多すぎて触るのも動くのも辛いが、一応、全身を調べないと。

 ゆっくりと上半身を起こして、綱を引きずりながらベッドを降りる。
 ベッドにつながっている黒っぽい綱は、触れてみると植物っぽい手触りの蔦のような素材なのに、見た目以上に重い上に引きずると音がうるさい。
 時代物の洋画で出てくるような、足枷付きの奴隷は逃げださないのか?と思っていたけれど、金属でもないのにこれだけの重さがあるのだとすれば、金属では歩くのさえ難しいだろう。

 足裏をつけた床には毛足の長い絨毯が敷かれている。
 ベッドや絨毯があるということは、それなりの文明や文化があると考えられるが、なぜあんな毛の塊を飼っているのか。

 久しぶりの人らしい生活空間に安堵の息をつき、ベッドの周囲の薄布を抜け出して、その場でゆっくりと屈伸をする。
 うん、全身の関節が痛いけれど、これは酷使されているからだろう。
 骨が折れていたり、ヒビが入っている痛みではない。

 それからも肩を回し、背を伸ばし、全身に致命的な障害を受けていないか調べるが、尻の穴付近の現状を直視したくない以外は健康……だと思う。
 ただ、ものすごく痩せてしまったのは分かった。
 薄いパンもどきしか食べていないから仕方ないが、食事量も栄養も足りていないのだろう。
 ほとんど寝ている生活だったから、ただでさえ少ない筋肉が減ったのもありそうだ。

「……さて、と」

 足元で鳴る綱を引きずって、どこまで歩けるか引いてみるが、綱の長さが悪い意味で絶妙だった。
 見回した室内にはベッド以外の家具はなく、床に置かれた蓋つきの瓶、おそらく尿瓶以外は何も置かれていない。
 遠くに見える窓には格子がはめられていて、そのせいで室内が薄暗いようだ。
 窓の奥に見える光の強さから考えて、昼ごろなのかもしれない。

 机や椅子もないとか、文明的で文化的な生活を保障してくれよ。
 暗闇の中に閉じ込められてからの生活が酷すぎたせいで、現状に不満を覚えていないとはいえ、明らかに人扱いされていないことに気がついてはいる。

 居場所が暗闇ではなくなっただけで、扱いは変わってないのだろう。
 本格的に絶望してもいいだろうか。
 逃げ出せないように、逃げ出されないように、周到すぎる準備がされていることだけは理解した。

 せめて下着が欲しい。
 第一希望はトランクスだが、ボクサーでも、爺さんみたいな白ブリーフでもいいから、股間を晒しっぱなしの生活をやめたい。

 そんなことを考えながらストレッチをしていると、ゴンゴンと何かを叩く音がした。
 岩と岩をぶつけ合うようなそれがノックの音だ、と気がついたと同時に、突然目の前が真っ暗になった。

「わ、うあっ!?」

 また暗闇の中に閉じ込められたのか、と足をもつれさせて倒れそうになった体に布のようなものが触れた。
 布の奥には体温を感じるので、誰かが支えてくれたらしい。
 頬以外に触れられたのは初めてだ、と慌てているとさらりと頬を撫でられる。

「      」

 聞こえた声はいつもの頬を撫でて来る手のもので、服を着ているらしいこの声の主が、毛の塊の飼育係説が濃厚になった。
 毛の塊はどこまでも毛の塊で、撫で回したことはないが、服を着ていたことなどなかった気がする。
 今のところ毛がないと確認できているのは、股間の竿だけだ。

 柔らかく頬を押すようにして誘導され、薄いカーテンをくぐってベッドに腰掛ける。
 落ち着いてみれば、目が見えなくなっただけで、さっきの室内にいるようだ。

 なんで突然見えなくなったのか?と手を持ち上げて顔に触れると、目の場所に何かが巻かれている。
 さっきまではちゃんと見えていたのに、なぜ突然見えなくなったのか、という疑問を覚えつつ、それを引っ張ってみるが、顔にぴったりと貼り付いていて取れそうにない。
 梱包用テープでも貼られたような、剥がしたら痛そうな密着ぶりに剥がす気が失せる。

 触れた感じは薄いテープのようだが、VR機器みたいに見せたい映像が見せられるものが顔につけられているのか?
 それなら今いるのも暗闇の中だったりするかよ、ぬか喜びさせやがって!

「    」

 グルグルと聞き慣れた声とともに、口元に押し付けられたパンもどきを、憤りをかみ殺せないまま食いちぎる。

「         」
「うるさい」

 言葉がわからないことを理由に、話しかけてきた手に八つ当たりをする。
 中途半端なことをされて、喜んだ自分がバカみたいだ。
 初めからまともな扱いをされていないことを分かっているくせに、希望を捨てきれなかったのが悪いのかもしれないが、持ち上げて落とす必要はないだろう?

「   」

 するりと頬を撫でられ、涙が出ていることに気がついた。
 顔に貼りついているものは取れないくせに、涙は通すらしい。

 帰りたい場所があるわけじゃない、帰ったところで誰かに必要とされることもないし、ただ生きているだけだったが、それでも自分の身の振り方は決められた。
 自分で決めてその結果の損益も全て受け止めてきた、誰も助言も助けもくれなかったから。
 自分の育った環境が、育児放棄という言葉で表されると大人になってから知ったが、望まないことを押し付けられるのがこんなに辛いなんて思わなかった。
 まだ放っておかれた方がマシだ。

「        、     」

 頬を撫でる手は普段よりも口数が多いが、相変わらず何を言っているのかは分からない。
 クルクルルグルッグルと言ってるとしか聞き取れない。
 だんだんと聞き慣れてきて、こいつの声がボイスパーカッションに聞こえてきてるくらいだ。

「    」

 するりと頬を撫でた手が遠ざかっていく。
 一回めの食事だから、しばらくはのんびりできるだろう。
 そう思いながらベッドに体を倒し、毛皮を巻きつけるとすぐに意識が沈んでいった。


  ◆


 それからのことは、生活の場が暗闇から薄暗い部屋に変わっただけで、何も変わらなかった。
 近頃では、食事が三回終わると毛の塊がやってきて抱き潰される。

「ん、あ、あっ、んっ、あっ」

 濡れた硬い毛が尻に当たるのを感じながら声をあげていると、フゥフゥと荒い呼吸が耳元に近づいて、背中を暖かい毛が覆う。
 痙攣するように何回もに分けて腹の奥に熱を吐き出しても抜くことなく、ぐちゃぐちゃと汚い音を立てながら行為をやめない毛の塊。

 遠くにある窓から外の光を見ることができるようになったことで、行為の間に半日近い時間が過ぎていることが分かった。
 毛の塊や手が室内にいる間は目の前が真っ暗になり、行為の後で気絶している時間もあるので、見えずにいる間に何日も経っている可能性も捨てきれないし、ここでの一日が二十四時間かどうかも疑問に思っているが。

 明るさと手の訪れから食事は一日に二食らしく、毛の塊は一日半に一度やってくるのだと知った。
 毛の塊は、暗闇から出してほしくて適当に言った内容を理解していたのか、ただ気に入っただけなのかフェラチオをねだってくるになった。
 押し倒してきた後に、口元にがちがちになった肉竿を擦りつけて来るので、とても分かりやすい。
 初めの頃のように、強引に突っ込んで腰を振られるよりも負担が軽くなり、アザだらけだった体が肌の色を取り戻し始めた

 フェラチオに慣れてくると、喉の奥を突かれた時にぐっと力を入れて飲み込むことで、先端を締め付けることができるようになった。
 そうして締めてやると早く終わると気がついてからは、吐き気と戦いながら練習した。

 毛の塊が嬉しそうに、気持ちよさそうに喉を鳴らして唸るのを聞くたびに、早く終われと思っていることはバレていない、と思う。
 こんな技術は必要ないと冷静に思う反面、少しでも早く終わらせるために、できることは全部する現状が辛い。

 比べる対象が自分だけとはいえ、毛の塊の肉竿は太い上にとても長い。
 喉の奥まで受け入れて吐きそうになっているのに、まだ竿が残っているのを知って、複雑な気持ちになった。

 突かれると吐きそうになるのは変わらないけれど、その感覚にさえ慣れた自分が気持ち悪い。
 相変わらず、尻に突っ込まれても気持ちいいとは思えないが、演技は続けている。

 そういえば、勃たなくなった。
 というか、気がつかなかったが、ずっと勃っていないかもしれない。
 加齢が原因かと思ったが、近頃の状況を思えば、勃たなくなるのが当たり前だとも思える。
 性的なことに興奮を覚えるのは、今後無理なのか。


  ◆  ◆


 ぼくのおよめさんはすごくかわいい、すごくすごく大すき、うけ入れてくれたのに、どうしてキズナがむすばれない?なんで?どうして?しんぱいだ、おそわれないうちにキズナを、早く早くっ!
 
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