【R18】I've got a crush on ogre

Cleyera

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四、生まれたままで

47 志野木

 
 初めて、東鬼シノギ(の先っぽ)を受け入れた後、お披露目のために準備を始めた。
 準備すべきことはただ一つ、無傷で根元まで受け入れること。

 初めての時は、十分すぎるほど広げられたと思ったのに、まだ足りなかった。
 大きすぎるんだよ。
 それを尻に入れても良いと、受け入れようとする俺も大概、大バカなんだろうな。

 その原動力は、恋や愛なんてものじゃない。
 ただの自己満足だ。
 東鬼の相手は俺だけだって、俺だけが受け入れられるんだって思いたい。
 それだけだ。

 東鬼が仕事に行く傍で、数日おきに自分で拡張を繰り返して……以前よりも緩くなっていると感じる。
 意図せずに出るなんてことはないけれど、体は確実に変わっている。
 実感があるのは良いことだ。
 努力が無駄ではないと、わかるから。

 尻の穴や体の中に触れられることを、気持ちいいなんて感じる時点で、以前の俺とは違う。
 過去に戻れるわけもない。
 戻りたくもない。

 東鬼を選んだことを、選ばれたことを、いつか、昔は大変だったなって笑って言いあいたい。
 爺さん二人で車をいじりながら、そんな話ができたら最高じゃないかな。


  ◆


 無傷で東鬼を受け入れられるようになったのは、行為を何度も繰り返してからだった。
 それでも動けるほどの余裕はなくて、痛みもひどい。

 腹の中に硬くて熱い肉を無理矢理突っ込む感覚に、もう慣れても良いくらいなのに、どうしても痛みを感じてしまう。
 ローションを惜しむことなく使い、少しずつ奥まで入れられるようになっていくのに、痛みだけは変わらない。

 何度もしているのに、これを、快感だと思える日が来ると思えなくて、少し自信がなくなってきている。
 東鬼が好きだという気持ちは変わらないのに、最後が痛いだけの行為が……辛い。

 今夜も、これまでで一番深くまで受け入れられたものの、俺の表情を見た東鬼は、入れた後に動こうとしなかった。

 苦しそうな、痛そうな表情をしないように気をつけているのに、どうして見抜かれてしまうのか。
 痛みを与えたくないと思ってくれる気持ちが嬉しいのに、胸が痛い。
 虚弱な体なんて、いらないのに。

 俺を傷つけたくないからと、そのままで気持ちいいからと、動かないままで東鬼が放った後、いつもと同じように動く体力も気力も残っていなかった俺は、東鬼に風呂で洗われた。

 やっと受け入れられるようになったのに、痛みで体が強張ってしまう。
 東鬼も気がついているはずだ。
 痛みには慣れているから、耐えられるはずなのに。

 耐えようと思っているから駄目なのか?
 ……痛みを快感だと感じるのは、俺には無理だ。

 なぜか嬉しそうに俺の頭を洗っていた東鬼が、ふと思い出したように口を開いた。
 「お披露目でも、これ以上奥には入れねえから」って。

 これ以上……がある?
 あるのか。
 つまり、まだ根元まで入ってないってことか。
 まだ、あるのか。

 受け入れる準備が済む頃の俺は、足腰の感覚がなくなってしまうから、どこまで入っているかが、あまり分かっていなかった。
 体格に差がありすぎるので、いつも東鬼に脇を抱えてもらって、対面座位で行為をしていたから、見えないけれどもう入っていると思っていた。

 内臓をゆっくりと押し上げられる感覚はある。
 だからこそ、もうほとんど入っている、と勘違いしたのか。
 本当はどこまで入っているんだろうな、まさか、まだ数センチも入ってないとか言わないよな?

 不安になって、どうしてだ?と聞く俺に東鬼が「これ以上は(ディルドの長さが足んなくて拡張できてねえから)中を傷つける可能性が高え」と言う。

 俺は東鬼と恋人関係になるまで、男同士での行為を具体的に知らなかった。
 汚いから洗って、突っ込むとしか。
 自分で拡張するために調べることはしたけれど、腹の中の構造を理解しているわけじゃない。
 だから、東鬼がそう言うからには、理由があるのだろうと思った。

「そうか、お前の好きにしてくれ」

 俺がそう答えると、東鬼が嬉しそうな顔をした。

「おう、二人っきりになってから、ゆっくりやろうな」

 東鬼の言葉を聞いて、そうか、これは時間と回数でなんとかなる問題なのかと考えながら、手を伸ばして、人の姿でも分厚い胸にすがりつく。
 痛みも、時間が解決してくれるんだろうか。

 手のひらを、熱くて分厚い筋肉の塊に添える。
 力が入ってない今は柔らかいのに、確かな弾力があって、すごく気持ちいい。

 濡れた胸に、耳を押し当てる。
 力強い心臓の音が、ひどく心地いい。
 冷えた耳たぶが温かい。

 どくり、どくりと終わらない振動が、俺の頭の奥にまで低く響いて聞こえるのが好きだ。
 俺と全く違う生き物なのに。
 それなのに、こんなに好きで。

 離れられない。
 離れたくない。

「うん、タッくん」
「……くそ、なんで我慢しねえといけねえ時に限ってなんだ、くそ、タク、確信犯だろ、ぜってえそうだろ!」
「何がだよ?」
「まさかのクールビューティー天然!?」
「何の話だ??」

 くーるびゅう?
 東鬼はやっぱりおかしい。
 そしてアホだ。
 アホで、可愛い。

 外見はどこからどう見ても男らしい、格好いいやつなのに。
 中身がこんなにアホで可愛いとか、ずるいだろ。

「疲れた」
「寝るか」
「うん」

 風呂を出て、床に直に転がる東鬼を見ながら眠って。





 目覚めた俺は、知らない場所にいた。

 曇りの日のように薄暗い部屋の中は、ひどく埃っぽい。
 知らない場所だと知覚した途端に、体が寒さに震えた。
 上下の下着と、パジャマ代わりのスウェット一枚で、木目がむき出しの床に転がっていて、寒くないはずがない。

 東鬼はどこにいる?
 無事なのか?
 ここは、どこだ?

 これまでは驚きすぎると表情がうまく出せないことや、挙動不審になってしまうことが嫌だったけれど、この時ばかりは、自分が硬直してしまうことに感謝した。
 目覚めてすぐに、反射的に動いていたら、どうなっていたか。

 頭が痛い。
 有機溶剤の匂いを、知らずに嗅ぎ続けてしまった時のような。
 有害ガスの発生する洗剤を、換気せずに使ってしまった時のような。
 重だるい頭痛だ。

 視線だけを動かして周囲を見回してみれば、そこは廃墟のような室内で、目の前に黒い背中があった。
 日焼けした健康的な黒さなんてものじゃない。
 まるで黒曜石、いいや、タールのようにぬめつく油っぽい黒さだ。

 真っ黒な背中は、彫刻のように筋肉が隆起していて、湯気がうっすらと立ち上っているのが見えた。

「……っ…………っ……っ」

 背中を俺に向けて床に座り込んでいる誰かは、ぶつぶつと何かを呟いているようだけれど、背を向けているからなのか聞き取れない。
 薄暗く埃っぽい室内で、どうしたら逃げ出せるだろうかと考え、目の前の背中に気が付かれずに出入り口を見つけられるかを考える。

 逃げ出したいのに動きそうにない手足は震え、動けない体が勝手に強張る。
 なんだこれは。
 怖い。
 恐ろしい。
 逃げたいのに、体が動かない。

「…………あ、あー?」

 ふと、目の前の黒がぬらりと揺れた。
 黒く光る背中が、ぬるりと反転する。

 二つの金が俺を射抜く。
 目を閉じて意識のないふりをしろ!と、頭の中で警鐘が鳴り響いているのに、目を閉じることができない。

 目をそらしたら最後、黒に襲われる。
 死ぬ、殺される。
 そんな、根拠のない恐怖心で動くことができない。

「目が覚めたか、堯慶タカヨシのおひいさま」
「……」

 なんと答えれば良いのか、動かないくせに震える体をどう動かそうか考える。
 こいつは今、タカヨシと言った。
 人の肌の色ではありえないほどの艶を持つ黒、人の形をしているのに逸脱している体躯。

 俺が知る限りの〝タカヨシ〟で、目の前の黒と同じような生き物、巨体に角を生やした知的生命体は、東鬼しかいない。

「しのぎ、のおしりあ、い、ですか?」

 絞り出した声は、情けないほど震えていた。
 息が苦しい。
 何もされていないのに、圧迫されるような圧を感じる。
 寒い。
 体が動かない、どうしてだ。

「しのぎ……ふんっ」

 こいつが、東鬼とどういう関係なのかは知らないけれど、あまり友好的でないことだけは分かる。
 俺が東鬼の名を出したことに何か意味があったのか、黒は鼻で笑うと、のそりと立ち上がった。

 黒が立ち上がって気がついたけれど、この建物は、二階まで吹き抜けになっている。
 鬼の姿の時の東鬼は、三メートル以上あると自己申告していて、立った時には一階部分の天井よりも上に頭がある。
 建物の高さにもよるけれど、目の前の黒は頭の位置が低い気がする。
 東鬼に比べれば、随分と小さい〝鬼〟だ。

 それでも、ここまで恐ろしいのか。
 東鬼が普段、どれだけ俺を怖がらせないように気を使っているのか、と初めて考える。

「堯慶の所有臭をさせているのに、苗字で呼んでいるのかい?」
「……あなたは、どなたですか」
「君、良いねえ。
 人なら簡単に倒れるくらい威圧してるのに、今のこの状態でも会話ができるんだね、とても心が強いってことかな?
 それとも、頭がおかしい子なのかな?」

 黒い鬼が顔を歪めた。
 

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