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五、受け入れて、受け入れられて
51 志野木 :注意:自傷?
轟々と燃えていた。
家々が燃えている。
燃えている家に、火に照らされた赤鬼が殴りかかり、建物が崩れていく。
体当たりで家を崩すのか、鬼という生き物は凄まじいな。
周囲には倒れている鬼の姿が見えるけれど、東鬼に痛めつけられた後なのか、動く姿はない。
昌壽さんと話して、作戦ともいえない作戦をたてた。
俺が東鬼の気を引く。
どこかに連れていって、どうにかして薬を使わせて……やることをやる。
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この状態の東鬼を見捨てて、俺だけが逃げだすなんて……できない。
「タッくん」
精一杯甘えた声を出したつもりだけれど、通じているだろうか。
素直に甘えるなんて、俺にはうまくできる気がしない。
どんな口調や態度が正解なんだろう。
似合わないだろう?
もうすぐ二十五歳の男が、同性で、しかも鬼に甘えた声で話しかけるなんて。
「タッくん」
怖い。
燃え盛る業火に煌々と照らされ、艶めく肌は赫々としている。
東鬼の黄金の瞳が俺を見つけると同時に、獣のように、ぐるり、ぐるりと喉を鳴らしているような、そんな音まで聞こえてくる。
「タッくん?」
俺だよ。
タクだよ。
お前の、おひいさまだ。
そういえば、おひいさまって、なんなんだろうな。
『……グァあ?』
「タッくん、寒いんだ、抱きしめてくれよ」
『ァあ、グゥう』
「そうか、俺も同じ気持ちだ、二人っきりが良いよな」
『ぐルゥう、ぁガぁあ』
「俺も大好きだよ」
東鬼が、何を言ってるのか、分からない。
それが悔しくて、腹立たしくて、怒鳴ってわめき散らしたい。
俺の東鬼を傷つけやがって!と。
赤鬼が一歩ずつ近づいてくるごとに、地面が揺れる。
巨体が近づいてくる圧迫感と、異様な威圧感。
黒い鬼から感じた押しつぶされるような感覚を、東鬼からも感じる。
気がついてくれよ。
俺に。
「タク、って呼んでくれないのか?」
見上げる巨体は普段と変わらない。
室内でないから、普段より小さいような気もする。
それでも俺の視線は東鬼のみぞおち辺りで、もう逃げられる距離ではない。
伸ばされた指が、大きな手が、俺に触れる直前、一瞬だけためらうように止まり、そして……。
気がつくと、板の間に寝ていた。
どこかの室内で、体の下にはござが敷かれている。
見える限りの周囲は真っ暗で、遠くに一つだけ裸電球が灯っているのがぼんやりと見えた。
腕を使って体を起こそうとすると、ぞわりと背筋を寒気が上っていく。
「ふーぅ……ふー……ぅー」
俺を覗き込む二つの金。
低く唸るような、呼吸。
獣を相手にしているような錯覚を覚えながら、俺に向かってかがみこんでいる巨体を見上げた。
こんなに近くにいるのに、全く気がつかなかった。
一体、いつからこうしているんだろう?
「……タッくん」
握っていた拳の中で、紙が潰れる音がした。
「タッくん?」
「……ぅー……」
意思の疎通ができないとしても、東鬼は俺に優しくしてくれるだろうか。
少し自信がない。
ゆっくりと動いて、刺激しないように気をつけながら、手の中の薬包を確かめる。
「噛まないでくれよ?」
手を伸ばして、体を起こして、口を半開きにしてうなっている東鬼の口の中に、薬の包みごと手を突っ込んだ。
布の破れる音がする。
手に巻いておいた布が、東鬼の牙に当たって裂けたのだろう。
血の匂いが東鬼を興奮させると聞いたから、口に手を突っ込むことを考えて巻いておいたけれど、うまくいったようだ。
「う……うぅ……」
「タッくん、優しくしてくれよ」
薬を、東鬼の口に突っ込むことは成功した。
鬼の時の東鬼の口が、思った以上に大きくてよかった。
裂けたっていう表現がぴったりで牙まで生え揃っているから、手を突っ込むのに勇気が必要だった。
包みごと突っ込んだので、うまく溶けることを祈るしかない。
問題は東鬼の唾液と混ざった薬をどうやって、俺の尻に仕込んでもらうか、だ。
中に塗りつけるって、色々と無理だろう。
そもそも唾液を混ぜて完成の薬なんて、聞いたことがない。
唾液で作るツバメの巣……あれは食材か。
そう思っていたら、東鬼が突然、自分の右手の人差し指を咥えた。
何してるんだ、と問う暇もなかった。
指の先に生えている鋭い鉤爪を食いちぎって吐き捨てた東鬼が、にぃと笑う。
まるで無邪気な子供のように。
口を自分の血で汚しながら。
驚いている俺に気がついていないのか、東鬼が無傷な左手を伸ばしてくる。
鉤爪だけでスウェットを引き裂かれながら、お前、本当は不器用じゃないだろ!と関係ないことを思った。
あっという間に、引き裂かれた布をまとわりつかせた格好にされ、東鬼が正気を取り戻しているのではないかと思ってしまうけれど、俺を見てくる瞳は、いつもと違うままだった。
服の残骸を手足に残したまま、板間のござの上で、少し迷う。
これは、東鬼は、理性があるのか?
まともに戻ってるのか?
それにしては、言葉がないし、意思の疎通ができているとも思えない。
ボクサーパンツに手を伸ばしてくる東鬼の意図に気がつき、裂かれる前に自分で脱ぐ。
スウェットと一緒に切り裂かれたけれど、体に巻いた布は残っている。
このまま……死ぬかもしれない、と体がすくむ。
「……あ"ぁー……」
「うわっ」
軽く体を押されて、ござの上にうつ伏せになる。
何を求められているのかは分かっても、恐怖心は無くせない。
必死で震える体をなだめて、四つん這いになり、脚を大きく開いた。
「あ……ーぁ……」
「っ!?」
昨夜から風呂に入っていない、体を洗っていないのに、尻を舐められた。
暖かい濡れた感触が肌に押し当てられるたびに、肌が粟立つ。
覚悟していたとはいえ、嫌悪感が強い。
汚いからやめてくれ、と。
俺の内心など知らないで、尻を舐める東鬼が、嬉しそうにふぅ、ふぅっと息を漏らす。
てっきり、いきなり突っ込まれるかと怯えていたけれど、そうではないようだ。
ぐ、と穴に濡れたものが触れ、それが押し込まれる。
「うっっ」
痛い。
恐怖で体がこわばっているからなのか、与えられる痛みを考えてしまうからなのか。
大丈夫だ、東鬼が相手なんだ。
大丈なのに、我慢できるはずなのに、怖い。
死にたくない。
東鬼を助けたいのに、怖い。
「……ぁーう」
「え?、ぅあっっ」
今、タクって言ったのか?
驚いて顔を上げると同時に、ぬるり、と尻の中に何かが入ってきた。
熱いけれど痛くはない。
「っ……ふぅ…………ふぅっ……」
落ち着け、と呼吸を意識する。
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だから。
だから。
大丈夫のはずなんだ。
呼吸に集中している間に、尻の中をぬめるものが動くのを感じ、次第に、痺れるような感覚へと変わっていく。
ぬめるものが抜かれて、もっと固いものが押し付けられるけれど、抵抗なく入ってしまった。
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時間を知る手段がなくて、だんだんと尻の感覚がなくなってきた頃には、何が尻に入っているのかも分からなくなっていた。
そんな時に、唐突に尻に入っていたものが抜かれて、ホッと息をつき安堵した俺の脇腹に、何かが食い込む。
布を何重にも巻きつけてあるのに、痛いほどに食い込んでくるのを感じて、胸を肺ごと押し潰されるように力がかかって、息ができない、苦しい。
「やさ、しく、ッ、ぅあ"あ"っっっ?!ーーーっっう"ぅっ」
ほとんど尻の感覚が残っていない上に、痛みを感じないのに、腹の中を削って巨大なものが体内へ入ってくるのを感じた。
内臓を押し上げられて、口から何かがこぼれて垂れる。
ただでさえ苦しかったのに、息が肺から押し出されて、酸欠の頭がくらくらする。
目の前が一瞬真っ暗になって、気がつくと、仰向けの東鬼の上に両脇腹を押さえられた姿でまたがっていた。
腹の中に太いものが入っているのを感じるのに、太ももが宙に浮いている。
感覚の鈍った尻が、硬くて熱い肌に触れていない。
まだ、全部、入れられてない?
もしかして、言葉が出ないだけで、理性を取り戻してるのか?
前に俺に言ってきた、これ以上は入れないって約束、覚えているんだろうか。
「……タッ、くん、やさし、っ、して、っーーーーーっ!」
東鬼が少しでも元に戻っている可能性にかけて、声を出した直後に体が揺さぶられる。
奥へと突っ込まれるような動きではなかったけれど、湧き上がるような快感に、頭の芯が白熱する。
ぱち、ぱちとフラッシュをたかれているように、意識が弾ける。
たった一度だけ軽く揺さぶられただけで、俺は絶頂を迎えていた。
ああ、ま、まずい。
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