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しおりを挟む「おい、君うちに来るか?」
ある嵐の夜、仕事から帰る馬車の中から震えている黒い子猫を見つけた。
体がやせ細り泥で汚れている。
これ以上濡れたら衰弱してしまうな。
警戒している猫をそっと懐に入れ雨に濡れないようにしながら、馬車へ戻った。
屋敷に着けばお湯を用意してやり、自ら綺麗にしてやる。
可哀想な猫だ。親とはぐれてしまったのか?
タオルで水分を優しく拭き取りながら、猫が食べそうなものを用意させる。
「にゃー」
先程よりは警戒が解けてるな。
小さな頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めた。
餌をやるとクンクン匂いを嗅いでからペロッと味見をする。
その姿が可愛らしくて思わず微笑んでしまう。
「お前はかわいいな。しっかり食べろよ。」
「にゃん」
「ずっとうちにいるなら、名前をつけないとな。んー、雌だし・・・ノアール・・ノア。ノアにしよう。」
「にゃー」
「はは、気に入ったか?」
喉元を撫でるとゴロゴロ音を鳴らした。
寝室にクッションを沢山敷きつめたノアの寝床を用意しそこに寝かせる。
「ゆっくり眠れよ。」
背中をポンポンと撫で俺も布団に潜った。
俺はルイ・ウィリントン。ウィリントン公爵家の当主で、城で財務大臣を任されている。もうすぐ40歳になるが、嫁はいない。いや、以前はいたが男を作って逃げていった。それから結婚がめんどくさくなり見合いもしていない。跡継ぎは養子を取ろうと思っていたところだ。
城と屋敷を往復する生活だったが、ルイが来たから日々に癒しができるなと目を閉じた。
朝日がカーテンの隙間から漏れる。眩しさで朝を感じ、目を覚ますと隣に知らない女が寝ていた。
「っ!」
暖かいと思ったら、誰だこの女の子。間者か?長い黒髪に白い肌、閉じたまぶたには濃いまつ毛がびっしりと生えている。少し空いた唇はぷっくりとピンク色だ。驚くことに頭には黒い毛の猫の耳が付いている。
17、18歳くらいだろうか?この耳、本物か?
指先で触れてみると、ピクっとかすかに動く。寝返りを打った少女はなんと裸だった。胸は丸く、ピンクの乳首はツンと上を向いている。細くしなやかな腰、柔らかそうなおしりには黒く長いシッポが付いていた。
急いで布団を掛けてやり、とりあえず起こすことにした。
「おーい、キミ!こんなところで何をしているんだ?」
「んん~」
「起きろって」
「んにゃ?」
ゆっくり開いた瞳は綺麗な空色。偶然だろうか。昨日からうちに来たノアと同じ色だ。
「ん、ご主人様・・・おはよ?」
「は?キミはここで何をしている?警備につき出すぞ。」
「ご主人様、昨日私にご飯くれた。寝ろって言った。寂しかったから一緒に寝た。」
「昨日、飯をやったのは黒猫のノアだ。人間じゃない。」
「私、ノア。ご主人様、昨日名前付けてくれた。証拠。」
そう言って見せたのは、首元のリボン。昨日ノアにピンクのリボンをつけてやったのだ。
同じリボンだ・・・
「ほんとにノアなのか?なぜ人間に?」
「元々人間。呪いかけられて猫になった。」
「なぜ呪いなんかかけられる。家に帰りなさい。親御さんが心配している。」
「私、帰るところない。追い出された。」
聞けば、異母妹に恨まれ呪いをかけられたらしい。家族も元々、ノアを邪険にしていたようだ。
「ご主人様、お願い。私をここに置いて。ご主人様の好きにしていいよ。」
俺の膝に手を付き胸に頭を預ける。
「しょうがないな。拾ったのは俺だ。責任は持つよ。」
「ありがとう。」
頭を撫でてやれば、気持ちよさそうに目を細めた。
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